狐につままれ



狐につままれ



だんだんと日が暮れ始め
盆踊りの音楽に
売り子の声と
沢山の人達の楽しそうな話し声

夏の夜の行事と言えば
そう、花火大会だ

周りを見渡せば家族連れからカップル、友達同士で来ている人など様々


私達も今回は家族3人でやってきた
ハズキはと言うとお義母さんにもらった
うちは兄弟のお下がりの甚平を着て
イタチに抱っこされている
目に入って来るもの全てが欲しいようで
今は丁度暗部のお面をおねだり中のハズキ


「あれかってー!!」


「ダメだ、ここには猫と鳥しかないだろ」


ちょっと説得の理由がよくわからないが
なんでもかんでも欲しいと言うハズキを落ち着かせるイタチ


「あれがいいもん!!」


「まてハズキ、どうしてもお面が欲しいならこの先にもう一軒お面の店がある。それまでに他の店も見て何も欲しくならなかったらお面を買うことにしよう」


わかった。となんとか納得したハズキだが
この先のお面屋にたどり着く事なく足を止める羽目になった私達


「やっぱりこれほしい!!」


次に立ち止まったのはヨーヨー釣りの前だ


「ならお面はいらないな?」


「いらない!!」


もう目の前のヨーヨーが欲しくてたまらないハズキ


『ヨーヨー買ったらお面買わないからね?約束だよ?』


「うん!やくそく!」


そう言ってパパに青いヨーヨーを釣ってもらい手に付けて満足気なハズキ


「焼きそばでも買って花火を見る場所でも探すか」


『そうだね、私カキ氷も食べたい!』


「ハズキも!!」


じゃあ後で買いに行くか
と言ってまずは焼きそば屋に向かった
が、場所が悪かった


「あ!あんぶのおめん!!」



焼きそばの屋台はお面屋の隣だった


「あれほしい!かっこいい!!」


『ハズキ、さっきママとお約束したでしょ?パパにヨーヨー取ってもらったじゃない』



「やぁだ!おめんがいい!」


駄々をこね始めるハズキに声をかけるイタチ



「ハズキ、さっきお面は、、、」


お面を指差してハズキに言い聞かせていたイタチの言葉が止まる
視線の先を追ってみるとあるお面を見つめていた
そして


「ハズキ、一応聞いておくが欲しいお面というのは猫か?鳥か?猿か?」


「ちがうー」


「犬か?」


「ちがうー」


「ならば、コレか!」


なぜか興奮気味に手に取ったお面をハズキに見せるイタチ


「うん!これ!」


返事を聞き、よし。と頷くイタチ
何がよしなのかわからないが様子を見ていると


「おじさん、これください」

「はいよ、五十両ね。良かったなボク」


ハズキにお面を付けてくれるおじさん


「よし、焼きそばに並ぶか」


「うん!」


さも当たり前かのように焼きそばの列に並ぼうとする二人を必死に止める


『え?!待って待って?ママとの約束はどこにいったの?』


「仕方ないだろう、ハズキが狐がいいと言ったんだ」


何が仕方ないのか全くわからない


『もしかしてイタチが1軒目で買ったらダメって言ってたのって狐が売ってなかったから?』


「あぁ、買うのなら狐だろう」


なぜこんなに狐のお面にこだわるのかと考えると、あることを思い出した


『わかった』


「ん?」


『イタチの暗部時代のお面が狐だったからでしょ、ねぇ?そうでしょ?』

ジリジリと妻に追い詰められ、たじろくイタチ


『せっかく我慢することも大事って教えようと思ったのに!甘いんだから!』



「すまない、今回は許してくれ。自分の付けていたものに息子が興味を示してくれて嬉しくなってな」


申し訳なさそうに謝るイタチに
これ以上何も言えなくなる


『うーん、わからなくもないけど、、今回だけだからね!良かったね!ハズキ!』


「うん!」


「そのお面はな、パパと一緒なんだぞ」


「ほんと?」


あぁ、と嬉しそうに答えるイタチとハズキを見ていると買って良かったなと思ったのはここだけの秘密

焼きそばと飲み物を買って花火を見る場所を探す事にした



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