43 じゃくじゃくあまのじゃく
『……あ、あの。大丈夫ですか?』



「…………」



『頭…に、ぶつかりましたよね?私の履物…』



「…………」



はぁぁぁぁ?!無視かよ!!何!さっきのことまだ怒ってんの?!てか怒ってんのならなんでここにいんの?!意味わかんない!!!



『あの!私の飛ばした履物が当たったと思ったんですけど違ったのかな?!もし当たってたらすいません。では!』


隊長の隣に無残に転がった履物を拾ってその場を離れようと立ち上がると


「……待て」

掴まれる腕


『何ですか?離してください』



「足、怪我してるだろ」



『!!』


気づいてたのか……



「見せてみろ」


傷口を見ようとする隊長を押し返す

『ありがとうございます、大丈夫です』

そう言って一人で帰ろうとすると走る痛み、想像以上に切れてるみたいだ


どこが大丈夫なんだ、と言うとフワリと抱き上げられ散らばったもう片方の履物を回収しベンチに座らせられる

再び見せてみろと言われ渋々足を上げ傷口を見せると盛大なため息をつく隊長


「3センチ程切れてる深さも大分ある、痛かっただろ」


沈黙を貫く私に二度目の盛大なため息
近くの水道まで抱えられ傷口を洗う隊長
痛むか、と聞いてくれるが未だ沈黙の私
もう何で口聞いてないのか覚えてないけどここまできたら意地でも喋らん!!

ベンチに戻ると緑色に光る隊長の手のひらを足の傷口に近づける


「医療忍術は得意じゃないが、これで血は止まるだろう」


そう言って履物まで履かせてくれる
うちは家の時とは打って変わって至れり尽くせりの隊長
何この変わりよう、逆に怖いわ!


『……ありがとうございます』

さっきまでの喧嘩がチャラになるわけじゃないけど
助けてもらったのは事実なのでお礼を言って立ち上がる


「歩けるのか?」


『大丈夫です』


そう言って歩き出すが想像以上に痛い!!
え、待って!自分で見てないからわからないけどすんごい重症なんじゃね?!
と思いながら平然と歩く、痛さを悟られないように


隊長を背に公園から出ようとすると


「待て」


またしても引き止められ掴まれる腕


『今度は何ですか?私帰るんですけど』


「血が出ている」


『え…?』

言われて足元をみると血まみれの履物
ベンチからの足跡の途中から血の跡が


「傷口が開いたようだな、もう一度止める。来い」


またベンチに座らせられる始末
はぁ、強がって我慢したのに情けない

ボーッとしていると終わったようで
私に背を向けしゃがみこむ隊長

何をしてるのかしばらく見ていると


「早く乗れ」


『はい?』


「その足では歩けないだろう、おぶってやる」


今は1秒でも早く隊長と別れたいというのに、冗談はよしてくれ

『大丈夫です、自分で帰れます』



「今もそれで傷口が開いたばかりだろ、無理をするな」


『…………』

正論すぎて返す言葉も見つからない

早く乗れ、と促す隊長の背中に渋々乗せてもらうことにした


家々の窓からもれる明かりも少なくなり街灯だけが照らす路地を静かに歩く隊長

家に帰ればいいのか?
はい。

今までの会話はこの二言のみ
なんとも言えない空気の中、明らかに自分のとは違う背中の大きさに少し驚く

そういえば隊長って、男の人だったんだな〜
普段何も考えていない分急に意識してしまう
さっき当たり前のように首に回してしまったこの腕の位置はこのままでいいのかと悩むほど




「さっきは、すまなかった」



『え?』

一人で自問自答していた私には理解するまで少し時間がかかったがどう考えてもさっきの言い合いのことだろう


「家でのことだ、サスケから聞いた」


『はぁ……』

サスケがどう伝えたかは知らないがどうやら上手く真実を伝えることができたようだ


「最近サスケと仲が良かっただろう」



『え?』

まぁ、私はあまり変わってないが前よりサスケが懐いてくれているのは確かだ


『確かに、前よりかは距離は縮まりましたけど…』


「そうか……」


嬉しいような、でも少し寂しいような難しい顔をする隊長
もしかして、もしかしなくてもこれって、、、


『隊長、ヤキモチですか?』


後ろから顔を覗き込むように聞くと
そんなわけあるか、と言いつつ耳まで真っ赤になっている隊長

まったく、兄弟揃って素直じゃないな!

今回初めて喧嘩をしてしまったが、隊長の珍しい赤面見れてラッキーと思っている自分はどれだけ単純なんだろう
いい経験だったな!とか思っていると


「ミツバ、やはりウチに来ないか?母さんも心配してた」


『隊長がどーしても!って言うなら戻ってあげてもいいですけどね!』


あぁどうしてもだ、と微笑む隊長

本当は嬉しいくせにこんな言い方しかできない自分


私も負けないくらい素直じゃないな!
と隊長の背中に隠れて微笑んだ

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