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口はなんとかのもと





「別に今からそんなことしなくてもいいだろい」

「だめだよ。私の性格上、今からやらなきゃ間に合わないもん!」

「そんなことねェと思うがねい」




おれの横でちょこんとベッドに座ってせかせかとマフラーを編むのはおれの彼女のaaaだ。特別不器用というわけではないが、なんせ行動が少し遅い。メシを食べるのも、歩くのも、話すのも、なぜかワンテンポ遅れている。
そんなとこも可愛いと思っちまってるもんだから、おれも重症だと思う。ただ、今の状況で放置されるとなると少し…いやかなりつまらない。




「なァaaa」

「なぁに?」

「お前そんな色好きだったか?」

「え?」




たしかaaaは黄色やオレンジ、ピンクといった可愛い系…といわれる色が好きだったはずだ。だが今aaaが編んでいるマフラーの毛糸の色はネイビーだ。




「んふふ…。マルコさんったら鈍感なんだから。それともわざと聞いてるの?」

「なんの話だよい」

「それは冬になってからのお楽しみー!」

「お前が巻くワケじゃねェんだろい?」

「うん!」

「…エースとかにあげたら許ねェよい」

「あげるわけないじゃん!…もう、本気で言ってるの?」




なにか気に障ることを言ったらしく、aaaは頬を膨らませた。ったく、そんな顔すんじゃねェよい。可愛すぎるだろい。



「もう、マルコさんなんて焼き鳥にされちゃえ!」

「おいおい、そりゃねェよい」

「…私悪口言ってるのに。なに笑ってるの?」

「お前、それくらいじゃ悪口とは言わねェよい」

「じゃあなんて言うの?」

「それは自分で考えろい」




やっと会話らしい会話ができた。そしてようやく視線をおれに向けた。よし、それでいい。aaaがまたマフラーに視線を戻す前に、その綺麗な髪に指を通す。おれと違って柔らかい髪。その感触が心地よくて何度も梳いた。





「なんか…」

「あァ?」

「なんか今日マルコさん変…」

「いつもと変わらねェだろい」

「そんなことないもん。なんか大きな子供みたい…」



大きな子供…か。思わぬ言葉に口端が上がる。




「aaa、お前ェ…おれが子供だって言うのかい」

「え、う、うん…」

「だったらよォ…」




こんなことできるかい?


少し怯えたようなaaaの瞳を捕らえながら、その小さな顔の顎を持ち上げる。



「…マルコさん?…んぅっ、!」



最初は触れるだけのキス。だがこれだけで終わると思うなよ?



「…っ、んんっ」

「…aaa、」



触れるだけのキスは次第に深くなってゆく。ちゅっ、と可愛らしかったリップ音もそれにつれてくちゅっと卑猥な音に変わる。

aaa、これでもお前はおれを子供だって言えるのかい?




「ふっ…マルコ、さん」

「aaa…」

「なに…?」

「これでもおれは子供かい?」

「え…?」



おれの疑問に「そんなことない…」って小さくつぶやいて抱きついてくるaaaは、とんでもなく可愛くて愛しかった。





口はなんとかのもと




 
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