本日、久しぶりに旧友たちと飲み会を開いた。中学からの友達もいれば高校からの友達もいる。初対面でも気軽に打ち解けられるのがみんなのいいところだ。
さて、一人一人みてみると、変わったなぁと思うところもあれば変わらないなぁと思うところもある。特に如実に表れているのが、女子特有の恋愛好きなところ。この手の話が好きなのは昔から変わらない。
私はといえばみんなほど好きなわけでもなく、今もそっと耳を立てる程度だ。
聞こえてくるのは今度A子が結婚するんだとか、B子が彼氏と別れてまた違う男と付き合ってるのだとか、内容は様々である。
「ねぇ、みさきってまだマルコと付き合ってるの?」
「え?うん」
「すっごー!中学の時からだよね?」
「やだ一途〜!私にはムリ〜」
はぁ…。
ついに回ってきてしまったのね、私の番が。だってみんなの目はそりゃあもう楽しそうだもの。輝いてるもの。
「ほら〜、みさきもマルコくんも浮気とかしないからさ〜。だから続くんじゃん?」
「え〜でもバカップルには程遠くない?」
「二人は大人だから〜」
「淡白なだけじゃ〜ん」
実に言いたい放題だ。酒の力とはなんて恐ろしい。普段は人一倍神経質で気を使うC子がお構い無しにしゃべっている。それはもうもはや悪口では?と思うくらいだ。
「まぁマルコくんって近づきがたいところがあったし〜、恋愛にのめり込むタイプじゃなさそうだもんね〜」
「それはみさきも一緒じゃん?」
「アンタら…。これでも私たち仲良くやってますけど?」
ここへきてようやく喋る機会が回ってきたよ。テンションが上がると堰を切ったように話すところも女子の特徴かもしれない。
「仲良く…ねぇ」
「なによ」
「アンタらねぇ〜、たまには私たちにバカップルって言われるくらいイチャついて見せなさいよ!」
「…イヤに決まってんでしょーが」
「あ〜みさき照れてる〜」
「あぁもううるさいうるさい!」
本当に酒の力とは恐ろしい。どうやってこの事態を乗りきろうかと頭を抱えていると鞄の中に入れてあった携帯がブブブ、と小さく主張した。
「ごめん!私先に帰るね!はい、これ私の分のお金!」
「え〜なに急用?」
「ま、そんなとこ」
みんな酔っているからか、深くは追求してこずにあっさりバイバ〜イなんて手を振られた。ちょっと!ここあんまり広くないお店なんだから恥ずかしい!店員さんにごちそうさまでしたと告げて私はお店から出た。
そして携帯を開いて先ほど届いたメールを確認する。
“もう時間も遅ェぞ。迎えにいくから待ってろい”
時間を確認すれば、家を出るときマルコにこの時間に終わると告げた時間から3時間も経っていた。しかもその間、私からは一切連絡はしておらず、かわりにマルコからは3件も連絡が入っていた。そりゃあ心配するよなぁ…。
文の最後に書かれていた“連絡にはしっかり出るように”の文字に思わず笑ってしまった。
「みさき」
「あ、マルコ。わざわざありがとう」
「そう思うならさっさと帰ってこいよい」
彼の愛車に乗りながら付き合い始めたばかりの頃を思い出す。マルコってば昔から隠れ心配性なんだよな〜。
「さっきさ〜、みんなと話してたんだけどなぜか私たちの話になってね」
「おれたちの?」
「うん。私たち中学の頃から付き合ってるじゃん?それがすごいんだってー」
「周りが別れすぎなだけだろい」
うんうん。実にマルコらしい答えだ。
「でね、あまりにも淡白だからたまにはバカップルって言わせろだってさ」
「はぁ?」
「あ、変な顔」
ぶにっとマルコのほっぺに人差し指で触れると、その指をマルコの左手が包んで手を繋がれた。よ、予想外だ…!
「周りのやつらもまだまだだねい」
「なにが?」
なにがまだまだなのか意味不明で聞き返すと、珍しくおもしろそうに笑い続けていた。
「お前もまだまだ」
「だから、なにがってば」
「…他のやつらに言われるまでもなくバカップルだってことだよい。じゃなきゃとっくに別れてる」
ふむ。たしかにそうかもしれない。マルコは自分で言っておきながら恥ずかしいのか、繋いだ手をほどいてゴホンと咳払いをした。
「マルコは昔から照れ屋さん。そして心配性」
「そういうお前は能天気」
「ねぇ」
「ん?」
もう付き合って何年になるのかな。周りからは冷めきった関係に見えるかもしれないけど、本当はまだまだラブラブなんだよ、私たち。
「なんだよい」
「いつまで心配してくれる?私のこと」
「そりゃあ、お前…」
「ん〜?」
さあ、マルコはなんて答えるのでしょうか。
「お前がおれの女であるうちは心配するだろ、ふつうに」
「それはいつまで?」
「なんだいこの質問攻めは…。まぁ100年くらい先まではな」
「うふっ、嬉しい!」
「あ〜はいはい」
こんなとこみんなには見せられないけど、これでもまだ淡白だと言えますか?