「おい砂わに〜、酒たんねーぞ追加だ追加ァ!さっさともってこんかぁぁい」
「うるせえよクソみてェに酔っ払いやがって。目ぇ覚ませ」
コイツはそんなに酒が強い方ではない、と前に自分で話していた。なのに今日の夕飯時、唐突に酒が飲みたいと暴れだしめんどくせぇから飲ませてみればグラス2杯でこのザマだ。 迷惑極まりねぇ。なんでこの女はいつもこうなんだ。
「オイもうやめとけ」
「うるせー私を止められるもんなら止めてみろぉ!クハハできないだろ〜。なにが七武海だ、だったら私は八武海だーゲハハハ」
「うるせぇな。てめぇみたいなカスが8人もいるのか。3秒で返り討ちだな」
「ざけんなー。私が8人もいたら世界征服だって3秒で十分だし!火の七日間だし」
「いっそてめぇが焼死しろ」
「黙れ」
よく酔っ払うと泣いたり笑いまくったり迫ってきたりするやつはいる。いずれもふだんとのギャップが激しく驚くこともあるだろうが、コイツは違うらしい。いつもと変わらなすぎて逆に驚きだ。酔っていようとも普段となんら変わらん。
「ちょっと聞いてよー」
「あァ?」
「私の身近にさァ鰐っぽいやつがいて〜。そいつがすっげーうるせえの。靴揃えて脱げとかお前姑か〜?」
「オイそれをなんで本人に言うんだ」
「しかも私のこと反抗期とか言うわけよ〜。だからンがァァ!」
「うるせぇないきなりなんだ!」
だめだ。コイツに酒を飲ませてはいけない。すでにこの女はおれが誰かすらわからないほど酔っている。阿呆め。だがここが外じゃなくてよかった。こんな醜態を晒しては目の毒にしかならん。
「てめェふざけんじゃねェェェ」
「ぐあっ…!なにしやがる!」
「今失礼なこと考えただろ。クソ鰐が見くびるなよォ」
「しっかり認識してやがる」
都合のいい時だけ認識しやがって…!さっきまでおれが誰かもわからなかったじゃねェか。
「テメーしってんだからな。あの棚にゃあもっと高ェ酒あんだろーがもってこい」
「あァ?おれに命令すんじゃねェ。おれを誰だと…」
「はーい3秒以内にもってこないと吐瀉物ぶッかけまーす」
「バカ野郎、そんなのが怖くて七武海がやってられるか」
「なんだと?八武海の私にたてつこうってーのか許さん!」
「お前の許しなんざいらねェよ」
なぜかファイティングポーズをとり、ヘロヘロのシャドーボクシングをし始めた。どうやら許さないらしい。だが正直無様だ。
「ってオイ…!」
「う"ァァっ眠いよ〜」
ヘロヘロしていると思ったら今度は突然ふらりと倒れやがった。あぶねぇな!
「私に触るんじゃねぇッ!」
「てめぇ…!このバカが。頭打ったらどうする」
「今さら頭打ったってこれ以上バカになんかならないよ」
「そんなことはわかってる。そういうことを言ってんじゃねェよ」
「クラァ!否定をしろよォ!」
とりあえずみさきはもうだめそうなのでベッドに運ぶこととする。…重てぇな。食い過ぎなんだよ。そして明らかに飲みすぎだ。
「しばらく酒は禁止だ」
「…あいあーい」
非常に迷惑だったがなかなかおもしろかった。
酔っ払い取り扱い