ブーゲンビリアの花びら | ナノ
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夜空を切り裂く音


嘘臭い笑顔を作るのは疲れた。
それでも調査兵団の為にと我慢するしかなかった。

それよりも私のエスコート役として出なくてはいけない兵長のが疲れているだろう。
きっと兵長はこういうの好きじゃないだろうし。

何度目の挨拶だろう。正直この短い間に色んな人から自己紹介されても覚えられるわけがない、というのが素直な感想だ。
父は私がパーティーでお披露目できた事が嬉しいのか、とても上機嫌である。




「疲れたか?」

『疲れました…兵長は大丈夫ですか?』

「俺はエルヴィンに何度もこういう所に連れられているから……まあ、大丈夫だ。好きにはなれないがな」

『私もです……少し外の空気を吸いたいです』


そう言うと兵長はエルヴィン団長に向かって

「エルヴィン、外の空気吸いにでる」

と言うと団長は

「ああ、分かった。ナマエはそのあからさまに疲れたと書かれた顔を元の綺麗な顔に戻してきてくれ」

と返してきて私は苦笑いするしかなかった。


兵長にエスコートされてバルコニーにでる。夜空は星が輝いていて綺麗。この大広間で行われるパーティーと正反対で。


『兵長、腕一旦下ろして大丈夫ですよ?』

パーティーが始まってからずっと兵長にエスコートされている。
兵長の腕に自分の手を絡ませるのは恥ずかしかったけれどそれは最初だけだった。パーティーが進んでいくうちに慣れたのか気にならなくなった。


『……疲れた』

「お前のお披露目パーティーと言うより調査兵団への出資者紹介のパーティーと云う感じだな」

『同感です』

「調査兵団にとっては良いことだが。資金があればそれだけ壁外へ行けるし、新しい武器だって作れる。」

『それはそうなんですけどが……疲れる物はどうしても疲れてしまうんです』

「これも仕事だ。」

『分かっているのですが…』

「これからお前の仕事はこういうった類いの物が増えるだろうから、作り笑いの練習でもしとけ」

『善処、します……』

作り笑いか……これが任務だと言うのなら私は練習するしかないのだろう。タメ息をつきそうになる。

バルコニーの手すりに二人で並んで遠くに輝く星を眺める。
大広間の雰囲気とは全く違う時間が流れているように感じる。こっちの方が私は好きだ。


『あっ……!』

夜空に一筋の光が走る。

『流れ星!兵長見ました!?』

「落ち着け。見えたから大丈夫だ」

兵長は冷静に返す。流れ星で興奮してしまう自分はまだまだ子供のようで少し恥ずかしくなる。

「……綺麗だな」

兵長がぼそりと呟いた。


『綺麗ですよね。ここに住んでた時はよく夜バルコニーに出て星を眺めてたんです』

「……地下を出て見た夜空を思い出す」

『そう言えば兵長は地下街出身でしたね』

「ああ……ナマエそろそろ戻らないと怒られる」

自然に腕を差し出す兵長
その腕に自分の手をそっと絡める。

バルコニーから大広間へ戻ろとした瞬間それは起きた。
銃声が何度か鳴り響く。
私は咄嗟に身構える。次の瞬間、私は兵長に抱きすくめられカーテンの物陰へと連れられる。




「静かにしてろ、動くな」

兵長が私の耳元で囁く。
兵長の首すじが目の前にあって今までにないほど兵長と触れあっている。その触れあっている部分から兵長の体温が伝わってくる。何が起きているのか分からなくて、でも顔をあげようとしても頭が兵長の手によってしっかりと押さえられていて動けない。

なぜだか体が熱い。
まるで高熱があるかのような感覚がする。




「リヴァイ、もう大丈夫だ。」

「おせぇぞエルヴィン」

「警備の者達がすこしヘマをしたんだ」

「…まあ、こいつに怪我がなければ問題ないだろ。ナマエ大丈夫だろ?…ナマエ?」

『だ、大丈夫です…兵長ありが、あっ…ごめんなさい、口紅が……』

「ちっ、」

『ごめ、ごめんなさい…』

「ナマエ落ち着け。気にしてない。……だから民間の警備は穴があると言ったんだ」

「それは私も言ったさ。でも聞き入れなかったのは伯爵だ」

『いったい何が……』

「ナマエは気にしなくていい。これだともうパーティーはお開きになるだろう。リヴァイ、先にナマエと部屋に行き一緒に待機してくれ」

「了解だ」

『え……?』

「行くぞ」

『は、はいっ』

腕を引かれて混乱している大広間を兵長と急ぎ足で駆け抜ける。
何がおきたの……?鳴り響いた銃声音……あれは?とりあえず兵長に捕まれてる所が痛い


「部屋ここだろ?」

『よく覚えてますね』

「馬鹿じゃねぇからな」


兵長はそういうとソファーへ腰をおろす。
私はどうしたらいいか分からず立ち尽くす。


「お前も座ればいいだろ」

『あ、はい』

兵長から少し離れた位置に腰をおろす


「さっきのはあれだ、野良犬が迷いこんだだけだと思え」

『野良犬……』

「お前に怪我さえなきゃいい。それが契約だ」


契約だ、そう言われて何故だか心が痛んだ。
私もわかりきってる事なのに。


『団長遅いですね』

「そのうち来るからおとなしく待ってろ」

『分かりました』


ふと兵長の方を見ると視線が合う。
……私何かしてしまったのだろうか。

『兵長どうしました?』

「いや、さすが貴族という事もあってそう言う姿似合うな。化粧すれば更に化けるもんだな」

『どうせ私はお姉様より顔薄いですよ』

「顔が薄いだなんて言ってねぇだろ。それにその優雅な所作は貴族だからできるんだろ」

『……褒められているのでしょうか』

「お前がそう思うならそう思っとけ」

『……ありがとう、ございます』


私はドレスの裾をぎゅっと握りしめる
褒められているのか微妙な所だけど、似合うと言われたのはなんでだか嬉しくて顔が熱くなる気がした。




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