シュガー&ミルク
「いつ、兵長に告白するの?」
同期で同室のリリーは言った。
お風呂あがり、濡れた髪の毛をタオルでゴシゴシと拭きながら他愛もない会話をしていた。していたはずなのに、いつの間にリリーの彼氏の話になってから返事で聞いていたら、いつの間に話題は私と兵長のことになっていた。
「あの兵長がアンタを気に入ってるのは確実なんだから言っちゃいなよ」
『気に入られてらのかな…』
「あのさ、兵長と一緒にお茶してるのアンタぐらいなんだよ。」
『え、でも…』
「自信をもちなよ」
そしてリリーは「兵長に告白するまで今晩は帰ってくるな」と私を追い出した。まだ髪の毛乾いてないよ。
こんな状態で追い出されてどうしてらいいんたろうか。兵長のことは、好き。でも、想いを伝える勇気はまだなくて。でもその勇気待っていたら永遠に現れる気はしない…。
うじうじしながら、頑張って兵長のお部屋の前まで行ったけど、ノックする勇気がでなくて。どうしよう、でもリリーは絶対にお部屋に入れてくれない。でもノックする勇気もない。
「なにか用か」
『ヒィッ!』
「おい。俺は化け物かなにかか」
『いや、その……』
「とりあえず入れ」
兵長に背中押され部屋に入ると、見慣れている部屋であるが、なぜにか緊張してしまった。
「で、どうしたんだ。」
『同室の子に部屋追い出されちゃって…』
「はっ」
兵長は鼻でわらった。そして「お盛んだな」と呟いた。
「髪、」
『へっ!?』
「髪つってんだろ。乾かさないと風邪ひくぞ」
髪の毛をわしゃわしゃとタオルで拭く。
こんな時間に兵長と二人っきり。兵長も私もゆるっとしたくつろぐ部屋着でいてそれに気づくとさらに緊張して胸がドキドキした。
兵長に会うならもうちょいかわいい部屋着でいればよかったと後悔した。
「で、なんで俺んとこにきた」
ほとんど乾いた私の髪の毛を見て兵長は言った。告白するまで帰ってくるなと言われた、だなんて言えなくて、咄嗟に兵長がうかんだと誤魔化すしかなかった。
『兵長…ごめんなさい…迷惑ですよね…』
「別に、大丈夫だ」
沈黙が続いた。一人で気まずくなる。
その沈黙を破ったのは兵長だった。
「お前は、この時間に男の部屋にくるのがどういう意味かわかってんか。しかもそんな格好で」
溜息を疲れた。やっぱり私は迷惑なようで、泣きたくなった。
座っていたソファーからたちあがる。
『もどります…』
「戻るとこあんのかよ」
『………』
ない、わけではない。一応ある。リリーにフラれたとでも言えば部屋に入れてくれるだろう。やっぱり兵長が私のこと気に入ってるだなんて気のせいだし、こんな時間に兵長の部屋に来てしまって申し訳なくてしょうがなかった。
『他の同期の部屋にでもいきます…』
「そうか…」
『兵長…迷惑かけてごめんなさい…』
「だから迷惑じゃねぇって」
『ご、ごめんなさい』
「なんで謝るんだ」
『ごめん、なさい』
なぜにか涙がでてきて。本当に情けない。
兵長は優し頭を撫でてくれて、兵長は兵長の部屋着の袖口で私の頬に伝う涙を拭った。
「こんな時間にやってきて、こんな格好で、しまいに泣かれたら、俺だって戸惑うだろ」
『ご、ごめんなさい…ごめんなさい、』
「謝んな。」
『…っ、ごめんなさい』
「はあ、俺だって男なんだぞ」
そして私の顎を掴み、私と視線を合わせ、いつも通りの読めない表情で「襲われたいのか、お前は」と兵長は続けた。
『へい、ちょ…なら、いいです…っ、』
そう答えると兵長は少し目をみひらき、鼻でわらった。
そして、頬に伝う涙を唇でぬぐった。