五時間目
あの日、リヴァイ先生の車で送って貰いお別れするまでちゃんと顔が見れなかった。なんでだか恥ずかしいのと先生の男の面を見た気がして。心臓のドキドキがとまらない。
別れ際に絞り出して伝えた『よいお年を』に先生はいつも通り短く返事をするだけだった。残念な気もしたけどいつも通りなリヴァイ先生で少し安心した。
冬休みは退屈でリヴァイ先生に会えない日々が続いた。あれから年もあけ、もう少しで登校日。だからやっとリヴァイ先生に会える。
もうほとんど着ることのない制服を、クリーニング屋さんから引き取った。母曰くもう少しだからこそ綺麗にしておくのよ、だそうで。
少し綺麗になった制服に袖をとおす。
高校生というブランドももう少しかと思うとなんでだか寂しい。でも、リヴァイ先生に会える貴重な日だからるんるん気分で学校に向かう。いつものように真っ先に保健室に向かい、いつもの場所に座る。あと10分したらきっとリヴァイ先生はやってくる。そしてら明けましておめでとうって言うんだ、そして今年もよろしくねって。
ドアノブががちゃりと回る音がした。
リヴァイ先生だ!
ドキドキしながら扉が開くのを見ていると、そこに現れたのは担任のエルヴィン先生だった。
『……あけおめです』
「そんなあからさまにがっかりした顔しないでくれるかな」
『だってリヴァイ先生だと思ったから』
「その、リヴァイなんだが……」
『リヴァイ先生がどうしたの?』
「三ヶ月間だけ巨人大学へ保健学科について学びに行った。もともとそういう予定だったんだが別にリヴァイが今日まで言わなくていいと言ってな。このあとの全校集会にて言われるが、ナマエは集会にでないから言っておこうと思って。お前はリヴァイになついてるしな」
『……え、うそだよね』
「嘘、つくわけないだろ」
何かが崩れ落ちる音がした。
じゃあもうリヴァイ先生にあえないの?
私は何をしに学校にくればいいの?
『……早退する』
「おい、ナマエちょっとまてっ、おい!」
エルヴィン先生の引き留める声なんて聞こえなかった。
リヴァイ先生がいない学校だなんて、用はない。