トリックオアトリート
お菓子をくれないとイタズラしちゃうぞ!
10月31日、調査兵団内でもハロウィンのお祝いという名目でただの仮装大会とお菓子配布の日になっている。
ハンジさんから似合うから!と言って無理矢理渡された猫耳と尻尾。まあ、今日ぐらい良いかなって思って着けながら職務に励んでいると団長に捕まった。兵長の元にこの書類を届けにいかないとなんですがね。あの人時間に細かいから。
「ナマエはネコ…かい?」
『ハンジさんに渡されまして。あ、団長!トリックオアトリート!』
「お菓子はないがここにまだ終えていない書類ならあるが」
『それはいらないです…』
「そんなあからさまに落ち込むなナマエ。ほら」
そう言って団長は、可愛らしい包みのあめ玉を二つくれた。
『団長ありがとうございます!』
「こんなものでいいのならいつでもあげるよ」
団長はそう言って私の頭を撫でて去って行った。
あめ玉貰えるのは嬉しいけれど、頭を撫でられるのは遠慮願います。私は猫じゃない。
あ、急がないと!
人類最強様がぷんすこしちゃう!
足早に兵長がいるであろう兵長の執務室へ向かう。
扉をリズミカルに叩いて『ナマエです』と名乗れば「入れ」と一言返ってくる。
『失礼します』
扉を開けてそう言うと、机に向かう兵長と目があう。
そしてまた机に視線が戻される。
『こちらが頼まれたハンジさんからの書類です。ご確認ください』
「ああ」
『……兵長、トリックオアトリート』
「ない」
『じゃあイタズラしてよろしいでしょうか』
「なんのイタズラするつもりだ」
なんのイタズラ…考えてなかった。下手なイタズラしたら人類最強様に殺されそうだしなあ。
『くすぐる、とかですかね?』
「それはイタズラなのか」
『違う気がします…』
「なら諦めろ、やるな」
そしてまた机に視線を向けた兵長。つまらない。団長でさえあめ玉をくれたというのに。
…あ、そうだ。
私は猫耳のついたカチューシャを外し、それを兵長の頭にそっと着ける。着けた瞬間に兵長の眉間にシワが寄り凄まじい表情で私を見ている。こ、こわいです。
「てめぇがつけてろ」
『兵長猫耳似合うので問題ないです!』
「あ?」
『イタズラこのくらいしか浮かばなかったんですもん…ごめんなさい。でもめちゃくちゃ似合いますよ兵長』
「殴られてぇか?」
『遠慮です!』
「ったく」
そういうと兵長は書類を机の上に置いて、私の体を引き寄せた。体勢を崩した私は椅子に座る兵長の太ももに覆い被さるように転んだみたいな体勢になった。
『兵長…?』
「夜になったらかまってやるから我慢しろよ」
『別にそういうわけじゃ』
「誰だ、仕事とプライベートはわけたいと駄々をこねたのは」
『だ、駄々こねてないですって!』
人類最強様は頭に着けた猫耳を外し、私にも着け直した。
そして猫をなでるかのように私の髪の毛を触り、少し嬉しそうな声で
「夜になったら俺がイタズラしてやるから」
と言った。
兵長のイタズラなんて絶対イジワルで鬼畜なんだろうけど、夜が楽しみで思わず笑ってしまった。
楽しみは夜に