Monday




視界がぼやけていてよく見えない。光が眩しく感じてすぐに目を瞑る。ここどこだろう、エアコンが効いてて涼しい。建物の中なのは間違いない。

「……」

ゆっくりと目を開け、見えたのは白い天井。仰向けで寝ているようだ。上半身を起こし、天宮ミナはどうしてここで眠っていたのか記憶を辿る


***

夏休み。楽しみにしていた長期休暇なのにも関わらず、あの人から学校に来いと呼び出され、書類を片付けろだとか、お昼ご飯買ってこいだとか、いつも通り扱き使われる。さらにあの人は外の見回りに行ってこい、と。冗談じゃない。こんな暑い中、外を出歩けと?頭おかしいんじゃねぇですか。睨むとトンファーが現れたので仕方なく外へ出る

「……暑い」

……なんで真面目にこんな暑い中、見回りしてるんだろう。見回りに行ったフリして家に帰ってもいいんじゃないか。……帰ろう、そう思ったら実行するまで。そうしてまた歩き出したはずだが、ここから記憶が曖昧だ。多分暑さにやられたんだろう

***


「気分はどう?」

急に降ってきた聞き覚えのある声。反射的に「大丈夫です」とか答えちゃったけどちょっと待ってください。声がした方へ振り返ると、外へ見回りに行かせた張本人、雲雀恭弥がいた

「学校は長期休暇なんだけど。なんで来たの」

何を言ってるだこの人は。学校に呼び出したのは雲雀くんなんですけど。そうは思ったものの夢の中だから別におかしなことでもないのかと納得する

「水分はこまめにとりなよ、黒崎」

雲雀くんから麦茶を手渡されたことにも驚いたが、それよりも、最後の二文字がしっくりこなくて首を傾げた。"黒崎"?名字?でもあたしの名字は天宮だし、どういうこと?ふと、サラッと流れてきた髪の毛が目線に入る。いつもは1つにまとめて結ってあるはずなのに解けていて、それは黒髪ではなく、淡い紫色の髪。もしかして、この子と精神が入れ替わった夢を見ているということなのだろうか。意外と冷静なのは夢だと確信しているから

「黒崎?」

「あっ、は、はい!ちゃんと水分補給します。あの…麦茶どうもです」

若干いつもの雲雀くんより優しい気がするんですけど……。なんだか調子狂う。いつもだったらトンファー飛んでくるのに麦茶くれる(しかも手渡し)とか頭大丈夫ですか。いや、むしろこっちの雲雀くんの方が常識人に近いから良いんじゃ……

「ねえ、そろそろ帰るんだけど」

「えっ……ああ、もう日が暮れてたんですね。あたしも帰ります」

窓の外見てようやく夕暮れだとわかる。もしかしてずっとあたしは寝ていたのだろうか。もしそうなら、起きるのをずっと雲雀くんは待っていたのだろうか。あたしの知ってる雲雀くんなら迷わず置いてくだろう。モヤモヤしたなんとも言えないこの気持ちはなんだ

「……また倒れても困るから送る」

「え、でも…」

「行くよ」

結局送ってもらうことになる。帰る家はあたしの家ではなく、マンション。この子の住んでる場所。さすがに1人ではここまで来れなかっただろうし、そう思うと雲雀くんに感謝しなければならない。背を向けてさっさと帰っていく雲雀くんにお礼を言った。無反応。まあ、いっかと部屋に入る

「ただいまー……?」

誰もいない。この子は一人暮らしなのだろうか。綺麗に片付けられた広いリビング。いつもはゴールデンレトリバーのアルがいて、親がいて、兄がいて、むしろうるさいくらいなのに

「……べ、別に寂しいわけじゃないし!夢だから!満喫すればいいじゃない!」

寝て起きてしまえば、夢から覚めてしまうんだから今夜は満喫すればいい。そんな考えは実行に移すことなく、なんだか疲れを感じてすぐ眠りにつくことになった




夢の中へと誘う
まだ覚めることのない夢を
どうぞ満喫してください。

next day ?

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