帰還したからには
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駐屯兵団兵士と揉め始めて漸くそれも終盤に差し掛かった時、不意に気配を感じて振り替えれば、そこには呆れた様に近付いてくるリヴァイの姿があった。
表情こそいつもの無愛想だけど、長く一緒にいる私にはそこそこ微妙なその表情の違いが分かっていた。

「てめぇら何してやがる」

倒れている駐屯兵を見て、リヴァイは舌打ちしながら兵士達を見た。

「ひっ、べ、別に…」

リヴァイの睨みに焦った兵士は私の時以上に言葉を噛んで逃げ腰だった。
当然だ。リヴァイは目付きが悪すぎる。

「集合が掛かってんだ。さっさと持ち場に戻りやがれ。俺はコイツを回収しに来たんだが、あんまり妙なちょっかいをかけるな。死にてぇのか」

最後の一言はつまり私が彼らに何かする前提みたいだった。まぁ、間違っちゃいないけど、まさか殺しはしない。脅すだけだ。

帰還したからには

「お、覚えておけよ!」

そんなどこぞの悪役の台詞を吐いて残っていた駐屯兵達は逃げる様に兵団本部へ去って行った。
結局兵士を辞めたのはおそらくあの数人だけだろう。

ふうっ、とため息を吐き出したところで後ろから頭を掴まれた。

「てめぇは訓練兵団本部に戻らずに、どこほっつき歩いてんだ」

ぐりぐりとわし掴むリヴァイの手は力が入っていて結構痛い。

「っ!!」

涙目になりながら痛みに堪えて何て答えようか迷っていると、リヴァイの手の動きがふと止まる。

「あんな奴らの戯言に一々突っ掛かるな。どうせ大した事ない連中、上官に告げ口すれば罰を与えてくれる」

淡々とした口調だけど、私の気持ちを一番に察してくれてるリヴァイの言葉に、私は別の意味で涙が出てきた。

「…っ、でも、っムカついたんだ。心臓捧げた兵士の癖に、本当に死んだ人たちの事、馬鹿にした彼奴らがっ」

俯く私の前にリヴァイは移動すると、私の頭を自分の胸に押し付けて来た。

「お前は間違っちゃいない。良く我慢した。今はゆっくり休め」

ぽんぽん、とゆっくり私の背中を叩くリヴァイに、より一層涙が込み上げてきて、私は声を圧し殺して泣いた。

そうして泣き疲れた私はあのまま意識を手放し、気付いたら訓練兵団宿舎に寝ていた。
リヴァイが運んでくれたのだろう。潔癖症な機雷のある彼のお陰か私の身なりも着替えさせられており、身体に付着していた泥や返り血も拭われていた。キレイに折り畳まれた着替えが椅子の上に置いてあり、ホント面倒見の良い兄だった。
異性にそんな事をされれば本来なら恥ずかしさでどうにかなりそうだけど、流石に何度も転生して、尚且つ信頼している相手なのだからそこまで恥ずかしさはなかった。それに流石に全てを脱がされたわけではない。
私はクスリと笑うと、用意された着替えを持つと、シャワーを浴びに部屋を出た。

着替えたら、今度こそリヴァイに"ただいま"を言おう。
それから、シェイマスの墓参りを皆で行こう。
ここ一年、訓練兵団にいたお陰で皆揃うことが難しかったし。
それと、エルヴィンさんに会って、次の103期訓練兵団に入ると伝えよう。たった一年では、やはり兵法何かは習いきれなかったからだ。忍であった時にも習ったけど、やはりこちらの世界のも知るべきと判断したから。

やることは色々ある。

真新しい衣服に袖を通すと、私は先ずはリヴァイの気配の元へと向かった。




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