2ndライフ
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あっ、死んだ。
そう思ったのは私の記憶に有る限り、三度目。
三度目の正直。と嫌な言葉が脳裏を過ぎるけど、そういえば一度目で本当に死んでいたのを思い出した。


2ndライフ〜もうひとつの世界〜


花も恥じらう16歳と言う短命な人生が終わりを告げたのは、家族と行った海外旅行での飛行機事故。凄い確率で当たらない筈の雷による墜落。運悪く、私達家族は全員死亡。

ああ、短い人生だった。
こんな事なら友達から借りた本を返しておけば良かった…とか、次の人生はもっと全力で青春を謳歌したいな。などと、平凡以上に地味且つつまらない人生を生きてしまった自分を反省した。

だから、次に意識がはっきりした時、自分が胎児になっている事に気付いた。凄い。記憶持ちってこういうことか。などと感心した。私の16歳後半は、転生二次小説にはまっていて、実際に前世の記憶を幼い頃は持ってると言うのを聞いた事があったから、正直憧れたりしてみた。
あれ、そういえばお母さんのお腹の中にいる時は前世の記憶があるって言ってたっけ?
まあ、どちらにしても、体験できたから感動。
どうせ産まれたら忘れてしまうし、と楽観的に考えていた。

「おぎゃあ、おぎゃあ」

「産まれたっ…!」

「元気な女の子ですよ」

意外にも記憶は鮮明、と言うより意識がばっちりで生まれ変わった私は、久々の空気に上手く息ができなくて叫んだ。これが俗に言う産声かぁ。

目はさすがに眩し過ぎて開けられないから、直ぐ脇にいる両親の顔は見れなかった。

ゴゴゴゴオォオ

ガタガタガタ

「じ、地震!?」
「おぎゃあおぎゃあ」
「きゃあっ」


突然の地震による大きな揺れ。
周りの悲鳴に、身体に感じる大気の揺れに、既視感。
飛行機事故を思い出す。

や、まずい、でしょこれ
母親らしき人の腕に抱き込まれた状態で嫌な予感がビシバシする私。
ここが病院ならまだ建物は丈夫な造りをしている筈なんだけど、生憎、ここは診療所。母親は看護師で、父親は某有名アクション俳優らしく、病院だと入院になるためまだ存在が秘密な私は父親の知り合いの医者の所で産まれたのだった。

ガシャン

棚のガラスが割れる音が遠く聞こえる。

ビキッ
バキイィッ

「危ない!!」
「きゃあぁっ」


あっ、死ぬんだ。
そう思った。

被さって護るように抱き込まれた瞬間に、眩しさが消えたので、無理矢理目を開いて見た。上から大きな塊が迫るのが、スローモーションの様に見えた。

ああ、嫌だ。
まだ、死にたくない。せっかく生まれ変わったのに、まだ両親の顔すら見ていない。
声だけを聞いてきたこの数ヶ月。とても嬉しそうにしている両親を早く見たいと願っていたのに…

『あ"っ!いたぁあっ!!』

瞬間、パアッと光った視界に、反射的に目を閉じる。
何、このひかり…?

てか、何今の声…


眩しさが退いた(揺れも治まっていた)ので、目を開けると目の前には性別、年齢不詳な二人の人が立っていた。

『やぁ、初めまして。私は魂の管理人のシレン。こっちは助手のアコ。今回はうちの助手が君の魂の転生先を間違えちゃってね。気付いた時には胎児に魂が定着しちゃってたから見付けられなくてね…産まれた瞬間に君を見付けたからこちらに回収させて貰ったんだ』

一息になんだか説明をし始めた、男(見た目男)に訳がわからず、もう一人の助手と思われる女(見た目女)に視線を移すと、ため息を吐かれた。

『すみません。唐突過ぎて、分からないでしょうが、簡単に説明すればこの管理人の言う通りです。』

「つまりは今回私はまだ生まれ変わる筈じゃなかったってこと?」
もう死んだの確定しているし、ここが死後の世界なんだからなんでもありだろうと私は考えるのを止めた。
落胆はする。だけど怒る気にはなかなかなれなかった。
さすがに二回も死期を悟ると一気に精神年齢も上がると言うもの。走馬灯なんて人生の振り返りだから、人生三度送った事になるだろう。

『いえ、生まれ変わる世界が違ったんです。前世で飛行機事故で亡くなった貴方の魂は回収して、転生させる筈だったんですが、貴方だけを見付けられなくて…』

『そう、つまり君は死んだ瞬間、今の胎児に吸い寄せられちゃった訳なんだよ。流石に肉体を持った魂を剥がす事は出来ないし、肉体事回収しても、胎児にも満たない状態では死んでしまう。もちろん無理にそれをすれば魂に何が起こるか分からない。だから、君が産まれてくるのを待っていたんだ。』

「でも、さっきは見付けられなかったって…」

『そうですね。胎児では魂が透明で、色が付いていない。だから同じ時期に妊娠している者を全て確認するには骨が折れるんです』

「ああ、はい何となくわかりました」

だから、あの声の言葉か…
と、ふと疑問が生じる。

「まさか、私を回収するために地震を起こしたんですか?」

地震で死ぬ瞬間に現れた光。魂を回収するには肉体を消滅させるのが一番早い。
だから、まさか私のせいで、今回の両親や他の人が巻き込まれたのか…

『わわ、違うよ!今回の地震は予測されてたし、あの人達の運命でもあったんだ!』

『そうですね。第一、貴方がその胎児に憑依しなければ、魂のない死産の筈でしたし』

「なっ…!?」

『ああ〜、それ言っちゃうか…』
『当たり前です。本来産まれるべき魂があったんじゃないかなどと心配かけさせてどうするんですか。ですから、貴方が気に病む必要はありません』

『あっそれ私が言いたかったのに』

もうどっちか助手だか分からない言い合いだな…
とりあえずほっとはしたけど、それでも人の死が運命だなんて言われると切なくなるのは仕方ないんだろう。
あれ、それで私は結局どうなるんだろ…

『ああ、そうだ、それで、君には飛んでもらうよ。本来産まれるべき世界へ。本当は母体に送りたかったけど、もうあちらは一人で産まれてしまった。だから、君のその身体を死なせる訳には行かなくて苦労したよ。間一髪、間に合って良かった』

「えっ、それって」

私、まだ死んでなかったの?

『すみません、もう少し説明させていただきたいのですが、時間がありません』

『本来あるべき魂がいないのは、人の死の運命を変える事より重要なんだ。ごめんね、お詫びとして記憶は残しておくから。恨み事は死んだ時に聞くから言ってね』

「はっ、えっ、」

整理する暇すらなく、私はぼやける視界から、一瞬にして何も見えなくなった。



to be contenue…

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長くなりそうだったので一旦終わり。


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