少女の苦手論理

生粋の日本人、だからこのまま小学校を六年通うのだと思っていた。
でも気付いたら外国からの学校入学案内が届き、何故か既に飛行機のチケットとパスポートを渡されあっと言う間にイギリスに出国。学用品から日用品まで買い込み、いつの間にか小学校には転校手続きがなされていた。
夏休みの間に起こった出来事だっただけに、数少ない友人に何も挨拶せずに転入して早二ヶ月が経った。

「非常識だ」

ため息を吐きながら両親に宛てて書いた手紙を出しに来たけれど、まさかの郵便局ではなく、梟が運ぶと聞いた私は梟小屋にて沢山の梟に囲まれ内心びびりながら教わった通りに一匹の梟と目を合わせると片腕を差し出す。

「ホゥ」

するとその梟は一鳴きして私の出した腕に止まった。がっちりと梟がローブに掴まったけど、思いの外痛くなく、軽い梟に魔法生物は人間界とは生物学上は同じでも、やはり違うのかと感心する。

「うわぁ」

見た目に反して大人しく、意外と可愛いその子に、私は手紙をお願いする事にした。

「宜しくね?」
「ホゥ」

また一鳴きしてバサリと羽を広げて行ってしまった梟に、本当に大丈夫かと心配になりその姿が見えなくなるまで見送った。

「シェリ!」

梟が見えなくなっても暫く外を見ていれば、後ろから突然大声で名前を呼ばれてびっくりする。振り返るとそこには…

「ブ、ブラック…」

同じ寮のシリウス・ブラックが私を見下ろしていた。
彼は確かリリーの事を好きなジェイムズ・ポッターの悪友だ。
そういえば、同室の子や、他の女子の皆さんは彼をハンサムだと騒いでいたのを思い出す。
だけど初めて喋るブラックには悪いけど、同い年なのに高身長なのと、私を無愛想に見下ろして来ているので怖いと思ってしまう。

「何を、そんなに見てたんだ」

無意識に後退する私に近付きながら問い掛けて来た内容に、私は何の事かと一瞬考え、梟の事かと思い当たる。

「日本に手紙を、出したので見送りをしてました」

「日本に?知り合いか?」

何故か宛先を気にしたブラックに、私は不信に思うものの答えなければ睨まれそうで素直に答えるとこにした。

「日本にいる両親宛てです。もう二ヶ月経ったのに一度も送ってなかったので…」

見下ろしてくるブラックは梟小屋の暗さも合間って上手く表情が見えずに怖く感じた。そのせいか涙が今にも零れそうだった。

「そ、そうか!」

すると私の答えに、急に声のトーンが上がったブラック。何でだか気になって見上げれば、顔を反らされてしまった。
その行動に私は何かしただろうかと首をひねるも、特に会話する事もないので、それじゃあとその場を去ろうとした。
すると、何故か通りすぎざまに左腕を掴まれビクリとしてしまう。


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