酒の光明

ある朝目覚めると、隣にはリヴァイ兵士長が寝ていた。

えっ?

目が覚めたと思ったのは間違いで、まだ夢なのだろうか。
その割には身体が怠い上にその、下腹部よりももっと下の違和感。訓練でも感じた事のない身体の不調に、私はだんだん真っ青になって行く。
とにかく身体を診てみる。

(先ずは服…って着てない!?)

完全なる裸。その際にちらっと見えた兵長はかろうじて下着をはいている程度だった。

(夢、じゃない…)

現実を把握してだんだん焦りが出るが、唯一の救いは兵長がまだ目覚めていないこと。
このまま服を着て何もなかった事にすれば問題ない。
そう思った私はそろりと気配を圧し殺して脱ぎ散らかされた服を拾い上げる。

「何だ、まだゆっくりしてろ」

すると突然背後から兵長の声が掛かり、ビクリとしてしまう。

「へ、兵長!?」

驚きと共に声が裏返る。まだ裸なので、布団のシーツを身体を隠すように引っ張った。

「あの、その、私…」

ぱくぱくと何かを言おうとしてはどう言ったらいいか解らず顔を真っ青にして口を開くだけだった。

「おい、シェリ。覚えてねぇのか?」

そんな私を見て兵長は察したのか、訝しむように訪ねてきた。
それに対し、嘘をつくのも相手は兵長なので出来る筈もなく、結果、俯いて消えそうな位の声ではいと答えた。

そんな私の答えに焦る様子もなく兵長は起き上がり、私と目を合わせてくる。

怒っているのかその睨む様に見てくる兵長に、私は思わず謝った。

「す、すみませんでした!!」

ガバリと土下座する勢いで頭を下げるとその後頭部にはひしひしと視線を感じた。

「普通は男側が言う台詞だと思うが、なぜそう思う」

いつも通りの声音に、怒っているようではないと思いつつ、私は理由を言った。

「どう考えても私が兵長に泣きついて襲ったとしか考えられません」

昨日の最後の記憶が正しければ私は酔いまくって兵長に絡んでいた。

「シェリよ、俺は女兵士に言い寄られて馬乗りになられたからって振りほどける」

その言葉を聞いて、では兵長は私に馬乗りで襲われたけど、振りほどかずにいてくれた。つまりは合意の上だったと言うことか。

じゃあ、その兵長が振りほどかずにいた理由はと言えば、やっぱり、昨日のが原因なわけで…そうでなければ兵長がさせてくれるわけないのだ。

「兵長、ありがとうございました。お酒のせいで覚えてはいませんが、私の身体の思い出にはなりました。これで思い残す事はありません」

そう言って頭を再度下ろすと、私は兵長に背中を向けて服を着ようとした。

「おい、話しを勝手に終わらせるな」

けれどそれをしようとした私の腕を兵長が掴んで阻止された。
初めてだった痛みと、怠いので上手く身体のバランスが取れなかった私は兵長に引かれるがまま後ろに体重が傾き、兵長の方へ倒れた。
とん、と当たった背中には兵長の厚い胸板があり、どきりと胸が高鳴ってしまうのは、やはり私がまだ諦められていない証拠だった。

「あの、昨日の事でしたらもういいので、忘れて下さい。今回のこの事で、兵長の彼女面したりもしないし、誰にも言いません。だから、兵長は何時も通りに過ごして頂いて、私の事は忘れて下さい」

自分で言っていて泣きそうになるのは仕方ないだろう。だって、折角好きな人と一夜を共に出来たと言うのに、それが部下に対する同情で、この先私が生涯を共にしなければならないのは好きでもない貴族の子息なのだ。感傷的にならないと言う方がおかしい。

「だから、話しをたたむな。俺の話しを聞け泣き虫」

すると後ろから兵長に抱きしめられたかと思えば鼻をつままれた。むぐっ、と呼吸が苦しくなり、喋るのを中断した。

何故だか兵長と甘い体勢に、胸が熱くなるも、自惚れてはいけないと舞い上がりそうな思考を無理やり押さえつけた。

「兵長?ひゃっ!?」

この先何をしたいのか兵長の意図が解らず呼べば、後ろの首筋をきつく吸われたかと思えばその後そこを舐められた。
その兵長の行動に、ゾクリと背筋に痺れにも似た感覚が走る。

「気に入らねえ」

背後で呟かれた兵長の言葉に、私はその意味を問おうと口を開いた所で、新たに別の刺激が身体を走り、言葉を紡げなかった。

「あっ、んっ」

シーツ越しに兵長の手が触れた乳房。その後先端を指先で押し潰すように刺激されれば思わず感じてしまった。それは、相手が兵長だからだろう。先日お見合いさせられた貴族の子息に、無理矢理触られた時には嫌悪感しか無かったのだから。

「勘違いするな。先に組み敷いたのは俺だ」

「えっ」

まさかの兵長の言葉に、思考が一瞬吹っ飛ぶ。

「百歩譲って夜の事を覚えてなくても許してやる。それはまた同じ事をすれば良い。だが、お前を忘れろだとか、他の男の所に嫁ぐとか言うのは気に入らねえ」

兵長の言葉の進撃に、私はだんだんその意味を都合良く捕らえて行くと、同時にそうだと確信してしまった時の絶望感が頭を過り、必死でそうじゃないと頭をふる。

「だめです、兵長。それ以上は…!」

「好きだ、シェリ。俺の女になれ」

直接的な告白。まさか両想いになれる日が来るだなんて思ってなかった。熱い感情が胸を焦がす。
なのに、それを素直に受け入れる事がもう出来なくなっている今、悲しくて、辛くて涙が出た。

「兵長、ダメなんです。もう…」

相手の親は兵団に投資をしていて、調査兵団もそれにあやかっている。私の家も貴族と呼べるが、相手程の莫大な資金や権力があるわけではない。ここで私が断れば、兵団への投資も絶たれ、挙げ句実家の家族に迷惑がかかる。だから、見合いと結婚の話しが出てしまった時点でもう私に残された道は貴族との結婚一つだけだったりする。

それを昨晩嘆いて同期のペトラとグンタに居酒屋で酒を飲み絡んで、結婚は断れないと語って。
兵団は辞める様に言われたから、皆とはもう戦えないし、折角、特別作戦班に配属されたのに、リヴァイ兵長の役に立てなかったから悔しいとか、初めては好きな人とが良いとか言っていた。

そこに、分隊長達と飲みに来たリヴァイ兵長に、ペトラが声を掛けて何故か事情を話されてしまい、それからいつの間にか兵長と二人だけで飲んでいて、そこからの記憶が曖昧だった。

「シェリが気にしてる事を排除すれば、お前は俺の女になるか?」

ぎゅっとまた強く抱きしめられてそんな事を質問してきた兵長に、私はそんな事ができるなら、喜んで兵長のものになりたかった。

「そんなの、決まってます。私は、リヴァイ兵長の事が好きなんですから」

そう頷けば、ぐいっと顎を上向かされ、その後暖かい兵長の唇が私の口を塞いだ。舌を入れないが長いキスに、私の思考は兵長の事でいっぱいになってしまう。

「なら、俺も腹を括る。明日、一日空けておけ」

漸く放された唇と身体にボーッとしてしまったが、兵長の命令を無下に出来ないので私ははい、と頷いた。

*

そうして昨日はこの後用事を思い出したとかで兵長と別れ、約束の翌日になった今日。

昨晩に兵長から声を掛けられた時には心臓がドキドキして仕方なかった。

『明日午前10時に内地に出かける。一緒に来い。仕事じゃないから団服以外の格好にしろ』

それだけ言うと直ぐに部屋を出て行く兵長。まるでデートの約束のような兵長の言葉に、周りに居たペトラやグンタが騒いでいたのは記憶に新しい。

ペトラにはやったじゃん!と喜ばれ、グンタにはただの買い出しの荷物係だ。勘違いすんじゃねぇ。クソ羨ましくない。…なんでオレじゃダメなんだ。と嫉妬された。

グンタの言う荷物係の線はないとは思いたい。今までそんな兵長見たことない。

兎に角何を着ていけば良いのか分からず、兵長に何処に行くのか聞こうにもあれ以降忙しいのか全く捕まらなかったので参考になるものがない。
ペトラには「折角私服なんだから、お洒落して兵長にかわいいって誉めて貰いなさい」なんて言われる。正直あの兵長がそんな世辞を言ってくる想像が出来なかった。でも、確かに折角なのだからと、白の膝たけのワンピースに、空色のニットのカーディガンを着て、足下は踝までのベージュのブーツを履いた。これならワンピースであってもヒールではないから動きやすい。本当にデートなら、もっと可愛くしたかったのが本音だけど、何をしに行くのか分からない以上これが無難だった。

コンコン、と部屋をノックする音が聞こえたのでドアを開ければそこには昨日ぶりの兵長が、団服ではない格好でいた。灰色のブレザーに、インナーに水色のシャツ。黒のスリムパンツに黒のストレートチップ。どこか清潔感があるその格好は流石兵長だ。

「格好いい…」

「…そうか。お前も悪くない」

思わず口に出してしまった言葉に兵長は一瞬間をおいて返事をした。それは、照れたって事で良いのでしょうか兵長?そしたら何だか嬉しいと感じた。それに、私の服装に対しても兵長なりに誉めてくれたので、私の気分は浮上する。

行くぞ、と言われて直ぐに部屋を出ると、休みのせいか団員の数はまばらで、それでも私達は特に兵長は目立って皆の視線を集めていた。

私はそんな兵長と自分がまさか私服で出掛ける事が出来るだなんてまるで夢みたいで、兵長の後ろを歩きながらふわふわした感覚でいた。

「なあシェリ」

「はい!」

ぼーっと兵長の後ろを見つめながら歩いていたら、突然兵長に名前を呼ばれ、大きく返事を返した。

「後ろを歩くな、隣に来い。ペースがわかんねぇだろうが」

「えっ、あっ!すみません」

兵長が歩くスピードを考えて歩っていたのに漸く気付いた私は慌てて兵長の隣まで行った。

「何時も、兵長の背中に着いて行ってたので、つい癖になっちゃってました」

任務時の事を思い出してそう言えば、兵長は一瞬目を開き、そしてその後一瞬何かを考えて、おもむろに私の右手を握ってきたのでドキリとする。

「へ、兵長!?」

私はその突然の行動に心臓がヤバい位速くなり、思わずどもった。

「また気付かねえ間に後ろに居られても困るからな。内地の船に乗るまではこのままだ」

「うっ…お手数おかけします」

「別に迷惑じゃねえ」

そう言うと、また歩き出した兵長は先程よりもゆっくりと歩いた。どうやら私の歩く速さに合わせてくれているようだった。
兵長のそんな紳士さに、私は益々兵長を好きになってしまっているのに気付き、慌てた。兵長はああ言ってくれたけど、そもそも一兵士でしかない私達に、どうするかなんて出来そうもなかった。

*

「あれ、ここって…」

何処に行くのか知らされずに、ただ兵長に着いて来たけれど、着いた先には見覚えがあった。数日前に、私はここに来ていた。

お見合いさせられた貴族御用達の食事所だった。

「結婚の話しを破談させるんだ。シェリはただ居れば良い」

中に連れられ見えた先に両親と、相手の貴族と、その子息。それに見覚えのない身形の良い男性が一人いた。それに私は急に現実に戻され震えた。覚悟はした。だけど、兵長と此処まで来る間に、それもただの痩せ我慢だったと想い知らされた。
そんな私の肩に兵長はぽん、と手を置くと、ボソリと私にしか聞こえない位の声で先程の言葉をくれた。

「シェリさん、お返事を頂けると言うからこうして集まったのだけれど、そちらの方は?」

相手の両親はやんわりとした口調で問い掛けてきた。でも私にはそれに何故か断る事は許さないと言ってるようだった。ちらりと自分の両親を見れば、すまなそうに私を見ていたけど、でもどうにかしてくれそうになかった。

「えと、こちらの方は調査兵団の兵士長でリヴァイ兵士長です。私の直属の上司です」

「あなたがでは、あの」

私の説明に、皆がリヴァイ兵長の噂を知っていたようで驚きの表情をする。

「初めまして。私はキング・ナイトレイ、シェリの婚約者です。あなたの噂は聞いています。素晴らしい強さを持っていらっしゃるようで、是非今後も巨人の脅威から我々を護って頂きたいです」

子息のキングが兵長に向かって挨拶をしてきた。私は、一瞬、兵長がキングに蹴りを入れるのではないかとハラハラしたが、そんな事はなく、見たことない位の笑顔で相手に挨拶を始めた。

「調査兵団のリヴァイだ。巨人を駆逐するのに掛けては既に兵団に入った時に誓っている。シェリがうちの班に来てからはより犠牲者も少なくなって助かっているんだが。今回シェリが貴殿方より離隊を進言されたと聞いて、それなら上司である俺に挨拶をするよう団長から言伝てを頼まれた」

「まぁ、わざわざ一兵士の為にご挨拶だなんて、お忙しいでしょうに」

まさかエルヴィン団長にまでそんな話しが回ってしまったなんて知らなくて、私は驚く。

「"大事な戦力の争奪戦。全力出さずに負けるのは許さない。勝ってこい"」

「どういう、意味ですか?」

そこにいた人達殆どかそう思った事だろう。団長の言伝てはまるでリヴァイ兵長に言ってるみたいにしか聞こえなかった。

「そのままの意味だ。シェリは必要な人材、シェリを貰うのは俺だと言いにきた」

「なっ!」
「何を血迷った事を!ナイトレイは調査兵団にも援助しているんだぞ?そんな事すれば、どうなるか分かってるのか!」

兵長の言葉に、案の定ナイトレイの両親は怒り、私の両親は青ざめる。

「シェリ、貴女一体どう言うことなの?」

「す、すみません!私は、どうなっても良いので両親と仲間に手は出さないで」

慌てた私は咄嗟に兵長の前に出てナイトレイ家の怒りを鎮めようと声を出したけど、最後まで言い切る前に兵長の手が伸びて来て、私の身体と口を拘束されてしまった。

「むぐく!(兵長!)」

「いいから、大人しくしておけ」

力を入れても全く微動だにしないのはやはり兵長だから。それにしても、兵長の落ち着き様に私は不思議でならなかった。

「これは、エルヴィンとの約束で極秘事項だが、こいつを貰い受ける為に話す事にする。俺の名は、リヴァイ。爵位で言えば、公爵だ。なぁ?エドワード公爵?」

「全く、久しぶりに実家に顔を出したと思えば好いた女史の略奪の為か。まあ、悪くないけど」

そう兵長に声を掛けられた男性はエドワード公爵だと認め、その爵位章を見せられた。私達は唖然とするしかない。

「ただのウェイターではなかったのか!?」

「家に寄り付かない弟に珍しく頼まれごとされれば何でも兄としてはやってやるだろう。それで?君達はその貴婦人をどうするのだっけ?」

エドワード公爵に睨まれたナイトレイ家の一家はその瞬間土下座でもする勢いで謝ってきた。

「す、すみません!公爵様の婚約者に手をだすなんて恐れおおい!申し訳ございません」

「これまで通り、兵団には特別援助は続けさせて頂きます。どうかお許しを」

リヴァイ兵長とエドワード公爵に向かって頭を下げる三人に、私はどうすることも出来ずに兵長の腕の中で固まっていた。

「一つ、約束しろ。この事は一切表に漏らさない事だ。守られなかった時はどうなるか」

「はい!貴方がリヴァイ公爵様であることは我々だけの秘密に致します」

「悪くない。もう行っていいぞ」

「ありがとうございます!」

そう言ってナイトレイ家の人達はその場をそそくさと出ていった。

残されたのは私の両親と、二人の公爵様だった。

「さて、貴殿方お二人にも、口止めしなくては」

エドワード公爵が両親へと顔を向ければビクリと固まる二人。

「止めろ。てめえは威圧感がすげえんだ。礼は後でするから護衛でも着けて仕事に戻れ」

「ひどいなリヴァイ。まぁでも元気そうで良かったよ。では、シェリさん、ろくでもない弟だけど、根は良いやつだから、これからも宜しく頼むよ」

「えっ、いえ、こちらの方がお世話になりっぱなしです」

「そうだな、礼は今度、シェリさん、貴女が私と食事でもしながらゆっくりリヴァイの事教えてくれればそれでチャラにしよう」

そう言ってエドワード公爵はリヴァイ兵長の肩を叩いて去って行った。リヴァイ兵長より頭一つ分大きかったと言うのは口には出さないでおこう。

「騒がせてすまなかった。俺の事については黙っていてもらえるとありがたいが、頼めるか」

リヴァイ兵長は私の両親に詫びの言葉を言うと、今回のリヴァイ兵長の爵位の事について黙っていて貰うようお願いしていた。

「父さま、母さま、私からもお願いします」

私も何もしない訳にはいかないと、自分の両親なのだからと説得してみる。

「いえ、公にするなど滅相もございません!しかし、あの、娘のシェリと貴方様の関係は」

父さまの反応に私は瞬時に赤くなる。
まさか婚約が破棄になるなんて思ってもなかったのだから、そうなった今、私達の関係はどうかと改めて考えると思考が追い付かなかった。

「婚約破棄までさせたんだ。今から結婚を前提に交際を申し込むつもりだ」

本人目の前にして簡単に重要な事を言っている兵長に、私は恥ずかしさのあまり顔にさらに熱が昇る。

「そうですか。至らない娘ですが、どうか宜しくお願いします」

「ああ」

そう父さまの挨拶に兵長は返事を返すと、直ぐに私の手を握り建物から出て行く。

「兵長!あの…」

「黙っていて悪かった。だが、爵位持ちだなんて知れたら兵団で皆が緊張しっぱなしになるとエルヴィンが言うから隠していた」

ポツリと語り始めた兵長は、不安そうな感じだった。そんな兵長に、私は握られた手を握り返した。

「私は、兵長の分隊長並の仕事をこなしてしまうところや、何より仲間の命を慮るところ、強くて逞しいところ、皆大好きです」

恥ずかしいけどちゃんと言わなければ伝わらないと思って言うと、兵長は突然歩くのを止めた。

「俺が、王の子息だと知っても、その気持ちに変わりはないか?」

「はい、身分が違うとは思いますが、恋するだけは自由ですよね?だから、例え兵長が公爵様に戻るとしても、私はリヴァイ兵長をお慕いしてます」

そう言えば、兵長は私の手を引いて抱きしめてきた。

「爵位なんざ今回の事がなければ、使おうなんざこれっぽっちもなかった。だが、これがなきゃお前を救えなかったのも事実だ。だから、これからもお前を救う為なら何だって利用する。それでも、俺のものになってくれるか?」

リヴァイ兵長の潔癖らしい悩みだった。そんなもの、あの貴族は一切持ってなかった。だけど、兵長はあの人とはやっぱり違うと分かると嬉しくなった。
私は兵長の背に腕を回すと抱きしめ返した。

「私は貴族の出自ですが、やっぱり兵士なのでこれからも巨人と戦います。戦いの中死ぬかもしれません。それでも死ぬなら兵長の隣に最後までいたいです」

そう言うと、兵長は一度私をぎゅっと抱きしめそして離した。
見上げる兵長の顔は壁外調査に行く時並に真剣な眼差しだった。

「俺は、三男だし王位なんてもんは柄じゃない。これからも兵士として生きていく。それでも良ければ、生涯俺の女になれ」

そんなもの、兵長だから良いに決まってる。

「はい、喜んで」

それからは折角なので、デートをして帰った。


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