腐敗系男子


 女装か全裸か俺の服

「高座、見てみて!これ!」

 自室内。
 机に向かって今日の授業の復習を行っていると勢いよく扉が開き、ルームメイトの山下が飛び込んできた。何事かと顔を上げ、山下へと目を向けた俺はそのまま絶句する。
 その手に握られてるのは見間違いではない、細かいレースのフリルがあしらわれたミニスカのメイド服が握られていた。

「うわぁ……お前……」
「被服部に頼んでおいたのが完成したんだよね!すごいレベル高くない?やばいよね!スリーサイズも全部原作に忠実に作ってもらったからさあもうなんかちょっとこれを本人が着ているって思ったら僕鼻血が……」

 確かに、ここ最近山下がハマっていたエロゲーのヒロインが着ていたものによく似ている。
 うちの学校に被服部が存在していたということにも驚いたが、何よりも山下のワガママを聞いて作り上げて見せた被服部のプロ根性にも驚かされた。
 そしてなにより驚いたのが、それが明らかに女物だということだ。

「……お前が着るには小さすぎないか?」
「ないない!そんな勿体無いことするわけないじゃん」

 正常なやつではないとは思っていたが、流石にこんな二重の意味でキツそうなやつを着るほどいってはいないようだ。山下の返事を聞きほっとすれば、山下は「勿論ぶっかけ用だよ」と笑顔で続ける。
 ……前言撤回しよう。

「でもまあ、よく出来てんな。貸せよ」
「やだよ、高座に貸したらホモプレイに使われるもん」

 言いながらメイド服をぎゅっと抱き締める山下。
 人をホモホモ言いやがってと内心舌打ちしながら「使わねーよ」と答え、そこで俺は閃く。
 ――……なるほど、コスチュームプレイか。

「高座、顔が悪役みたいなことになってるよ」
「気のせいだ。それより山下、被服部って頼んでくれたらなんでも作ってくれるのか?」
「……ちょっと高座なに企んでんの」
「企んでねえよ。作ってくれんのかって聞いてんだよ」
「……僕はゲーム数枚貸すってことで作ってもらったけど、どうだろ。注文は聞いてるみたいだよ」

 そう思い出しながら言う山下に、「ふーん、へー、なるほどなぁ」と相槌を打つ。

「山下、確かお前鹿波と同じくらいだよな。身長」
「うん、まあそうだけど……ちょっと待って。なんか嫌な予感するんですけど」
「人聞き悪いな。ただちょっと手伝ってもらうだけだって」
「……手伝う?」

「とか言って相手の善意に託つけて下半身の手伝いまでさせるつもりなんでしょ?それで断ったら『所詮その程度の軽い気持ちで承けたんだな、君にはガッカリだよ。この偽善者!』とか言って相手の罪悪感を煽って股開かせるんでしょ?やだ、僕そんなの耐えきれない!」ベラベラと色々なものを垂れ流す山下にこっちの方が耐えられなくなりそうだ。
 取り敢えず、メイド服片手に興奮し出す山下を落ち着かせることにする。

 ◇ ◇ ◇

 なんやかんやあり、なんとか山下を採寸した俺は被服部という名のコスプレマニアの集団に依頼を申し込んだ。
 山下のようにエロゲを所持しているわけではなかった俺は漫画と交換ということになったのだが、あいつら無駄に目が利くらしく俺のベッドの下に隠していた男の娘受けアンソロジー(コスプレ特集)が欲しいとか言い出してもうそれからのことは思い出したくない。
 多少ごたついたものの、俺と被服部の交渉は成立する。……そう、俺のオカズと引き換えに。
 そのことがただ惜しかったが、部員が気に入ったらしく全力を出して頑張ると言っていたのでまあよかったのかもしれない。

 そして、数日後。
 俺の携帯には被服部から衣装が完成したというメッセージが届いていた。


 ◇ ◇ ◇

 翌日、深夜。
 被服部から受け取ったそれをプレゼント用の袋に入れ、それを片手に俺はとある場所へ向かっていた。
 ――学生寮、大浴場。
 既に入浴を済ませた俺が再度ここに訪れた目的はただ一つ、とある人物にこのプレゼントを渡すことだ。
 脱衣所でわいわい騒ぎながら脱衣を始める不良数人。その中には一際目立つ男がいた。
 ――くそ、鹿波め、俺といるときはいっつもしかめっ面のくせに友人たちと話すときは楽しそうに笑いやがって。
 なんだかイライラしつつ、物陰からその様子を伺っていた俺はやつらが浴場へ移動するのを待った。
 時間が時間なだけに、他の利用者はいない。
 暫く様子を見ていると、服を脱いだ不良たちはぞろぞろと浴場へと向かう。
 ようやく無人になった脱衣所内、こっそり物陰から出た俺は先ほど鹿波が服を入れていた棚に近付いた。

 鹿波の脱ぎたて下着ゲーット。
 なんて言いながら別に用意していた袋に鹿波の私服もろもろを詰め込んだ俺は、空になった棚を見て一人ほくそ笑む。慌てる鹿波が目に浮かび、今から楽しみで仕方なかった。
 浴場から聞こえてくる不良たちの笑い声と一緒になって笑いながら俺は再び物陰へ身を潜めることにする。


 数十分後、暇潰しに鹿波の下着で抜いていると何人かが疎らになって浴場から出てくる。
 どうやら鹿波はまだ風呂に入っているようだ。
 ぞろぞろと出てくる中、目的の人間が出てこないのを不審に思いながらも俺は待ち続ける。
 まさか残った不良と風呂場で乳繰り合ってんじゃないだろうな。……クソ、ちんこがイライラしてきたな。
 鹿波の下着の匂いを嗅ぎながら何発か抜き終えた頃、ようやく残っていた不良と鹿波が出てくる。
 おっせーんだよ、お前らの仲間とっくに帰ってるぞ。
 なんて思いながら後処理を済ませた俺は二人に目を向ける。
 ……どっかで見たことあると思ったら、この前鹿波とフラグ立てていた不良じゃないか。なんだ、もしかしてまじでフラグ立ったのかこれは。
 二人とも変わらない感じで話していたが、脱衣所内にはもどかしいようななんとも言えない空気が漂っている。
 これはあれだな、間違いなくボーイズでラブ的なあれだな。本来ならば腐った性癖の俺としては喜ばしい展開なのかもしれないが、なんだろうか……無性に邪魔をしてやりたくなる。

「なに、お前まだ着替えねえの?」

 不意に、突っ立ったまま動かない鹿波に不良は不思議そうに尋ねる。その一言に、僅かに動揺する鹿波は「先帰ってろよ」と不良を促した。
 どうやら空になった棚を確認したようだ。鹿波の言葉に、やっぱり不思議そうな顔をする不良だったが「わかった」と寂しそうに頷く。
 自ら一人になる選択肢を選ぶとはなかなか賢い。

「じゃあ、後でな」

 着替えを済ませた不良はタオル一枚のままの鹿波を一瞥し、名残惜しそうに脱衣所を後にする。
 後でな、ということはまた後で会う約束をしているということか。しっかりフラグ立ててんじゃねーよと口の中で吐き捨てる。

 ようやく静かになった脱衣所内、一人だけになった鹿波は周りの棚を探し出す。どうやら自分が棚を間違えていると思っているようだ。
 まあ、普通はそう思うだろう。
 が、今回は違う。なんたって鹿波の服下着着替えタオルは全て俺の手の中にあるわけだからな。
 なんだか急に自分が偉くなったみたいで気分がいい。

 不安そうな顔して棚の裏まで覗く鹿波が可愛くて、もう少しこのまま様子を見ておきたくなる。
 そんなところにあるわけねーだろとにやにや笑いながら、俺は用意しておいた着替えもとい被服部渾身の作品を手に取りそのまま物陰から出た。
 近くにあった椅子の上に乗り、棚の上を覗く鹿波は背後から近付く俺に全く気が付いていないようだ。
 身に付けているものが腰に巻いているタオル一枚にも関わらず動き回るのはやはり周りに誰もいないとわかっているからだろう。
 無防備に棚の上を探す鹿波に声かけるのも惜しいなと感じた俺は、少し遊んでみることにした。
 鹿波の腰に巻かれているタオルの結び目に手を伸ばし、着替え探しに夢中になっている鹿波の後ろ姿を眺めつつ俺はそれをほどく。
 糸も簡単にほどけるタオルを鹿波の下半身から取り上げれば、急に涼しくなった下半身に鹿波が手探りでタオルを探す。
 もちろん俺がタオルを取り上げた今鹿波の手にそれらしきものが当たるわけがなく、不思議そうな顔をした鹿波は自分の足元に目を向けた。
 そして、背後に立っていた俺にようやく気が付いたようだ。

「うわっ、お前……ッ!!」

 まるで幽霊でも見たかのような反応である。
 鹿波は慌てて振り返ろうとして俺の手の中にタオルがあることに気が付いたようだ。
 目を丸くした鹿波はじわじわと顔を赤くさせ、「っにやってんだよ!」と声を荒げ俺からタオルを取り上げようとする。
 そして椅子から落ちた。

「椅子の上で暴れんなよ。椅子が可哀想だろ」

 間一髪のところで鹿波を受け止めてやれば、鹿波は「お前のせいだろ」と睨んでくる。可愛いげがないが、正論なだけになにも言えない。

「クソ……ッ離せよ、あっち行け!つーかなんでここいるんだよ。タオル返せよ!」

 せめて一つずつ聞いてくれないだろうか。
 余程動揺しているのか、人の顎を掴みそのまま力業で引き離そうとしてくる鹿波。まじで痛い。

「いいのかよ、あっち行って。困ってるだろうと思ってせっかくコレ届けに来てやったってのに」

 鹿波の手首を掴みそれを離しながら、小さく咳き込んだ俺は言いながら手に持っていたプレゼント袋を鹿波に押し付ける。
 いきなりプレゼントを渡され呆れたような顔をする鹿波。先ほどに増して視線がキツいのはなんでだろうか。

「まさか、隠したのお前か?」

 なんでバレた。このタイミングで現れた俺とプレゼントを不審に思ったのか、鹿波はそう勘繰るように睨んでくる。
「人を疑うのは良くないぞ」言いながら、ぐいぐいと袋を押し付ければ舌打ちが返ってきた。

「どこに隠したんだよ、返せよ」
「いいからプレゼント開けろって」
「よくねーよ!」
「いつまでもその格好でいるつもりかよ」

「まあ、俺は全然構わないんだけど」きゃんきゃん吠える鹿波にそう笑いながら下腹部に目を向ければ、不愉快そうに顔をしかめた鹿波は「気持ち悪いんだよ」と吐き捨てる。
 耳が赤い。なんでもない風を装ってるくせに、指摘されると意識してしまうようだ。
 相変わらず可愛いげがない態度を取る鹿波だったが、文句を言いながらもプレゼントを受け取ってくれる。

「……まじ意味わかんねーし。おい、さっさと離れろよ。近いんだよ!」

 袋を抱える鹿波に胸元を押され、俺は「はいはいわかりました」と鹿波から離れる。
 服がない今、鹿波が逃げることも出来ないはずだ。俺の腕から逃げた鹿波は脱衣所の隅まで走って行き、そこでこそこそと袋を開ける。
 こちらに背中を向ける鹿波に無防備すぎだろと呆れつつ、優しく慈愛に満ちた俺は鹿波がプレゼントの中身を確認するのを待った。
 そして、

「な……なんだよこれ……!」

 それを手にした鹿波は、怒りと羞恥で顔を真っ赤にしながら俺に掴みかかってくる。
 黒い生地。金の刺繍。やはりいつ見ても素晴らしい出来だ――ハイスリットの黒いミニチャイナ。

「お前に似合うと思って用意し……痛ぇっ!!」

 殴られた。

「こんなの、着れるわけないだろ!ふざけてんのか!」
「……いってぇな。着るだけ着てみろって、ちゃんとサイズも合わせてあるから」
「テメェ……ふざけてんのか?!そんなに言うなら自分で着ればいいだろうが」
「じゃあお前が俺の服着るか?俺がたった今まで着ていた俺の体液体臭様々なものが染み込んだこの俺の服をお前が着るんだな?俺の下着を自分の肌に身につけるんだな?そんなにお前が俺に包み込まれて感じたいって言うなら良いぞ、貸せよチャイナ」

「せっかく新品を用意したのにお前がそこまで俺にまみれたいって言うんなら仕方ないよな」噛み付いてくる鹿波に負けじとそう言い返せば、鹿波はぐぐぐと押し黙る。
 無駄に見栄っ張りで負けず嫌いなやつとは思っていたが、まさかここまでわかりやすいやつとは。
 言いながらその場で服を脱ごうとすれば「誰もお前のなんか着るとか言ってねーだろ」と忌々しそうに吐き捨てる。

「じゃあチャイナ着ろよ」
「なんでそうなるんだよ!」
「いつまでもフルチンのままだと湯冷めするだろ?俺だって目のやり場に困るんだよ」
「誰のせいだと思って……」

 鹿波はすっかり俺を犯人扱いしているようだ。心外だ。
 まあ俺が犯人なんだけど。

「じゃあ全裸で部屋まで戻るのか?」
「どうせ、他のやつらいねーし」
「いつ誰が来て見られるかわからない状況で一人ムラムラしながら部屋までちんこ丸出しで帰るのか。お前なかなか変態だな。露出狂」
「……ッこの」
「あーいい眺めいい眺め。乳首立たせてちんこ丸出しのやつに凄まれても全く怖くねえな。あっはっはっはあ゙ぃってぇっ!」

 思いっきり肩を殴られ、俺は「なにすんだよ」と肩を擦りながら鹿波を睨む。

「図星指されてそんなに悔しかったか?露出狂」
「……死ねっ」
「あーそう、そんなこと言うわけね。あー傷付くなあ、鹿波が困ってると思ってせっかく用意してきたのに」

 唸るように吐き捨てる鹿波にそうわざとらしく肩を落とした俺は、言いながら鹿波からチャイナを取り上げようとする。が、鹿波はチャイナから手を離そうとしない。

「手ぇ退けろよ。着ねーんだろ」
「……誰も、着ないなんて言ってねぇだろ」

 俺の手を退ける鹿波は、そう苦虫を噛み潰したような顔をする。
 最初から素直になればいいものを。もっと言うなら、俺を服を着るのが最善だと思ったが意地っ張りな上に無駄にプライドが高い鹿波には無理だろう。
 俺からチャイナを奪い返した鹿波は、それを片手に脱衣所の物陰へと歩いていく。
 どうやら俺の目の前で着替えたくないようだ。
 今さら恥ずかしがる仲でも思うのだが。
 物陰でこそこそ着替えている鹿波を想像しながら、俺はそれを着替え終わることを待つことにする。

 ◇ ◇ ◇

「……なんでまだいるんだよ」

 それが、ようやく出てきた鹿波の第一声だった。
 短いチャイナドレスの裾を引っ張り伸ばそうと試みていた鹿波は、脱衣所で待っていた俺を見るなり嫌そうな顔をする。

「お前、まじで着るんだな」
「……っ、うっせえんだよ。さっさと消えろ!」

 呆れたように笑えば、鹿波はそう怒鳴りながらさっさと脱衣所を出ていこうとした。
 ロングかミニで迷ったんだけどミニにしといてよかった。
 服のゆとりをあまり作らないよう被服部に注文したのがよかったのか、動く度に腰からケツにかけての皺がなかなかいい感じに寄り、体のラインを更に強調させるのもよし。

「嘘だよ、すっげー似合ってる」
「バカにしてんのか」
「誉めてやってんだよ」

 鹿波の腕を掴み、そのまま引き留めた俺は「この下やっぱなにも履いてねえの?」と尋ねながらスカートの裾を捲る。
 そのまま中に手を入れれば、すんなりと鹿波のケツに触れることが出来た。やはりノーパンのようだ。まあ、当たり前だけど。

「なに触ってんだ、てめぇ」
「いや、あまりにもぷりぷりぷりぷり触ってほしそうにしてたから。手が勝手に」
「ふざけんな、死ねッ」

 慌てて俺を振り払おうとする鹿波の腰を片手で抱き締め、捕まえる。
 肘が顎に当たってちょっと泣きそうになったが、そんなことでへこたれる俺ではない。
「離せよ」とか「気持ち悪いんだよ」とか騒ぐ鹿波に構わず、俺は目の前の女装野郎を楽しむことにした。
 男の娘エロ本を犠牲にしてまで得たチャンスだ。こいつの弱味を握って二度と俺に生意気な口利かないようにしてやる。
 引き締まった臀部の割れ目を親指と中指で左右に拡げ、逃げようとする鹿波の肛門に触れる。

「てめ……ッ」
「おお、きゅっと閉まった」
「だ、まれこの……ッ」

 ジタバタと暴れ、人の腕を引き剥がそうとしてくる鹿波。わりと本気で指が食い込んで痛いが、据え膳食わぬはなんとやらだ。
 指先に力を込めれば、湯でふやけて柔らかくなっていた肛門の中へと指が埋まる。瞬間、鹿波の肩がびくりと震えた。

「柔らけ……ッ」
「ッ、て、め……ッん、ぅ……ッ」

 このまま殴られる、ここは畳み掛けて弱らせるのが優先だろう。そう即座に判断し、俺は鹿波の体を腕の中へと抑え込んだ。逃げようとする腰に片方の腕を回したまま、鹿波の臀部を揉みながら指を進める。
 薄い生地の服なだけあって、自分の手が動きまではっきり分かるほど浮かび上がってる図はなかなか……悪くないかもしれない。

「っ、ぬ、け……ッ、ってば……抜け……ッ!」
「……声、ちっちゃ。聞こえねえよ」
「っ、は、く、そ……が……ッ!!」
「……相変わらず、可愛くねえな……ッ」
「ッ、く、ひ……ッ!」

 第一関節まで挿入し、指の動きに合わせて収縮する内壁を指の腹で刺激する。
 前立腺……どこだっけな。今まで読んだBL漫画の知識をフル動員させながらも中を探るように動かせば、腕の中、しがみついてくる鹿波の腰がびくんと跳ねた。

「お……ここか?」
「ッ、ぃ゛ッ、う゛……っ、う、ご、くな……ッ!テメェ……ッ!」

 言葉とは裏腹に、押し付けられる胸には一目で分かるほど乳首が勃起しているのが分かる。それを押し付けられながらこんなことを言われてみろ、動いてくださいと言ってるようなものではないだろうか。パツパツに張った生地に浮かぶその突起を指で摘んだ瞬間、ナカがぎゅっと締まる。締め付けを感じながらも、指先に当たるコリコリとしたしこりを指先で柔らかく押せば、何か言い掛けていた鹿波の声がくぐもったものへと代わった。

「ッ、ふ、ぅ゛……ッ!」
「あれれ?鹿波君、自分から動くなとか言ってたくせにお前……腰揺れてんぞ」
「ゆ、れてねぇ……ッ!」
「嘘吐け。こんなに乳首もちんこも勃起させてといて説得力ねえんだよ」

 その裾の下、乳首同様くっきりと性器の形を浮かび上がらせるその下腹部を太腿で柔らかく押しあげれば、鹿波の口から声が漏れる。
 逃げようとする鹿波を更に抱き締める。俺だって人のこと言えないくらい勃起していたが、知らねえ。鹿波の臍の辺りにちんこ押し当てれば、ちんこ越しに鹿波の腹の奥がびくびくと痙攣するのが分かり興奮した。

「っ、ぶ、っ殺す……ッ、ぜって、ぇ……」
「っ、んな格好で言われても怖かねえっての……ッ、ん、……」

 唇を重ねようとすれば、人の顔を押さえつけそれを拒もうとしてくる鹿波。それにムカついて指の本数を増やす。あっと息を漏らす鹿波の隙を狙って、そのままやつの唇を塞いだ。

「っ、ふー……ッ、ぅ゛……ッ……ふ……ッ」

 動揺してるのか、それとも息苦しさか。何度も唇を離そうとするやつの唇を舐め、塞ぎ、舌を挿入させる。その間も愛撫の手は止めず、硬いケツを揉みながらも指を出し入れしながら中を掻き回してると次第に抵抗していた鹿波のちからが弱まっていくのが分かった。
 お互いの唾液が咥内から溢れようが止めることはできなかった。もうすぐでイキそうだな、と鹿波の胸から伝わってくる心音が次第に激しさを増すのを確認しながらも俺は更に指を増やした。

「っ、ふ、……ッ、ぅ゛……ッ!」
「……ッ、……」

 かくかくと揺れる鹿波の腰を捕らえたまま、前立腺を揉み扱いた。手加減できるほどの百戦錬磨でもない、取り敢えずこいつをイカせて恥ずかしい目に合わせたい。そんな不純な思いだけだったはずなのに、先程まで睨んでいたその目が涙で潤み、絶頂が近付くにつれ焦点がぶれていく様は正直可愛い。……不覚にもだが。
 唾液と混ざりグチャグチャと濡れる音は更に増していく。

「っ、ぁ゛……ッ、ぐ、ッ、う゛……ッ!!」

 ちゅぽんと舌が外れたと思いきや、歯を食いしばり獣のように唸った鹿波の体が魚のように跳ねた。同時に腹部に広がる熱を感じながら、俺はそのまま俺の服を掴んだままくたりとなる鹿波のつむじを見つめていた。
 そして、ふとチャイナドレスの背中についたファスナーが目についた俺は鹿波の腰から手を離し、そのまま背中のファスナーを摘んだ。ジッパーの半分辺りまで下ろし、そこから露になる鹿波の背中に触れる。
 瞬間、鹿波の肩が跳ねた。

「っ、やめろ、へ、んたい……ッ、」

 背骨から脇腹にかけて撫でるように体の前へと手を這わせれば、鹿波はそう背中を丸めるように前屈みになる。
 俺の手から逃げたいようだが、服の中に入っている時点で無駄な抵抗だ。それを無視して相変わらず張った鹿波の胸板に手を這わせ、そのまま全体をゆっくりと揉みしだく。

「は、ッ、や……めろ……っ!気持ち悪いんだよ、テメェ……ッ!」
「その割に、萎えてねえんだよな」
「っ、黙れ、これは……ッ」
「乳首もさっきのじゃもの足りませんつって勃起してるし」
「……ッ!!」

 まだ絶頂の余韻から抜け出せていないようだ。息も絶え絶えな鹿波をいいことに、今度は直接つんと勃起したそこを指で摘めば鹿波の背中が大きく仰け反った。それを無視して、乳頭の側面を指の腹でくすぐるようにすりすりと愛撫する。
 ん、と声を漏らしそうになる鹿波だったが、すぐに唇を噛んで堪えるのだ。

「ほんっと、好きな。お前」
「ん、なわけ……ッまじ、さいあく……ッきもちわりぃんだよ……っ!」

 そう声を荒げる鹿波だったが、変に声を抑えようとしているせいか所々不自然に上擦っていた。ここまで来てもまだ強がるとは、こいつの意地っ張りさには驚かされる。

「……だよな、普通に考えて自分からチャイナ服着て、しかも男からケツの穴と乳首両方弄られて気持ちよくなっちゃってついつい射精しちゃうやつなんていないよな」
「ッ、ふ……ッ!」
「……そんなやついたらただの変態だもんな」

「なあ、変態」と乳首を押し潰せば、びくんと鹿波の肩が震えた。そのまま指先を乳輪の中心部へと埋めるように沈め、指先を動かす。
 野郎の乳なのに柔けえ、と思ってしまうのだから人体の不思議だ。
 先ほどまで吠えていた鹿波は不自然に背中を丸め、腰を引く。そのまま指で穿れば、鹿波は必死に呼吸を殺したまま無言で俺を睨みつけるのだ。

「どうしたんだよ、もっとちゃんと立てよ」
「っ、う、るせ……ッ」
「それとも、支えが必要か? 」

 そう胸板を手で押さえ、そのまま強引に上体を起こさせる。途中頭突きされながらも暴れる鹿波を押さえ込んだ俺は、自分の方へ引っ張り自分の体に凭れさせた。
 そして。

「ッ、……ッ、ふ……」

 唇が白くなるほど噛み締めた鹿波は、上目に俺を睨んでいた。勃起した乳首も、不自然に濃い染みを作ったチャイナも、まだ浮かび上がったままの勃起性器も全て丸見えだ。

「あーあ、なんだこれ……っ、せっかく用意してやったのにすぐ汚してんじゃねえよ……ッ」
「だ、れのせいだと……ッ」
「お前のせいだろうが……ッ!」

 お前が可愛い反応ばっかするからだ、とチャイナの裾をたくしあげれば、先程まで窮屈そうにしていた勃起性器が勢いよく飛び出した。拍子に性器が布で擦れてしまったようだ、「んんっ」と体を震わせる鹿波を抑え込んだまま、ケツが丸見えになるまで捲れば、臍までくっつきそうなほど反り返ったそれが現れる。
 性器は既に精液と先走りでてらてらと濡れ、咽返るほどの鹿波の匂いにどくんと心臓が反応した。

「えっっろ……」
「っ、……ッ、こ、ろす……ッ」

 こいつの語彙は殺すしかないのか。そんな物騒なことあるか。
 派手な模様と色のチャイナと相俟って、鹿波の肌が余計生々しく映った。散々愛撫してやったおかげで口を開いたままのケツの穴は、素直ではない本人とは対象的に物欲しそうに口を開閉させているではないか。ごくりと固唾を飲み、そしてその臀部を鷲掴んだ。
 そして片手で散々窮屈になっていた自分のものを取り出す。「おい」「やめろ」だとかなんとか、腕の中で暴れる鹿波をなんとか抑え込みながらも俺は限界に近い性器をそのまま割れ目へとびたんと押し当てた。瞬間、鹿波の肩が震えた。

「……っ、殺せるもんならならさっさと殺してみろよ」

 まあ、この状況じゃ無理だろうけどな。解れた穴に亀頭を押し当てる。その鹿波の熱を感じながらも俺はそのまま鹿波の腰を掴んだまま鹿波を犯した。
 壁に縋り付く鹿波をバックで肉壁が捲れ上がるくらい突いてピストンを繰り返して、射精寸前になったところで鹿波から引き抜いてそのまま尻に出す。これがコスプレ効果ってやつなのだろうか、黒チャイナが精液で汚れる様は非常にちんこに来る。一度だけで収まるはずがなかったのだ。
「やめろ」とか「待て」とか声を荒げる鹿波の唇を塞いで黙らせ、更に挿入を繰り返す。どうせすぐそこには風呂もある。汚れてしまえばまた風呂に入ればいいのだと二度目の精子を鹿波の髪にぶっかけたり、布越しに乳首をしゃぶりながら前から犯してみたり時折髪ぶち抜かれそうになったりなどと散々俺はチャイナ鹿波を味わうことができた。


 そして事後。
 やはり射精後のこの征服欲、たまんないなとその余韻浸っていたときだった。
 不意に、力なく壁にしがみついていた精子まみれの鹿波がよろめにがら立ち上がる。
 そのままこちらを向く鹿波に、先ほどの調子に乗った自分の言葉を思い出した俺はとっさに身構えた。

 ――殺せるもんなら殺してみろよ。
 いや、まさかな。と思うが、髪に精子こびりつかせた鹿波の表情は幽鬼そのものだ。
 思わず玉ひゅんし、俺はそのまま後退った。

「おー……おー?どうした鹿波君、そんな怖い顔して」
「殺してみろよ……っつったよなあ、お前……」
「いや、ほら、な?さっきのは言葉の綾で、ほら、まじでそーいうあれじゃないっていうか……」

 そうしどろもどろと言い訳を並べる俺に、鹿波はなにも言わずに近付いてくる。
 やばい、あの顔はヤル気満々だ。

「わー!ごめんなさいごめんなさい」
 慌てて後ずさりながらそう情けない声を上げたとき、正面までやってきた鹿波に脛を蹴られた。
 ……あんまり痛くない。てっきり骨を折るまでやってくると思っていただけに、珍しく甘い鹿波に恐る恐る俺は目を向ける。
 そして、思いっきり胸ぐらを掴まれた。

「……これで、貸しは無しだからな」

「二度目はないと思えよ!」そう鹿波は低く吐き捨てる。
 ――どうやら、なんだかんだいいながらも俺が盗んでないというのを信じてくれていたようだ。
 その言葉になんだか拍子抜けすると同時に、これがデレ期かと内心感動する。
 そして、感極まった俺はそのまま間近に迫った鹿波の唇に自らの唇を寄せた。

 因みに全治二週間だった。


【数時間後】

「高座!高座!大変!」
「なんだよ騒がしいやつだな」
「さっき鹿波の部屋行ったら鹿波がチャイナ服着てた!」
「……ああ、あれな」
「え?なにそれ反応薄くない?『えっまじまじ?!まじ生女装男子萌え!たまんねぇ!』ぐらいはしゃいでよ、つまんないなあ」
「状況みろよ、こっちは怪我人なんだよはしゃげるか」
「どうせ自業自得のくせに……」
「あ?」
「い?」
「う?ってバカか。それに、あいつのチャイナ服は俺が渡したやつだよ」
「え?高座が?」
「おー。被服部に頼んだやつだよ、山下に採寸手伝ってもらったろ。あれだよ、あれ」
「ああ、あれかあ!でもよく着てもらったね。鹿波、冗談でも着なさそうなのに」
「それだけどな、実は……」
「えっなにそれ。ちょっと待ってよじゃああの机の上に置いてあるのって」
「鹿波の服」
「なにやってんの高座!バカ!早く返してきなよ!」
「いや、だって俺ってバレるじゃん」
「いやいやいや」
「いやいやいやいや」
「いやいやいやいやいやって違うよ!」
「おおっノリ突っ込み」
「もう、本当に緊張感が……ああっ!」
「なんだようっせーな……ってうわ!」
「か、か、鹿波……なんでここに……え?洗濯?あ、ああ、なるほどね、返しにね。ふふふ」
「いや、今の話は違うんだ。ただのジョークだからさ、ほら、わざわざ返しに来てくれてありがとな。っていやいやいや、机の上になんもねーから!な?ほら、早く帰れって。うわ!うわ!なに勝手に上がって」
「僕は知らないからね、僕はちゃんと止めたからね。今回は僕悪くないからね、全部高座のせいだから」
「山下お前まさか裏切るつもりじゃねえだろうな!っておい、待てって!逃げんな!俺も連れてい……やだなあ、冗談だって。あ?それ?たまたま拾ったんだって、たまたま。そうたまたま、うん。え?イカ臭い?なんでだろうなあ、たまたまイカと一緒に入ってたんじゃないかな。イカだけに。なんつって。あははははごめんなさい」

 おしまい

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