馬鹿ばっか


 21※

「っ、ん、ぅんーッ!!」


上半身を動かし、なんとか体勢を整え直そうとするものの腕が使えないのが痛かった。芋虫かなにかのようにベッドの上で跳ねる俺の腰を掴み、無理矢理高く持ち上げさせる。
必然的に体勢は枕に顔を埋める形になり、息苦しさもだがなによりも背後の状況が全く分からないこの体勢は恐ろしかった。

スラックスを脱がされるのが分かった。血の気が引く。下着越しにケツを鷲掴みにしてくるその手に、汗が、滲む。


「っ、……」

「……どうした?急にしおらしくなったな、お前」


掛けられるその言葉に、耳が熱くなる。
好きで大人しくしてるわけではない、俺だってどうにかできないかと色々考えてる最中なのだ。そう言い返したいところだが、下手に反応したら虚勢張ってる事を岩片に気取られそうで怖かった。
答える代わりに、今度は自分から枕に顔を埋めた。変な声を出したくなかったのだ。


「……可愛くねえ」


吐き捨てられたその声に反応するよりも先に、腿に岩片の手が触れる。腰を突き上げる体勢というだけでも耐え難いというのに、足を大きく開かされ、息を飲む。慌てて閉じようとするが、余計大きく開かされるハメになる。
まじで、これは、死ぬほど恥ずかしい。下着があるからまだいいものの、と思った次の瞬間、ウエストのゴム部分を掴まれ、そのままずり下げられる。


「……ッ、待っ、岩……」

「聞こえねえな」


ぐ、と、最奥、その窄みに指が触れる。見られてる。と思うとまるで生きた心地がしない。
腕をなんとか動かすが、手錠がガチャガチャと音を立てるばかりで。腰を引こうとした瞬間だった。

ぬるりとした液体がケツの穴に掛けられる。その気持ち悪い感触に堪らず息が漏れる。岩片の指が、その液体を絡み取り、肛門に直接塗り込むのだ。


「っ、ん、ぅ……ふ……」


たっぷりと濡らした指は俺の意思とは関係なしに、ずぷりと頭を埋めてくる。力を入れようが関係ない、ぬめる体内を滑るようにスムーズに中に入ってくるのが分かった。
一本、また一本と、骨ばった指が入ってくるその感触に、肩が震える。息が、浅くなる。


「っ、ぅ、う゛ッ、ふ、ッ、んぅ……ッ!」


耳を塞ぎたくなるほどの、粘着質な水音。
最初は浅い位置を刺激される。浅い位置を執拗に刺激され、腰が、震えた。岩片の指を押し出そうと力んだところで、やつ。内壁、性器の裏側に位置する辺りを指の腹で触れられた瞬間、電流が走ったみたいに全身が、跳ね上がる。


「へえ、……ハジメのいいところはここか」


岩片の声は、笑っていた。
なんだ、今のは。
どろりとした得体の知れない熱が体の奥底から溢れ出す。
それだけではない、全身の毛穴という毛穴から汗がどっと吹き出した。なにをしたんだ。そう、背後を振り返ろうとしたとき。岩片の指が、動く。


「っ、ぅ、ん、んんぅ……っ、」


二本の指にバラバラに刺激されれば、次第に息が浅くなる。
感じたことのない感覚に、瞼の裏がチカチカと点滅する。腰が、震える。逃げたいのに逃れられない感覚に、余計、追い詰められるのだ。
最初はやわやわと指の腹で刺激されるけだった。
それだけなのに、体が自分のものではないみたいに体が反応し、思考回路が乱れる。
嫌だ、気持ちが悪い、嫌だ。そう思うのに、四肢にろくに力が入らない。枕に顔を押し付け、声を殺すことが精一杯だった俺を見て、岩片は笑いながら、ケツを軽く撫でる。


「……逃げてるつもりかよ、それで」


そして、そのまま俺の腰を掴まえた岩片。まずい、と直感した瞬間だった。


「っんん゛ぅッ!」


一瞬、何が起こったのかわからなかった。たださっきよりも強い力で刺激されただけにも関わらず、全身の血は沸騰するかの如く熱く、そして勢いよく巡りだす。
岩片は跳ねる俺を押さえつけ、更に指を激しく動かした。


「っ、ん゛ッ!、ぅ、う゛うッ!」


おかしい、おかしい、これくらい、なんてことないはずなのに。いつの間にかにガチガチに勃起した性器からは透明の液体が大量に溢れ、痙攣する度にそれが臍に当たる。
なんだ、なんだ、これは。汗が流れる。見開いた目を閉じることもできなかった。全身の神経が岩片の触れるそこに集まるみたいに、何も考えられなかった。唾液が垂れる。声を押し殺すこともできず、ただ、呑まれる。点滅する頭の中。俺は、性器にも触れられないまま呆気なく射精する。
射精感はない。
得体の知れないものが、まだ体の中でぐるぐると残っていた。

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