馬鹿ばっか


 32

とにかく、落ち着こう。
落ち着いて、情報を整理しよう。
そう、混乱する自分に言い聞かせてみるが、やはり無理がある。
岩片ならまだしも、五十嵐にまで先程のやり取りを聞かれていたと思うと素面でいられなくて。
顔が熱くなり、なんだかもう死にたくなった。
そんな俺を知ってか知らずか、それとも知った上で面白がっているのか岩片は笑いながらわざとらしく手を叩く。


「なーんだ、やっぱりバレてたわけか。いやー、流石情報屋。そこまで馬鹿じゃなかったな」

「なななな、なんで、そんな」

「んん?そんな怯えんなよ、別に取って食いやしねえよ」


流石の五条も動揺しているらしく、楽しそうに笑い声を上げる岩片に真っ青になる。
そして、一頻り笑った岩片はふと表情から笑みを消した。


「ま、せっかくのいいところ邪魔されたら誰だって気分悪いしなぁ。とにかく手短に済ませてやる」


「その後はそいつ、好きにしていいから」と、続ける岩片。
一瞬、やつの言葉の意味がわからなかった。
いや、わかりたくなかった。

口を開いたままアホ面下げる俺を無視し、岩片は五条を見る。


「単刀直入に言おう。五条祭、お前、俺専属の情報屋になれ」


ど直球なその言葉は混乱した脳が理解把握するよりも先にするりと耳を通り抜けていった。
一瞬、時間が止まる。
しかし、それも束の間。


「え、ちょ、まさかのプロポーズ。三角関係?!当て馬?!俺、尾張と王道君に狙われちゃってる?!どうしよう祭困っちゃうがっ」


そう、どうやら俺よりも状況把握のできているらしい五条が言い終る前に、面倒臭そうに舌打ちをした五十嵐は五条の後頭部を鷲掴む。


「話が逸れる。肯定否定の言葉以外吐けば容赦はしない」

「……しゅみましぇん」

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