手伝ってあげる
「んあ"ぁぁぁぁ!」
「…英二?」
とっくに部活が始まっている男子テニス部の部室。
ちょうど休憩をしに不二が扉を開けて部室に入って来たその瞬間、中にいた菊丸が悲鳴のような叫び声を上げた。
「もうわっけ分かんない!やーめたやめた!」
どうやら勉強をしていたらしい。
菊丸の目の前には、教科書やらプリントが広がっていた。
その勉強道具を菊丸は勢いよく片付け始めた。
そんな菊丸の様子を見て、不二は一言。
「それ、今日出されてた課題だよね?」
「………」
菊丸が固まる。
「確か〜授業中寝てた罰、だっけ?」
「……うっ…」
小さく笑いながら、不二は菊丸の向かい側に座った。
そして、さっき菊丸が片付けようと閉じた教科書を開く。
「手塚が言ってたよ」
「………何を?」
「菊丸は今勉強中だから、部室には近付くなって」
「でも今やめたもんねーだ」
ちょっとふてくされたような顔でそう言う菊丸。
「いいの?手塚怒るんじゃない?」
「い、いいもん!」
「それに、やめたら英二のためにならないよ」
「いーの!」
どこまでも意地っ張りな菊丸に、不二は苦笑い。
「じゃあ、手塚に言っちゃうね?」
カタンと席を立つ不二は、菊丸に向かってそう言った。
が、そんな不二に対して菊丸は少し慌てる。
「よ、よー……夜逃げ!」
「現行犯逮捕」
「ほー…本間っ!」←クラスの本間君
「マット」
「とー、トンボっ!」
「僕の話し聞いてた?」
「…た、多分…」
「あ、ん付いた。英二の負け」
何故かいきなり始まったしりとり。
手塚のもとへ行こうとした不二を止めようとしたのか、菊丸はいきなりしりとりを始めあっさり負けた。
「英二…諦めて課題やろ?」
「……うぅ〜…」
「手塚に怒られるの、嫌でしょ?」
「嫌だ!ぜーったい嫌!」
「ならやろ?」
不二の言葉に悩む菊丸。
「でも…分かんないし…」
「なら僕が手伝ってあげる」
「………へ?」
そう言う不二の顔はニコニコ。
「本当に手伝ってくれんの?」
「うん、いいよ」
「本当の本当?」
「本当の本当」
さ、やろっか。なんて言いながら、不二は菊丸のプリントをやり始めた。
不二の行動が嬉しかったのか、菊丸はとびっきりの笑顔になった。
「不二!」
「ん?」
「ありがとうっ!」
「うん!」
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