短編。 | ナノ


◎ 5/6


随分長く感じた昼休みはまだ終わっていなくて校内はざわざわと騒がしい。教室に戻り弁当かと思うと気が滅入ったが、教室に戻る事はなかった。屋上に繋がる階段の踊り場には2つの鞄が置かれていて、1つは自分の。もう1つは蓮のだ。
それらを右手に持って、左手で僕の腕を掴んで、蓮はそのまま校門を出てしまった。

電車の中でも特に会話がなく、ずっと沈黙のまま、通い慣れた蓮の部屋へと連れてこられた。

「日奈汰、怒ってる?」
「怒ってない。けど、どういう事?」

怒りは確かに感じてないが、戸惑い、不安、少しの恐怖が僕の心臓をきゅっと締めあげる。

「日奈汰が好きなの。ずっと昔から。独り占めしたい。キスしたい。セックスしたい。…させてくれる?」
「は、なにいって…っ」

言いながらこちらに歩み寄ってくる蓮に、頭の中は警報が鳴っていて、それでも後退る事しかできない僕の足にベッドの端がぶつかって、そのまま尻餅をつく形でベッドのスプリングを軋ませた。

「ひなた」
「んっ」

そのまま蓮に押し倒されて唇を塞がれる。苦しいし何が起こっているのか頭がついていかない。
今僕の目の前にいるのは誰?

「ん、ひなたっすき」
「は、んぅ、っ」

息継ぎに口を開いた瞬間に入り込んできたのは熱をもった舌だった。逃げる僕の舌をしつこく追いかけてきて絡めとるそれは、経験のない僕には刺激が強い。

「ちょっとだけ勃ってる」

くすくす笑いながら蓮の手は下におりて、ズボンの上からやわやわと揉む。
キスも初めてだった僕はもちろん他人に触られるなんて経験もなくて、つい快感に身を委ねてしまう。

「きもちいでしょ?もっときもちくしてあげるね?」

言いながらベルトのバックルを外す蓮に、僕は既に抵抗らしい抵抗はできなかった。
下着はぐちょっと濡れていて、くちゅりと音をたてながら生で触られた時には何も考えられなかった。

「ひなた感じやすいんだね。キスしてちょっと揉んだだけなのに、もうイきそう」
「んっ、…ぁっ」

可愛い、と呟く蓮は額に唇を当て、僕はびくびくと身体を震わせて早漏よろしくイってしまった。

「早いね、今度は舐めてあげる」
「あ、やだって、ひっ…」

呆気なくイってしまった僕だったが、白濁に濡れているのも構わずパクリと銜えられてしまえば、もう快感に流されるばかりだ。

「んあ、ひっ…あ…」
「僕だけのものになってくれる?」
「なるっ…ん、な、っからいかせて、ふぅっ」

じゅぶじゅぶと音をたて口を窄めながら吸われるのは堪らなく気持ちいいのに、根元をぎゅうっと握られているためイく事ができない。苦しくてイきたくて。僕は無意識に蓮に縋っていた。

「ひなた大好きっ」
「あ、あ、……っああ」

蓮の手淫と口淫。
この短時間で2回もイってしまった僕はぐったりと力が抜けた状態だった。
ベッドに横になった僕は蓮に後ろからすっぽり抱き込まれていて、身動きができない。

「今回はここまでにしとくけど次はもうちょっと先までいこうね?俺は射精を覚える前から日奈汰が好きだったんだからね?」

数十分前みたいな得体の知れない恐怖感は消えていたけど、今度は自身の身の危険を感じる蓮の発言に僕は一人震えた。

「日奈汰は俺が好きだよね?」
「ん、」

まどろむ世界の中で、蓮の質問に小さく頷いて、僕は意識を手放した。



 
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