短編。 | ナノ
◎ 5/5
「俺さ、優輝の束縛が異常な時、別れるなんて言ったら優輝に殺されると思ってた。だって優輝は俺が大好きだったろ?」
言いながら優輝の頬へ手を添えると、ビクリと優輝の肩が揺れたのが分かった。
「とりあえず、好きな奴って誰か教えて?半年記念忘れるくらい楽しい飲み会だったんだろ?」
「あ…」
優輝が告白してきて付き合って、昨日で6ヶ月。
祝う事はできなかったから、1周年記念は一緒に祝おう。
そうやって前向きに考えているのに、今思い出したというような優輝の顔は青ざめていて、まるで俺がいじめてるみたいだ。
「電話口の優輝はすごい楽しそうだったよ?ちょっと前までの優輝なら、一緒に帰るの断った理由がサプライズの準備かもとか、夜中になった携帯は記念日を勘違いした電話かもとか思えたけど、昨日はメールで断られた時点でそんな淡い期待も持てなかったよ」
「……、ごめん…」
さっきから優輝は謝ってばかりで、俺は苦笑いがもれた。
また黙りこんでしまった優輝を一瞥して、俺は鞄から綺麗にラッピングされた赤い包みを取り出す。
リボンの付いた赤い包装紙をビリビリ破り捨て、黒い箱を開ける。
中には教室の蛍光灯の光に反射してキラリと光るシルバーのブレスレット。
俺はそれを見て思わず笑みがこぼれた。
「これ覚えてる?優輝が前にかっこいいって言ってたやつ」
「あ、うん…」
ブレスレットから優輝へ視線を移せば目が合った。俺はにこりと笑って、それを箱から取り上げる。
静かな教室にカタンと音を響かせて箱が床に落ちた。
それを気にもしないで俺は優輝の左手をとってカチリと手首に嵌める。
「サービスでメッセージ掘ってもらえたんだ」
優輝にはあまり似合わないごつい太めのシルバー。
一緒に街に出た時に優輝が手にとってかっこいいと呟いていたが、迷いに迷って結局買わなかったそれ。
華奢な優輝には隣に並んだ細いピンクゴールドの方が似合うと思ったけど、似たような物は既に優輝は持っていたし、やっぱりプレゼントだから優輝が気になっている物を、と思ってそれを買った。
「で?好きなやつって誰?」
俺は優輝の手首にあるブレスレットを撫でながら笑いかける。
内側には付き合った記念日と2つの英文。
I won't let you go.
We will be together for good.
絶対に離さない。
ずっと一緒だよ。
fin.
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[文/10^-24]