きみと僕が〜 | ナノ
◎ 緩やかにいま堕ちてゆく
放課後。
昼休みに受信した先輩からのメールを確認して、僕は先輩の教室へ向かった。
注目を集める先輩だから、なるべくクラスの人が帰ったであろう時間まで自分の教室で時間を潰してから。
「先輩、」
先輩の席は廊下側で、声はかけやすい位置だ。
待った甲斐あって、教室には携帯をカチカチ鳴らす先輩だけだった。
「誰もいないんだから入ってくればいいのに」
そうは言っても、自分以外の教室というのはどうも入りずらい。
学年が違うとなればなおさら。
曖昧に笑う僕を見て、先輩はまあいいや、とだけ言って教室から出てきてくれた。
部活も既に始まっている時間で、廊下にも玄関にも生徒がいる事はなかった。
「今日はね、颯太に見せたいものがあるんだ」
「え?」
そう言って先輩は楽しそうに笑う。
「僕ん家に着いてからのお楽しみね?」
「はい」
その言葉を最後に、るんるんしている先輩とマンションまで歩いた。
「…え?」
「ベッド!買っちゃった!」
え?
先輩の部屋に入って案内されたのは、いくつもある部屋の1つで、そこには大きなベッドが1つ。
いきなりの事で僕は意味がよく分からずに呆気にとられてしまった。
「どう?」
どうと言われても。
言いながら先輩はふかふかなベッドに腰をかける。
焦げ茶のシックな感じのそのベッドはいかにもな高級品で、枕やシーツのオプションも高そうだ、というのが正直な感想だが。
しかし僕は先輩のベッドを見た事があるのだ。
リビングに隣接してある寝室の中、黒の大きなベッドを。
「これは颯太用なの」
何も言わない僕に痺れを切らしたのか、先輩はにこにこしながら言った。
僕用…
僕とのセックス用?
「おいで?」
「あ、僕、先にシャワーを…」
妖艶に微笑む先輩に促され、足を一歩進めるが、自分が学校帰りだったのを思い出し立ち止まる。
「そんなのいいよ、早く」
そんなの、なんて言われてしまえば僕は行くしかない。
先輩を押し切ってシャワーを勝手に借りる図々しさなんて持っていないのだから。
ゆっくりと進んで、ベッドに腰かける先輩の前で足を止める。
座っている先輩は僕より目線が下で、自然と見下ろす形になってしまった。
「して?」
僕は、首を傾げながら言う先輩の足元に跪いてベルトのバックルを外しチャックを下ろす。
下着の中から取り出したそれに舌を這わせながら口に含んでいけば、頭上から熱っぽい息を吐く音が聞こえた。
「ん、じょーず」
髪の隙間に指を差し入れられて、頭を軽く撫でられるのが心地いい。
じゅぷじゅぷと口を窄めて頭を揺らせば、先輩が小さく喘いだのが分かった。
感じてくれているのが酷く嬉しくて、興奮して、もっと感じてほしくて舌も一緒に動かす。
「ん、でる…っ」
当然口の中でイクものだと思っていた僕は尿道口を吸ったのだが、口の中に苦味が広がる前に僕の頭は髪を掴んでいた先輩によって後ろに引かれてしまった。
え、と思ったと同時に僕の口から出た先輩の尿道口から白い液体が出てくるのがぼやけて見え、あっ、と思うと同時に顔に温い精液がかかっていた。
「あは、かわいー…」
目には入らなかったが、口に少し入ったそれは、やっぱり苦かった。
「颯太も気持ちよくなろーねー」
僕が顔射にびっくりしてぼーっとしている間に先輩は腕を引いてベッドに上げてくれた。
沈みすぎないけど固くもないベッドは寝心地がいいな、と思いながら、夕陽に照らされる先輩の笑顔をぼんやり見つめた。
「颯太用のベッド、嬉しい?」
「え、っと…」
嬉しいというか…
未だに状況を把握しきれていない僕は口籠もるしかない。
「今まではずっとソファーだったもんね。腰痛かったよね?」
というか、今日の先輩はなんだか変だ。
纏う雰囲気が異様に甘い。
ソファーなんて今まで先輩に気にされた事ないし、僕も気にしていないのに。
「先輩どうかしたんですか…?」
「ん?なにが?」
「だって、急にベッドだなんて…」
思っていた事を素直に言えば、不思議そうにしていた先輩も僕の質問の意味を理解してくれたらしい。
「だってゴムしないんだしソファーじゃ都合悪いでしょ?あ、でも颯太もソファーじゃ辛いと思ってベッドにしたのは本当だよ?」
「あ、りがとうございます」
僕のためになんて、それだけで嬉しい。
嬉しいけど、ベッドが2つある時点で少し虚しい事に先輩は気づいていない。
「すごく、嬉しいですっ」
それでもやっぱり嬉しい僕は笑いながら先輩に言った。
「生が?それとも颯太のために用意したのが?」
「どっちも…っ」
「はは、淫乱」
制服を剥かれながら首筋にちゅうっと吸い付かれる。
「せんぱいっ、僕もつけたい…っ」
「ん?」
鬱血した場所を舐める先輩に僕は涙目になりながら言う。
そんな事頼むのは初めてだし、所有物の証みたいで先輩がキスマークを好んでない事は知っていたけど、僕は思わず「つけたい」と言ってしまった。
「僕も、つけたいですっ」
「ああ、…いいよ?どこにする?」
「えっ…」
拒否されたら傷は深いと覚悟しても、その発言を撤回する事はでかなかった。
しかしびくびくしながら待った先輩からの返事はあっさりしたもので、予想外すぎて言葉が出ない。
「首?胸?それとも腰?」
「あ、くび…」
呆けている僕など気にしていない先輩は場所の話をしていて、僕はそれに咄嗟に答えていた。
「ん、つけて?」
ずいっと首を僕の口元にもってきて、笑う先輩に僕は戸惑いながらも吸いついた。
「…あ、」
白い首筋にぽつりと赤い点が1つ。
キスマークなんて初めてつけたけど、意外と簡単につくものなのだと思った。
なんとなく感動していれば先輩は棚にあった手鏡で自分の首筋を確認する。
「薄いなー。もっときつく吸わないと。すぐ消えちゃうよ?」
「あ、え、」
十分満足していた僕は、先輩の言葉にかぁっと顔に熱が集まるのが分かった。
あれでもきつく吸ったつもりだったのに。
「まあいーや、それよりやろ?」
僕の返事を待つつもりはないらしく、前戯もそこそこに先輩はボトルを取り出した。
「ん、」
温いローションの感覚にひくりと震えるが、慣れてしまったそこは少し触られるだけですぐに指を飲み込んでしまう。
そのままくちくちと指を増やしながら抜き差しされ、僕はもどかしい快感に前を濡らしていた。
「シーツぐちゃぐちゃ」
「ごめ、なさい…」
「別にいーよ、颯太用だし」
前からも後ろからも液体が垂れ流されていて、シーツの事を指摘され一応謝るが、頭の中はイク事でいっぱいだった。
「も、挿れて…っあ」
「颯太はやらしいなぁ…ん、っ」
先端を擦り付けられて、それさえももどかしくて、知らず腰を揺らしていたらまた笑われてしまった。
恥ずかしい、と思った瞬間にずぶりと一気に挿入される。
「あ、…ん、ん、」
そのまま腰を打ちつけられ身体が揺さ振られる。
「あっ、きもちい…っひ」
あんあん喘ぐ僕に先輩は笑って、垂れ流しの前を擦る。
同時に後ろのシコリも突かれてしまえば、我慢できなくてそのままイった僕に少し遅れて、先輩も僕の中でイった。
「嬉しい?」
「ん、うれし」
ぐったり脱力する僕に先輩はやっぱり笑ってそう言った。
気持ち良かったと思うと同時に今日の先輩は終始笑顔だなと思った。
((嬉しいと思える僕は歪んでる))
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