1(香月視点)


三枝聡一郎君。高校三年生。身長推定170cm。写真部。

そんな彼と出会ったのは春休み、三月の頭だった。
初めて見たときから俺はかわいい彼の虜だった。





俺はゲイだ。周囲には言ってないけど、ごく親しい身内はそのことを知っている。
ゲイなんてセクシャルマイノリティが世間で受け入れられないのは知ってるし、あえて公表しようとも思わない。
おまけに俺は色々と好みがうるさくてめったに恋人を作ったりしなかった。
……もちろん、体だけの関係として適当に引っ掛けたりはしたけど。

まず俺は、年下が好きだ。そして素直な子が好きだ。
中でも学ランが似合う黒髪の細身の男子高校生が好み。でも別に血眼になって恋人を探してたわけじゃない。

そんな時、同じゼミの成田のバイト先で偶然出会った聡一郎君は、本当に俺の好みど真ん中だった。

顔はあっさりめの地味な印象。薄いけど柔らかそうな唇。にきびのないつるりとした綺麗な肌。黒髪は今時っぽいスタイルのミディアムショート。ほどよく健康的に焼けた肌色と細い腰がそそられる。

初めて会ったとき、聡一郎君は穴が開くんじゃねーの?ってくらい俺の顔を見てきた。
自分の顔の良さは自覚してるけれど、俺の外見目当てのヤツとは反応が全然違った。
そういうの目当ての男も女も、大体俺を見ると媚びたように笑う。そして俺のアドレスを聞こうとしたりスキンシップを図ろうとしたりと忙しい。
でも聡一郎君はほんっとにガン見。
なんとか目に焼き付けようとしてるっていう感じがひしひしと伝わってくる。

あれ、俺のこと好きなの?と思って期待してみれば、全然脈のなさそうな会話しかしない。でも俺のことは真っ先に見つける。

彼のバイト先に通ってそれとなくアピールしてみてもそれ以上には発展しなくて、要するに聡一郎君はガチで俺の容姿にしか興味がないらしかった。

優しくしても「香月さんっていい人ですねー」としか返ってこないし、最大限の笑顔で接してみても「かっこいいですねー」で終わる。

そうして慎重に観察してみると、彼はとんでもない面食いらしいということがわかった。

あの店に来る美形たちを食い入るように見つめてうっとりと溜息を吐き、積極的に話しかけては彼らに可愛がられている。
そりゃあそうだろう、あんなに可愛い子に直球の親愛で懐かれたら誰だって目尻が下がる。

外面目当てとはいっても別に恋人になりたいとか特別親しくなりたいとかそういうわけではなくて、美形をまんべんなく愛でている感じがした。
特に成田にはシフトが被っているぶん他よりも懐いてるらしくて、俺は少し焦った。

あの調子じゃ絶対に誰かに食われる。
そうなる前に、どうしても俺は聡一郎君の「観賞用じゃない特別」になりたかった。

そうして多少強引とも言える手口で手に入れた彼はめでたく俺の可愛い彼氏になった。


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