10


「透……待って、本当に、僕は……あっ!」

透の指が中に入ってくる。すでに準備をしていたこともあって、僕のそこは容易に指を受け入れてしまった。
ぬるぬると滑るローションに濡れた指は次第に増えて、僕を犯す。そうなると爪や骨の硬さのある指ではなく、透のペニスがほしくてたまらなくなった。
けれど彼が何を考えているのかが分からず、素直にそれを口に出せない。下唇を噛みしめてその欲求に耐えた。

透はおそらく怒っている。苛々としているのがただ伝わってくる。
飲み会で何かあったのだろうか。それとも僕が彼を怒らせたのだろうか。
自分の行動を思い返そうとするが、乱雑な愛撫に阻まれてそれもうまくいかなかった。

「あっ……」

いつもならば紳士的に挿入の合図をする透だが、今日はそれすらなかった。
唐突に押し当てられ、性急に入り込んでくるペニス。待ち望んでいたはずのそれは凶器にも似た衝撃だった。
少しの痛みと喉が詰まるような圧迫感。後ろから突き上げられているうちにわずかな違和感に気付いた。

「と、ぉる……んっ、あ……スキンは……」
「紘人……」

スキンを取り出した形跡がなかったので聞いてみるが、透は答えなかった。
返答のないのが答えだ。それを付けてないのだと分かると、すっと胸が冷えた。
日頃お互いにセーファーセックスを心がけていたはずが、今日の透はやはりおかしい。
また肩に歯を立てられ、かと思えば強く腰を打ち付けられる。乱暴なセックスだというのに、そうされて僕の身体は何故か悦んでいた。

「あっ、あっ、だめ、透っ、透……っ」
「……は、ぁ、すげー締まる……こうやってムリヤリされんの、好きなの?」
「ちが、透、抜いて、くれ……んぁっ!」

息も切れ切れに懇願すると、僕の中から熱が抜けていった。
ほっとしたのも束の間、くるりと仰向けられて、今度は正面から挿入された。

「やっ……あぁっ」

一気に奥までペニスが押し入る。肌に透の茂みが触れるほどぴったりと接合する。
上から圧し掛かられ苦しいのに、透を身体の奥深くに感じていると思うと震えがくるほど嬉しくなった。
何も言わず、ただ透が僕を求めている。言葉より饒舌に体が僕を欲している。それに気付いてしまえば不思議と満たされるものがあった。
好いた相手に求められる充足感。そして僕も彼を求めている。

「あっあっ、んっ、んぅっ」
「好き、んっ、好きだよ、紘人、好き。ねぇ、紘人、好き――」

熱に浮かされたように何度も好きだとつぶやく透。何故か泣く寸前のように声が揺れている。もしかしたら無意識に言っているのかもしれない。その間もペニスは力強く僕を突く。

普段しているような、じゃれあいながらする優しいセックスは好きだ。しかしこうして雄の衝動に駆られ性欲の赴くままにするセックスも、たまらなくいい。
透のペニスが中の感じるところを掠めるたびに僕ははしたなく喘ぎ声を上げた。
腹の奥で熱く痺れるような快感。ちゅ、ちゅ、と大きな音を立てながら吸うキス。余裕なく呼吸を乱す透の色っぽい表情。どれもが僕を快楽の泉に溺れさせた。
肉体的な快感ももちろんだが、精神的な陶酔感が強い。

「んっあぁ、あっ」
「う……ッ」
「ふ、あ、透っ……んんっ!」
「紘人、気持ちぃよ、もうイキそ……」

透の動きが小刻みになる。挿入が浅くなると急に寂しさを覚えた。
愛しい彼の全部、なにもかも一滴残らず飲み込んでしまいたい。中に欲しい――。
そうして離れようとする透を引き寄せ自ら足を絡めて固定し、恥ずかしいくらいに全身で欲した。

「わ、ちょっ出ちゃうから!」
「いいから、そのまま……」

中で出して、と淫らにねだる。すると望み通りに熱い迸りが僕の中に満たされた。

「は、あ……っ」
「んっ……」

あとのことを考えれば拒まなくてはいけない行為だ。でも、透にならこういうことをされても一向に構わない。それくらい僕は彼のことが好きだ。
むしろそれだけではもの足りなくて、透を引き寄せて口付ける。
溢れる愛おしさで胸が詰まった。


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