15


下着を脱がされると、もう抗う気力が失せた。はなからそんなに拒む気もなかったが。
続きを促すつもりでラーシュを引き寄せる。しかし脱力した彼は優しくのしかかってきた。耳元で溜め息が聞こえる。

「……昨夜さ、俺のところに来てくれたでしょ?眠れなくてーって」
「あ、ああ」
「俺ね、それがすごい嬉しかったの」

さっきより柔らかくなった口調で囁かれてドキッとした。

「パーティ入ったあと、アルド涼しい顔して普通に仲間って感じで俺に接してたじゃない?そっけないくらいにさ。だから俺のことは、ただ戦力がほしくてパーティに誘っただけなのかな〜って思いはじめてて」
「いや、それは――」
「正直寂しかったんだよね。壁みたいなのがあって。……幼なじみたちと比べたら当然なんだけどさ」

俺にはそんなつもりなかった――と思う反面、ラーシュに金を借りてる負い目があるから『俺たちとラーシュ』という線引きをして考えていたのも事実だった。
まさに昼間そのことに気づいたばかりだ。
俺からパーティに誘っておいて孤独にさせてどうすんだ。

「だからきみのほうから会いに来てくれて嬉しかったのに……なんかはぐらかそうとするし、俺といるのにティアリッサのことばっかり気にするし、もっと一緒にいたかったのに帰るとか言うし」

文句とともに耳を齧られ、むず痒さに顔をそらしたら顎を掴まれた。
上向かされた先にラーシュの顔がある。まだ怒ってるのかと思いきや、どことなく不安そうな表情が浮かんでいたことに驚いた。
透明感のある青目が揺れる。

「ねえ、俺の気持ちを考えて」
「ラーシュ……?」
「俺を見て――俺のことだけ考えててよ、アルド」

低く囁かれて息を呑んだ。
「俺の気持ちを理解して」と、似たセリフを昨夜も言われた。そこに今なぜか、夢の中で見た少年の面影が重なる。
明るくて向こう見ずで、仲間たちを心から信頼していて、ある日突然一人ぼっちになってしまった少年。
歳をとって世渡りは上手くなったかもしれないが、寂しがりの少年がまだラーシュの中に残っている――そんな感じがした。

胸のあたりがぎゅっと苦しくなる。
思った以上にラーシュが俺のことを求めてくれてるからだ。嬉しくて、でも彼の過去の傷を思うと苦しい。

「……考えてるよ。お前のことばっか考えてる」
「ほんとに?」
「ああ」

それこそ出会ったときから、ずっと。
たまらなくなった俺は、彼のうなじを掴んで口づけた。何度か啄んで下唇を舐めると、開いた唇に舌が差し込まれた。
熱く濡れた舌を吸いながら唾液を絡める。
キスをしながらラーシュの上着に手をかけた。留め具を外し、手探りで脱がす。そうして裸の背に腕を回して抱きしめた。

しっとり汗ばんだ背中を掌で撫でる。
骨格も肉付きも筋張った、男特有の手触りなのに愛おしい。
ラーシュも興奮してるらしく、密着した下半身に膨らみが押し当てられた。相変わらずでかい。

「ラーシュ……」

快楽に侵されて痺れる体で身じろぐ。するとさっきとは打って変わって、ラーシュはいつもの笑みを浮かべて上半身を起こした。
ズボンを脱ごうとした彼の手を押しとどめる。肘をついて起き上がり、代わりに俺が脱がせてやった。
肩を押せばラーシュは簡単にベッドに沈んだ。そうして今度は俺が彼の上に跨る。
ラーシュの背後に水中花が見える。褐色の肌と白い花との対比がめちゃくちゃ綺麗で、妙にエロい。
発光植物に淡く照らされた顔に思わず見惚れた。

「お前ってなんか……すげぇいい男だよな」
「え、なに突然?アルドがそんなこと言うの初めてじゃない?」

まんざらでもないようにラーシュの顔が緩む。俺もつられて笑った。
彼に折り重なって唇を合わせる。そうしながら腰を落とし、自分のモノを彼の股間に擦りつけた。

「ふふ、我慢できないの?」
「うん……はっ、んんっ」

さっき放った精液と新たな先走りでぬるつくそこを、ラーシュの勃起と擦り合わせて腰を前後に揺らした。
裏筋が刺激されるたびに気持ち良くなって、もっと悦くなりたくて繰り返し動いた。
舌と舌を絡めつつ腰を動かせば、合わせた唇の隙間からラーシュの喘ぎも漏れた。

彼の声を聞きたくて、張りのある胸板を撫でる。ツンと立っている乳首を指で揉むと、彼の艶声は大きくなった。
力強く反り返る雄も、重そうに揺れる睾丸も肉感的だ。男同士だからこそ、こうして一緒に高め合えるのが嬉しい。

「あ、やべ、また、俺っ……あっ、あっ」
「またイっちゃいそう?ん?」
「ん、イキそ、うっ、ぅ、んんーっ……!」

ラーシュに下から煽られて陰部全体がじんと重く痺れる。そのとき、再び先っぽから熱いものが迸った。
喘ぎながらラーシュの腹の上に吐き出す。浅黒く引き締まった腹と入れ墨に飛び散った精液を、彼が指先ですくった。

「あは、いっぱい出たね」
「言うなって……んっ」

楽しそうに笑ったラーシュが精液まみれの指で、吐き出したばかりの鈴口に触れてくる。
信じられないことに、そうされると竿がピクッと震えてまた硬くなってきた。

「あっ、う、嘘だろ……っ」
「ふぅん、もっとしたいんだ?えっち」

揶揄われつつ指先でぐりぐりと強めに押される。硬さを取り戻した俺のそこは真っ赤に充血していた。
射精直後の敏感になったそこへの悪戯で、全身の力が抜ける。息も切れ切れにラーシュにもたれかかったら、ベッドに優しく寝かされた。

ラーシュがサイドテーブルに手を伸ばす。
彫刻が施された石造りのそこには、マダムが置いていった木杯のほかに水差しと、いくつかの小瓶が置かれていた。
彼はその中の一つを手に取った。

「全然足りないみたいだから、中のほうから気持ち良くしてあげるね」
「は……?あ、ちょ……っ」

うつ伏せにされたと思ったら、ラーシュが足の間に入ってきた。


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