14


ねじれ樹のことを思い出しながらあれこれ考え込んでいたら、ラーシュの頭が俺の肩に乗った。

「魔物に何されたの、アルド」
「何っつーか……その、種付けとやらはされてねーから。枝で全身ぐるぐる巻きにされて樹液飲まされただけだし」
「ほんと?」
「嘘ついてどうすんだよ」

拗ねたような言い方がおかしくて背中をポンポン叩いて宥めてやれば、ラーシュは顔を上げて耳元で低く囁いてきた。

「じゃあお尻見せて」
「は、はあ!?」
「種付けされてないか確かめさせてよ」

とんでもないことを言い出したもんだから慌てて彼を引きはがした。
マジで何言ってんだこいつ!

「いやいやいや!ないって絶対!服とか着てただろ?俺」
「俺は現場見たわけじゃないもん。いいから服脱いで。できないなら俺が脱がすよ」

冗談っぽい言葉のわりに目が真剣だ。
勘弁してくれ。心配してくれるのは嬉しいけど方向性がおかしい。
何とも思ってないやつだったら一蹴するところだが、ラーシュ相手だと抵抗が鈍る。
だって、寝たことがあるやつと密室に二人っきりなうえベッドにいて、脱げとか言われて、これで何も意識するなってほうがおかしい。
こんなことがなかったら今夜はラーシュと過ごすつもりでいたんだから、尚更。

ラーシュのことは、好きだ。「この子は俺の」とか言われて内心舞い上がるくらいには。
でも冷たい態度の彼を見てるとそんな気分になりきれない。
なのに、さっきから体温が上がりっぱなしで顔も熱い。

振り切ることもできずにぐずぐずしてる間に、彼はベッドの上に完全に乗って俺に迫っていた。
ああクソ、こうなったらいっそ潔くパッと脱いでガバッと見せて終わりにしてやろう!

「……み、見るだけ、なら」

……なんだこの恥ずかしい感じの言い方。処女か。
ラーシュが「うん」と軽く応えたのも羞恥に拍車をかけた。なんで俺だけこんなに意識してんだ。
太枝も突破できなかったベルトを外す。もたついてたらラーシュにズボンを強引に下ろされた。
下着姿になると、彼の視線がそこに注がれた。

「おっきくなってる」
「言うなよ……」

樹液の催淫効果ってやつのせいなのか、気が付けばずっと勃ちっぱなしだ。いつからこうなのかは知らないが。
はちきれそうにパンパンになってるそこをガン見されたら下着がめちゃくちゃ脱ぎにくい。
躊躇していると、太股にラーシュの手が這った。

「すごい擦り傷。みみず腫れになってるけど、これ痛くないの?」
「え?別に。ちょっとむずむずするかなってくらい」

枝が巻きついていたところが、言われた通り真っ赤な太い擦り傷になっていた。若干血も滲んでる。腕のほうも同じようになっているかもしれない。
手甲やブーツのところは傷になってないみたいだが、改めて見ると相当な力で締められていたんだと分かる。服も少し裂けてるところがあった。

「中和薬が効いたら痛みが出てくるかもね」
「そうか、今はまだ樹液の影響があるから……」

痛みを感じないんだっけ?まあこれくらいなら怪我のうちにも入らないし問題ない。
そうして油断した一瞬の隙に、ラーシュの手によって上着を剥ぎ取られた。防具はすでに外されてたから簡単に脱がされてしまった。

「お、おいっ。何すんだよ!」
「うーわ、上のほうもすごいね」
「下と同じだろ。いいから服返せよ」

上着を取り返そうとした手が空振る。ラーシュは俺の服をポイと放り投げてしまった。

「胸んとこ、なんでこんな風になってんの」
「こんなって……」

見てみると、ちょうど左右の乳首の上をぐるりと巻かれたみたいに赤く痣になっている。
そこを執拗に枝で擦られて、しかも若干感じてしまったことを思い出して目の周りが熱くなった。

「……たまたまだろ」
「へえ?」

目を細めたラーシュが、手を俺の胸に置いた。
熱を持った掌が汗ばんだ皮膚に触れたことでビクッと震える。

「ラ、ラーシュ……」

彼の手は胸から脇腹を撫で、煽情的な動きで肌の上を這った。
傷の具合を確かめるとかそういう意図じゃないのはすぐ分かった。そうされると俺のほうも、軽い痺れとともに快感が沸き上がってきてどうしようもなくなった。

「お前さっき、自分のこと紳士だとかなんとか言ってなかったか?」
「言ったっけ?」

わざとらしくとぼけるラーシュに呆れた。もう半ば受け入れてしまっている自分にも呆れる。
頬から耳にかけて親指で撫でられる。今度は逃げることなく自ら目を閉じた。
唇が重なり、続けて啄ばむ。しかし上唇を噛まれて眉をひそめた。痛みは感じないが甘く痺れる。
今までになく荒っぽいキスを繰り返すあたり、まだイラついてるらしい。

「なあ……機嫌直せよ」

唇を合わせたまま小声で言えば、無言で肩を押されベッドに倒された。水が大きな波紋を作って揺れる。
彼が覆いかぶさってきたと思ったら、首筋を強く噛まれた。全然痛くない、けど、かわりに感じて腰が跳ねた。

「あっ」

そのまま首や鎖骨を口づけられたり吸われる。唇は胸をたどり、突起を口の中に含んだ。
そこはもうとっくに硬くなっていて、ラーシュは歯を立ててきた。前歯がコリコリと乳首を齧り、時折吸う。
もう片方の乳首もギュッとつねられる。強くつねられたり引っ張られても、何をされても気持ち良くて甘ったるい声が出た。
何だこれ、今まで感じたことのない快感だ。

「あっ、んっぅ、あ、あっ」
「こんな風にされても感じちゃうの?」

険のある言い方をされたけど、乳首の刺激で頭がぼうっとした俺はバカ正直に頷いた。
俺を見下ろしたラーシュは、両方の乳首を指先で弾いたりつねったりした。
しつこく弄られるたび意思とは無関係に声が出る。息が上がるにつれて下半身が重く疼いた。
両乳首同時にグリッと親指で押し潰されたとき、全身に震えが走って腰が浮いた。

「あ、あっ……!」

股間が熱く濡れる感覚がして、解放感より先に戸惑いが来た。
ええ……まさか乳首いじられただけでイクとか……マジかよ。そんなことってあるか?
布の内側がべっとりと濡れる不快感に呆然としていると、下着がずらされた。
イったことを確認するみたいにして、俺の股間をラーシュが見下ろす。

「あれ、まだ勃ってる。イキ足りない?」
「え……」

言われて自分のそこを見てみれば、先端から粘ついた糸を引いてるのにも関わらず勃ち上がっていた。
むしろ一回イったことで、体の奥から火がついたように欲情している。体中がムズムズして治まらない。
これ、薬が効くまでずっとこんななのか……?


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