束の間の休息




休憩を挟み二時間ほど馬車に揺られたあと、一行はロッカニア地下遺跡に到着した。

地下に入る前に近くの草原で早い昼食を摂ることになった。
少し離れた場所には先達の狩猟者が作った小屋があり、傍らに井戸も設置されていて、水を汲んだり用を足すこともできるようだ。

木の下で各々用意してきた弁当を広げている。
エリオットはジンイェンが用意してくれた弁当を受け取った。
焼いて甘辛く味付けた鶏肉と青菜をはさんだパン、瓜とオリーブの酢漬け、ゆで卵、干しいちじくに干し杏子となかなか贅沢だ。

「わーお美味しそう!どこで買ってきたの?猫の見合い亭じゃないよね?」

ローザロッテが自分の弁当を手にしながら小走りに近づいてくる。

「俺の手作りですー」
「えっ!?ウソ!ジンってそんな特技あったの!?ちょっと味見させなさい!」
「だーめ。俺とエリオットの分しかないの」

ジンイェンがローザロッテから弁当を遠ざける。そのタイミングでエリオットの腹がぐぅ、と鳴った。
あまりのタイミングのよさにローザロッテが笑い転げたのでエリオットは恥ずかしさに頬を染めた。
もはやジンイェンの料理を前にすると途端に空腹になる体になってしまったようだ。

「あっはは!かーわい〜!なるほどジンはそうやって誑かしたわけね」
「人聞き悪いなぁ。別に誑かしてなんてないよ?」

続けてベリアーノとノーラがやってきて輪に混ざった。ジンイェンと盗賊仲間だというやや年嵩の小柄な男、マッジもやってきた。
人付き合いの苦手なエリオットだが、ジンイェンと一緒にいると自然と人に囲まれてしまうようだ。そしてそれが不思議と嫌ではない。

なんとなくメグが気になって探してみたが、少し離れた岩場に座って一人で弁当を広げていた。
こちらに呼ぼうかと思ったが、一瞬目が合ってすぐ逸らされてしまったので諦める。

ジンイェンの料理は相変わらず美味しくて、エリオットの口元が綻ぶ。自家製だという甘辛のソースと酢漬けが絶品だ。

「美味しい?」
「ああ」

ジンイェンに聞かれて素直に頷くと、彼が嬉しそうに表情を緩めた。本当に料理好きなのだと感心する。
パンと副菜をすっかり平らげるとジンイェンにデザートの干し果物を差し出され、弾力のあるそれらをつまむ。
どれも美味でエリオットは持ち込まれた弁当を残さず食べた。

腹がくちくなると、日差しがぽかぽかと暖かいおかげでまた眠ってしまいそうになる。
そんなエリオットの様子を察知してジンイェンが声をかけた。

「まだ時間あるし寝なよ、エリオット」
「ん……」

少しでも魔力は確保しておきたい――そう考えたエリオットは背後の木に凭れかかったが、馬車のときのようにジンイェンに引き寄せられた。
ポンポンと背中を軽く叩かれて、再び束の間の眠りに落ちる。





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