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今日は色々びっくりしすぎて情報の整理が追いつかない。喜之のことがたくさん知れて嬉しいんだけどさ。
情けないとか甘えとかしきりに言う喜之だけど、俺はそんな風には思わない。
じわじわと胸のあたりが熱くなると同時に顔がニヤけていく。

「そっか。や、ちょっと意外だったけど、今日の話聞いてたらもっと喜之のこと好きになったよ、俺」

楽に言葉が出た。息をするように『好き』って言える。前みたいに、赴くままに。
肩をぐっと引き寄せられて、彼に寄りかかる形になる。
密着すると否応なく心拍数が上がった。そうなったらもっと触れたくなって、喜之の背中に手をまわした。ついでに肩に鼻をうずめて彼の匂いを吸い込む。

「なんかさ、エッチも俺が初とかそんな感じしなかったし全然気づかなかった。お前余裕っぽかったじゃん」
「これでもかなり緊張したんだけどね。あのとき、守がすごい道具を並べてたから驚いたよ。お前からそういう欲を感じたことがなかったから、俺は望まれてないんだと思ってたし」
「あー……はは」

あんまり思い出させないでほしい。未遂とはいえソロプレイ現場を見られたんだ、恥ずかしさで死ねる。
けれど、喜之がここまで暴露してくれたんだから俺もぶっちゃけよう。

「俺はずっとしたかったんだけど、むしろ喜之のほうがそういうの好きじゃないかもって思ってたから。一人で励んでたのがエスカレートしてあんな形に」
「お互い隠してたわけか」
「隠してたって、喜之も?」
「……守ほどじゃないけど、そういう機会を持ってもいいとは思ってた」
「小説のネタのために体験しておきたかったとかで?」
「守が好きだからだよ」

なにを当然のことを、と呆れたように言われて全身が熱くなった。
喜之の手が、指が、俺の太股を撫でる。

「言った通り俺は性的な方面の経験がなかったからね。なかなか切り出すタイミングが難しくて。きっかけがあれでちょうどよかったのかもな」
「こ、後悔してる?初めてがあんなんで」
「そんなわけないだろ。ただ、事が終わったあとお前が倒れるように寝たから、俺のせいかもしれないと思って心配で眠れなかった。朝までずっとお前の様子見てたよ」
「えっ、はい?そうだったの?」
「ああ。朝になったらお前が起きる前にと思って急いでシャワー浴びたんだけど、自分の部屋に着替えを取りに行った瞬間に緊張の糸が切れてそこで寝落ちした。間抜けだろ?」

あんなに涼しい顔してたくせにそこまで緊張してたのか……。
あ、だからあのとき、朝こっちのベッドにいなかったんだ。ひそかにちょっと落ち込んだし、薄情だなとか思っちゃってごめん。
そうか心配してくれたんだ。間抜けだなんてとんでもない、そんなとこも可愛いしますます惚れた!
この七年、色々あったけど今となってはもはやただの懐かしい思い出だ。

好きって気持ちが溢れて顔がだらしなく緩む。すると喜之の表情も柔らかく綻んだ。
そうしてどちらともなく顔を寄せて唇を触れ合わせた。
アルコール特有の匂いがして美味しい。これなら酒に弱い俺でも気持ちよく酔えそうだ。
へへ、と酔っ払い気分で笑うと喜之の唇がまた重なった。
何度か啄ばんで角度を変える。軽いキスはやがて深さを増していった。

「う……んん」

指で耳をくすぐられてむずがるような声を上げてしまった。
喜之は近頃こうして優しく、でも、ねちっこく俺のことを触る。おかげで撫でられたりくすぐったりされるとめちゃめちゃ感じるようになった。
首筋を親指で撫でられると反射的に唇が緩む。そこに喜之の舌先が触れたから俺からも舌を伸ばした。

「よひ、ゆき……」
「ん」

彼の薄い舌と自分の舌を深く絡ませ合う。気持ちよくて、夢中でしてたら息が切れてきた。
これってこのままやる流れ?もうちょっと話したいような気がしたけど理性が痺れて働かない。
なけなしの理性を振り絞って、せめてベッドに行こうと言おうとした。が、その前にソファーに押し倒されてしまった。
見上げた喜之の顔は逆光で陰り、さっきまでの優しい笑みは消えていた。
長い睫毛に縁どられた切れ長の目が熱を帯びている。

「よ、喜之……」
「なに?」

応えながらも喜之の唇が首筋をたどった。愛撫の快楽をすっかり覚え込んだ体が、意思とは無関係に震える。
喜之にこんな風に求められると俺は弱い。過ぎし日に作り上げた妄想喜之像に少し重なるからだ。
俺の制止の言葉を無視する、ちょっとそっけなくも強引なところが。
これだからリビングの床だの風呂場だの、ときには玄関でやっちゃうんだよな……。

もういいやと諦めをつけて身を委ねる。
ちゅっちゅと音を立てながら首や鎖骨に口づけられると、せわしないその愛撫に腰が小さくはねた。

「ん……っん」

両手は恋人繋ぎ状態で指を絡ませつつ拘束され、熱く湿った唇が何度も肌を這う。
愛撫は徐々に移動し、服の上から胸をキスでまさぐられた。そうされると乳首が布でこすれてビクッとした。

「あっ」

直に部屋着を着てたから、裏地の少しざらついた感触が敏感な突起にひっかかる。
硬くなって布を押し上げた乳首を服越しに喜之に咥えられる。
生温かい唾液が染み込んでくる。まだ脱いでもないのにやたらと昂って、腰のあたりに重みが増した。

男二人にソファーは狭すぎる。おまけに喜之が押さえつけてくるから逃げ場がなくて、その不自由さに妙な興奮を覚えた。俺はドMかもしれない。
その状態で服越しに貪られる刺激がもどかしくて、つい、ねだるような声が出た。

「あ、あ……喜、之……」
「本当に可愛いな、守は」

吐息ごと耳に直接吹き込まれて脳内が蕩けた。その声だけでイっちゃいそうだ。
俺の上に乗ったまま喜之が上着を脱ぎ捨てる。続けて俺の服も上だけ脱がされた。
体は熱くなって興奮で呼吸が乱れてたけれど、布地が取り払われると微かな肌寒さを感じた。そこに喜之の温かい体がのしかかってくる。
ぎゅっと抱きしめられて、俺も背中に手を回した。

「……守。もう二度と、俺と離れようなんて考えないで」
「うん、絶対思わない」

真剣に言われたもんだから俺も真面目に返した。
喜之の気持ちや本音を聞けた今、愛情は深まるばかりだった。別れるなんてこと考えるわけがない。


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