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念願のドライイキは出来なかったが、久々にかなり満足なセックスだった。
でも付き合うかどうかってのはまた別の話で。


翌日の朝、ほぼ同時に目を覚ました俺とハトはベッドの上で対峙していた。

「……なんで付き合ってくんないの。うそつき」
「だからさー……昨夜言ったじゃん。好きな人いるって」
「好きな人いるのに俺とはエッチできんの?」
「体と心は別ってゆーか……つかお前マジ面倒くさいな」

だんだん嫌気がさしてきてハトと真面目に向き合うのをやめ、デスクの上の煙草を取って火をつけると壁にもたれかかった。
ハトがじりじりと俺に近づいたと思ったらぴったりくっ付いてきた。パーソナルスペースおかしいよお前。こいつってこんなだったっけ?

「それ誰。俺の知ってる人?」
「知ってんじゃねーのかな。同じ大学だし」
「マジすか」

それ以上言いたくなくて、ハトにいくら追及されても口を割らなかった。

「それよかお前、そろそろ帰れよ」
「だから幽霊が……」
「お前んちの幽霊は朝から元気に活動してるアグレッシブなヤツなのかよ。むしろそれって生身の人間……あっ……」
「……一緒に来てください」

ハトは昨日よっぽど怖い目に遭ったらしく青褪めた顔で俺に縋り付いてきた。
しまった墓穴掘った。生身の人間だった方が逆に怖いって気付いちゃったじゃねぇかよ。
あーもーしょーがねーな。俺だって恐怖体験に強いわけじゃねぇんだぞ?
昨日読んでいたまとめサイトを思い出して身震いする。そういやあのリアタイの投稿者どうなったかな。あとで見てみよう。
ま、ハトの方が体格はいいし俺ごときが付いていっても戦力にはならなそうだけど、もしストーカー女だったとしてもハトが襲われてるうちに俺が警察に電話するなりなんなりすればいーか。

「……なんかきょーちゃん、俺のこと盾にすればいいやとか思ってない?」
「お前すげぇな、何でわかった」
「ひどい!!」

とにかくそう思ってハトの家に初訪問した。
ハトんちはきちんと整理整頓された小奇麗な1DKだった。俺にはちょっと広すぎるなっていうくらい。
とびきりオシャレなわけじゃないけど、生活感と清潔感がバランス良く混ざり合ってる居心地良さそうな空間。
そういやハトの実家の部屋もこんな感じで、昔はよく入り浸ってたっけ。

――そしてとりあえず幽霊もストーカーもいなかった。その代わりクローゼットの中の壁に女のポスターが張ってあった。
長い黒髪で、スレンダーな水着姿の笑顔が可愛いロリっぽい女の子。ジュニアアイドルってやつだろう。

「……はい一件落着」
「えっなにこれなにこれ!こんなん俺全然知らないんだけど!?」

のちに判明したことには、ハトの友達が家に遊びに来たときこっそり仕掛けた悪戯だったらしい。モテるハトへのちょっとした嫌がらせのつもりだったとか。
女子がハトの家にこっそり貼ってあるロリポスターを発見して幻滅!っていうのを目論んでいたようだ。

そして何故かこの日から俺たちはなし崩し的にハトの家で同居し始めて、なんとなくの流れで付き合うことになっていた。
いかにも幼馴染みらしいなぁなぁの関係は、その後も家族公認で継続中だ。
むしろ賞味期限切れして捨てたはずだったハトへの恋愛感情が昔より大きくなっちゃって、それなりに幸せで困っている。



end.


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