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田中先輩とミネ君の激励を背に、すっげー面倒だけど、めったに使わない監査の腕章をつけて監査委員室を出た。
監査委員は、仕事は地味だけど、地味に権力もある。
一般生徒の立ち入りが禁止されている場所に入れるという絶対権力だ。
普段は使う機会もないけどクラブや同好会の視察には大活躍のこの腕章。
監査委員には逆らえない。というか逆らったら普通に予算減らすし。
もちろん生徒会室や風紀委員室にもフリーパスのすげーアイテムだ。まあ本音を言えば絶対使いたくないけど。
目的の生徒会室がある特別棟に入り、俺は溜息をついた。
なんだよこのペルシア絨毯は……もうここ学校じゃないだろ、高級ホテルだろ。
生徒会室のドアの前には、親衛隊の子が三人警護をしていた。……警護って時点でもうね。慣れたけど。
役員の親衛隊たちは一般生徒が生徒会室にみだりに侵入しないよう室外の警備を任されているらしい。持ち回りのシフト制だとか聞いたことがある。大変だなぁ。
小さい子が一人とガタイのいいのが二人。一年と二年だ。
「あのー……ちょっと提出書類のことで会長に相談があるんで入室いいですか」
言いながら書類をぺらりと見せると、親衛隊の子がポッと頬を染めた。んん?
「あ、あの、どうぞ通ってください……」
あ、なんか見覚えあると思ったら警護の子達の中に昼休みにキスした一年の美少年君がいた。へー、誰かの親衛隊の子だったのかよ。
「お疲れさん」
ぽんぽんとその子の肩を叩くと、美少年君が真っ赤になった。
残りの警備の人がヒャッとかキャッとかいう小さい声を上げる。え、そのガタイでどこからそんな可愛い声出んの?
ノッカーを叩いて入室する。うおーめっちゃ緊張するぜ。
「失礼します。監査委員副委員長、志賀です」
そう言うと、室内の全員の目がこっちを向いた。視線が突き刺さって痛い。
運の悪いことに全員揃い踏みだった。
用件を早く終わらせたくて、生徒会長のデスクの前に歩いていく。
「あっ、しがっちだー」
「しがっちだー」
「どうも」
庶務の二人に声をかけられて軽く会釈をする。とにかく会話は最小限に抑えたい。
――ちなみに俺は、こいつらを『残念生徒会』とひそかに呼んでいる。
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