飛雄に手を引かれてやってきた誰もいない空き教室。
「なあ、ひな」
何故飛雄が怒ってるのか分からず困惑する日向を昏い目で見下す飛雄。
「さっきの男、誰だ?」
思い出すのは先ほど廊下で見た、日向と見知らぬ男が談笑している姿。
それを見た瞬間感じたのは、男への殺意と強烈な嫉妬。
「……さっきの男?」
日向は、一体誰だろうと首を傾げる。
「……ひなが楽しそーに話してた奴」
少しの誤魔化しも許さないと、日向の目線、仕草、声のトーンに目を光らせる。
「えっと、」
ーーーーダンッ
思い出せず戸惑う日向が、誤魔化そうとしているようにみえ、苛立つ飛雄は、日向が逃げられないように日向の顔の横に両手をつき取り囲む。
「っ、飛雄?」
少しの怯えを見せる日向の耳に低く囁く。
「なあ、ひな……ひなは、誰のモノだ?」
「っ、……飛雄」
耳に熱い吐息がかかり、日向は、かあーっと顔を熱くする。
「なら、他の奴に色目つかうな」
そう苛立ち混じりに呟くと日向の肩に噛み付いた。
「いッ、痛っ、う、あ、、ごめ、んな、さいっ」
引きちぎるように噛む飛雄に、痛みで生理的な涙が頬をツウーッと伝う。
「ひなが悪い」
謝る日向の唇に飛雄は乱暴に口付けた。
「んっ、むうっ、ん」
食らいつくようなキスに苦しそうに眉をひそめる日向。
貪り尽くし満足したのか飛雄はやっと日向から離れると、最後にもう一度日向に釘を刺した。
「……ひな、他の奴に笑いかけるな。わかったな」
「(こくり)」
日向は黙って大人しく頷く。
ここで口答えしても仕方のないことだとよく知っていたし、言いつけを守れなかった自分が悪いと思ったから。
誰も二人の関係を指摘しないがために、今日もこうして二人だけの世界が完結する。