イタチの変態度合いに恐れ慄く原作7班


「また来ちゃった」

 そう言って、てへっと笑うサス。
 流石サス、あざと可愛い。

「久しぶりだってばね、サス」

 何度か会う内に違う世界の自分たちにも慣れてきた原作ナルトたち。

「久しぶり〜サスちゃん!」

 サスケが好きなサクラは、毛色の違うこっちのサスケにもメロメロのご様子。といっても可愛いものを愛でるといった感じだ。

「久しぶりだね〜」

 カカシは純粋なサスに癒されてるご様子。

「……ふん」

 そして意外なことにサスケはサスを弟のように感じ始めていたりするのだった。

「今日は一人?」

 と、尋ねるサクラ。

「うん。サク姉もナルも今日は用事あるだって」

 本来なら一人で行かせやしないのだが、実はこれには理由があった。あんなに一人で行かせるのを嫌がった彼らがそうまでしてでもしなきゃならない切迫した理由が。

「「「そ、そう(良かったー)」」」

 内心、皆、ホッとする。あの二人がいると険悪すぎて大変なのだ。サスケとナルトの喧嘩が可愛く思えるほど……。だから今日は巻き込まれなくてすむと一安心。
 だが、それが覆る事件がこれから起こってしまうのだが……




 七班は、サスを連れ立って甘味処へと向かう。
 サスの目の前にお団子が置かれると、サスは美味しそうに小さな口でパクパクと食べ始めた。

「サスケくんは甘いもの嫌いなのに、サスちゃんは甘いもの好きなのね?」

「うん! あのね、あのね! サスのだーい好きな人が甘い物、特にね、お団子が好きでね。サス、好きな人と好きなもの、一緒に美味しいねーって共有したくて。だからサスもいつもその人と一緒に食べてたら、何時の間にかサスも好きになったの!」

 ふにゃっと頬を染め、はにかむサスに彼らは不覚にも胸をきゅんとさせる。

ーー何この子、可愛い。

「ーーーーって! サスちゃん、好きなの人いるのっーーー!?(誰だそいつ。サスちゃんを誑かした野郎は)」

 サクラ、ピキリと青筋を立てる。
 サクラ気付いて。あなたの想い人や同班の彼らが引いてるよ。

「(こくり)」

 乙女のように頬を染め、頷くサス。

「(キュン。くっそ、可愛いんですけどっ、しゃーんなろー!)だ、誰か聞いてもいい?」

 そこらの女の子よりも遥かに可愛いサスにサクラはぐらりと眩暈がする。

「(こくり)あ、あのねーーーー」

 頬を染めて、サクラに自分の好きな人の名前を教えようとしたその時ーーーードタドタドタと忍びらしかぬ足音を立てて、まさか、まさかの人物が、大声でサスケの名を叫びながら現れる。

「サスケーーーー!!!!!!!!」

 突如現れた人物に、一人はパアーッと顔を明るくし、残りの者たちは驚き、何故お前がここにいると咄嗟に武器を手に警戒する。そして、サスケは憎き奴が現れたことに途端に目をギラギラさせ、一発千鳥を放とうとするが…………

「おにいちゃん!」

 とてとて、とサスが現れた男ーーイタチに駆け寄り、そして腕を広げ待ち構えている彼に思いっきり抱きついた。
 瞬間、サスケを含め第七班が唖然。
 そしてサスケは、ふと、仲良さそうなサスとイタチを見て、昔を思い出し、羨望や寂寞を抱くが、、、

「サスケーー! スーハースーハー。うん。確かにサスケの匂いだ。本当に良かった。サスケが無事で。お前の様子を見に、木の葉にこっそり入ったんだが、お前が家にいなくて驚いたんだぞ。まさか誘拐されなんじゃないかとお前の残り香を追って、木の葉中を血眼になって探し、辿り着いたのがあのクソガキーーじゃなかったナルト君でね、事情を聞いたんだよ。まさか違う世界に行ったと聞いた時は、お兄ちゃんショック死するところだったんだぞ。もう、ダメだぞサスケ。お前は天界から来たんだから、こんなお前にとって空気が穢れた場所に一人で来ちゃ。お前は可愛いから、下衆で糞野郎ーーじゃなかった怖〜い狼さんに食べられちゃうぞ」

 自分の知るイタチと大きくかけ離れ過ぎた違う世界のイタチに絶句。
 こんな兄さん、見たくなかった。
 今ならイタチを前に『兄さん、オレ兄さんの弟で良かったよ』と割とガチで言える。

 ナルトもまた、サスケの兄イタチを知ってるが、自分をクソガキと称した目の前のイタチに頬をひきつらせる。
 何これ、サスの兄ちゃん、マジ怖い。

 サクラもカカシも目の前のイタチにドン引き状態だ。
 なまじ暗部で一緒になったこともありイタチの人となりを知ってるカカシは、自分の知るイタチと次元が違いすぎて逆にガタガタと顔を蒼ざめ恐怖している。

ーークンカクンカとサスの匂いを嗅ぎ、残り香でサスを探したとか、天界から来たからとか、狼さんが食べちゃうぞとか、本当なんなの、こいつ、マジでやばい。

 この時、全員の気持ちが初めて一致した。

 そして当のサスは、普段からこんなイタチだから慣れてしまったのか、はたまた天然さんなのか、とにかく言動が危なっかしいイタチを前にしてるのに、
 
「おにいちゃん、心配かけてごめんなさい」

 シュンと萎れたように項垂れている。

「(きゅん)ああ、いいんだサスケ。とりあえずサスケが無事で本当によかった。ほんとお兄ちゃん、お前の気配が木の葉に何処にもないと知って、うっかり木の葉を滅ぼすところだったんだぞ。それよりもあのクソガキーーごほん。ナルト君に聞いたぞ。ここに来るの初めてじゃないんだろう。確かに暁にいる時、この世からサスケの気配が何回か消えて、驚いてその度にうっかり暁のメンバーを瀕死に追いやってしまったんだが、お兄ちゃん心配するから今度からはちゃんとお兄ちゃんに言うんだぞ」

ーーうっかりで木の葉を滅ぼすとか、うっかりで暁のメンバー瀕死に追いやるとか、ああ、こいつ頭もヤバイけど、実力もやばいんだ……

 さーっと顔を蒼ざめる四人。

ーーこいつがここにいる内は、なんとしても被害を出さないようにしなくちゃ。

 またしても心がひとつになる。

「はーい!」

 元気よく手を挙げるサスに、イタチが頭を撫でる。

「よしよし。あー本当サスケ、少し見ないうちにお前は可愛くなったなあ」

「くすくす。お兄ちゃん、それ一週間前にも言ってたよ」

ーーあんた、里抜けしてんじゃないの!? 一週間前ってどういう意味!?

「そうだったか? ああ! そう言えば、お前の成長した姿を写輪眼とカメラに焼き付けていた時に会ったんだったな。ああでも、確かに一週間前よりも可愛くなってるぞ。この写輪眼に焼き付けたんだから確かだぞ」

ーー成長した姿を写輪眼とカメラに焼き付けるとか言ってるけどそれ盗撮ですよね!? てか、写輪眼の使い方間違ってるから! 何、血系限界を便利な道具代わりに使ってんの!?

「ありがとう、おにいちゃん。おにいちゃんも一週間前よりもカッコいいよ」

ーーサス〜! お前の兄ちゃん、やばいって気付けってば〜!

「(きゅん)そ、そうか。ありがとうサスケ。ーーーーーーところで、こいつら誰だサスケ?」

 ニコニコとサスと戯れていたイタチだが、突然その場から立ち上がると、一切の表情を削ぎ落とし、向かいにいるナルトたちと向かい合った。

「「「「ヒッ」」」」

 一瞬にして無になった表情は、先ほどまで満面の笑みだったイタチとのギャップに恐怖する。

「あのクソガキーーじゃなかったナルト君がここは違う世界の木の葉だと聞いていたが、なるほど確かに俺が知ってるものと多少の差異があるみたいだな」

「例えばーー俺の知るはたけカカシは、俺を見る度、恐怖で顔を蒼ざめ、目を逸らし、ガタガタ震えていたが、こっちのはたけカカシはそうじゃないらしい」

ーーいや、向こうの俺の気持ち、よく分かる! 俺も怖いっ、めちゃくちゃ怖い!

「黄色いの。ああ、お前だ。俺の知るうずまきナルトは、毎回毎回身の程をわきまえず突っ掛かり、隙あらば俺のサスケに手を出そうとするクソガキだが、お前は己の分をちゃんと弁えているようだ」

「アハハ、ハ……」

ーー凄い! 向こうのオレ凄い! こんなめっちゃ怖い奴に毎回挑んでるとか、凄いってば! 尊敬するってば!

「ーーーーそして、貴様! 俺の可愛いサスケの姿をしたそこの奴! 顔が似てるからと言って間違えると思ったか! 残念だったな。お前は全く全然これっぽっちも、この俺のサスケの愛らしさを表現出来ていないっ! 見ろ、純粋で穢れのない俺のサスケを! 流石、俺の天使! ああ、なんて可愛く愛らしいのだ! いいか、お前も俺のサスケを目指すなら、その無愛想な顔をせず、にっこりと笑え! ああ、だが勘違いするなよ。お前では俺のサスケのようになることは無理だ。不可能だ。俺のサスケに百歩譲って少しほんのすこーし、近づくことは出来ても、成り代わることなど出来ん! 残念だったな。ハッ。まあ、お前はこの世界のうちはサスケなんだろうが、俺は今、この瞬間、神に感謝しよう! 俺の可愛いサスケは、神の奇跡により誕生し、俺の、俺ためだけに、神が俺に与えたものだったのだ!」

ーーああ、イタチ……兄さん! すまない! おれは、おれは! 本当にほんっとうに、あんたが兄で良かったよ!

 己をボロクソに蔑む目の前の向こうの世界から来たイタチに米神をピクピクさせながら意識を彼方に飛ばすサスケ。
 哀れ、サスケ。

「ね、面白いでしょ、おにいちゃん?」

「ああ、だが、お前のいない世界に興味はない」

「(ポッ)」

 兄弟で見つめ合い、二人の世界に入ったサスたちを七班四人は死んだような目をし、とにかく彼らが帰るのをひたすら祈った。
 今回、サスとイタチを決して絶対に何がなんでも、引き合わせてはならないと学習した七班であった。


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