「いやっほーい!!」
ナマエはいつも以上にはしゃいでいた。
なんてったって今日は待ちに待ったトッ高祭!騒がずにはいられない。
今日は一日目で、一般公開日。大勢の客が見込まれている。なぜなら、スポンサーに製菓会社がついているので、屋台で出されるお菓子はとても美味しいと、この近辺では好評になっているからだ。
「朝っぱらから凄いテンションね」
その眠そうな声の主はシャーロット・プリン。彼女は行事にはあまり関心を示さない。
「プリン!だって年に一度しかないんだよ。授業は潰れてくれるしさ」
「確かに授業が潰れてくれるのは嬉しいわ」
興味なさそうにしているが、いつもよりスカート丈は短いし、メイクは濃いめだし、浮かれてるのはバレている。
私達のクラスは、ド定番だがお化け屋敷をすることになった。クラスのみんなは仮装をしている。私とプリンは目と口から血糊を垂れ流しているナースの衣装だ。衣装係がかなりクオリティの高いものを作ってくれたので通り過ぎるたびに二度見されるほどの不気味さである。
「一組は何もしないの?」
カタクリの属する一組は行事には大抵参加しない。ひたすら他校の女子にナンパするのだ。カタクリはしなさそうであるが。
「さあ」
「ふーん」
そんな他愛もない会話をしていると、廊下から女子たちの甲高い嬌声が響き渡る。
「二年二組の作業は捗っているか?」
「スムージーさん!!!」
ナマエはスムージーの腰に抱きついた。
スムージーは、高校三年生。トッ高の副生徒会長だ。カタクリやプリンの姉でもある。トッ高一の脚長美人として男女から人気がある。ナマエもスムージーファンの一人だ。
ただ、副生徒会長といえども高校生にしてそのキレイな足に薔薇のタトゥーを入れているので、流石はシャーロット家だと思った。
「あら、スムージー姉さん。生徒会のお仕事?」
「ああ。各クラスの進捗状況を聞きに来た。」
本当にいつ見ても綺麗。永遠の憧れ。
「今日は大勢の来校を見込んでいる。存分にトッ高の魅力を伝えることに努めてくれ」
「かしこまりました!」
血だらけのナースの格好で敬礼をする。
スムージーはそれに手を振って応えた。
「去り際もかっこいい・・」
プリンは家族だからスムージーに見慣れてしまったらしい。
「私、スムージーさんの妹になりたい・・!」
「なれるわよ。アンタの好きな人と結婚すればシャーロット家の仲間入りね」
歓迎するわ。プリンはそう言って意地悪く微笑んだ。プリンは私がカタクリを好きだと知っている。
カタクリと私が、結婚?夢のまた夢過ぎて想像出来なかった。
けど。もしも。そうなれたらいいのにな、と思ってしまうナマエであった。
______
トッ高祭は思った以上の盛り上がりだった。大半はお菓子目当てではあるが。
「二年二組でーす!三階でお化け屋敷やってまーす!」
私とプリンは集客係。可愛いプリンがいるお陰でかなり客が釣れる。客の殆どは他校の男子でプリンを口説きに来ているが、私が追い払っている。
そして何故か男子は私の顔を見ると慌てふためいて逃げ出す。そんなに血糊メイクが上手くいっていたのか。
「私の顔見て何で逃げるのさ・・」
それはね、アンタがカタクリの女って噂されてるからよ。手出ししたら痛い目に遭うっていう。それは事実だけど。
プリンは心の中で呟く。実はこの噂を流したのはプリンである。
「ナマエー!!!」
名前を呼ばれ振り返ると、そこにはトレードマークとも言える麦わら帽子。
「ルフィ君!?来てくれたの?ナミちゃんも!」
ナマエはルフィの元へ駆け寄る。あーあ、カタクリに見つかったら恐ろしい事になりそうだ、と思いながらプリンもナマエについて行く。
「ヨホホホホ!!パンツを見せて貰ってもよろしいですか?」
「は?」
骸骨が、喋った。
その場にいた女性陣は、全員がドン引きの表情で骸骨を見る。
「ちょっとブルック!!」
ナミが骸骨を叩く。
「ごめんねー、この人、変なやつで・・」
「え!?人?」
「ちょっと失礼じゃありません?」
「「お前が言うな」」
ブルックと呼ばれた骸骨は、悪びれる様子も見せず堂々としている。
「仮装?」
「もともとこんな顔ですよ・・!」
ナマエはいいことを思いついた。
「ブルック君、パンツ見せてあげるからお化け屋敷で骸骨やって!」
「ちょっとナマエ!」
プリンが嫌がる。
「見せるのは私のだけだから。ね、悪い話じゃないでしょ?」
「ヨホホホホ!!喜んでお引き受けしますよ・・!」
ナマエはブルックと握手した。契約成立だ。
プリンは、これもカタクリに見つかったら恐ろしいことになると思い、溜息をついた。
「あ!サンジ君も」
「え・・」
プリンが固まった。
「かっ、かわい子ちゃんがいるーーーっ!!」
サンジは目をハートにしてプリンに近付く。
「名前は?プリンちゅわん?可愛いーーーー!!」
完全にサンジはプリンにゾッコンだ。だが当のプリンも満更ではなさそうで。頬を赤らめている。
「サンジ・・君・・」
「遂にプリンにも・・!」
ナマエは心から喜んだ。親友の恋は応援したくなるのが性だろう。
「・・あれ?ルフィ君は?」
いつの間にかルフィは消えていた。露店でお菓子でも食い漁っているのだろうか。
カタクリと喧嘩してなきゃいいけど、と心の中で呟いた。
______
「ブルック君!お疲れ様」
「お、お疲れ様です・・ヨホホ」
ブルックは傷だらけだった。お化け役として客を驚かしたのはいいものの、恐怖のあまり攻撃されブルックは踏んだり蹴ったりの目に遭っていた。
「今傷薬塗ってあげるね」
ナマエは軟膏を取り出す。
「なんで軟膏持ってるんですか・・・まるで怪我する前提みたいじゃないですか・・ヨホホ」
「違うよ。いつもカタクリとかが怪我して帰って来るから常備してるんだ」
「カタクリ!?」
そういえばブルック君は麦高だった。じゃあカタクリ達とは敵対してるのかな。
「・・・ほんとは喧嘩なんてしてほしくないけどね」
カタクリが喧嘩を始めたのはいつからだっただろうか。ブリュレの顔に傷をつけられた頃からだっただろうか。
カタクリは優しいから、いつだって他の人のために喧嘩をする。
「・・・それで、約束のパンツはいつ・・」
「ああ!忘れてた」
ナマエは今日のパンツの柄を思い出した。
「実は今日、オーバーパンツ履いてて・・」
「じゃあ色と柄教えて下さい!!」
「おい、何の色と柄だ・・!?」
「あ、カタクリ」
「ひっ!じゃあ私はこれで失礼します!!!」
ブルックはチーターよりも早く逃げていった。
「今のは何だ?」
「骸骨」
「・・?」
危なくパンツの色と柄がバレるところだった。
「・・・カタクリは、今までナンパしてたの?」
「しねェよ」
即答だ。
「へー、・・良かった」
あ、心の声漏れちゃった。
「!違う、別にいい・・もん」
ナマエは慌てて否定したが、遅かったようだ。
カタクリはマスクをしていたが、それでも分かるぐらい口角が上がっていた。顔もほんのりと赤かった。
なんなの、その表情。てっきりからかわれるかと思ってたのに。
「そうか」
カタクリの機嫌は明らかに良くなっていた。それに反比例して私の恥ずかしさは最高潮だ。
「帰るぞ」
「・・うん」
さっきの反応、少しだけ、期待してもいいのかなって思っちゃうじゃん。
終わらないための緻密
514324
次のページへ