トリプルアイス・クリームソーダ・ナイト


ナマエが風邪をひいた。今流行中のものだ。それを聞きつけておれはすぐにナマエの家に向かった。

チャイムを鳴らしても、中からの応答がない。仕方なくカタクリは無断で家の中に入った。

「ナマエ、いるのか」

ナマエの部屋には何度も入った事があるのに、この気持ちに気づいてからは入るのが気まずくなった。だが、中から苦しそうな咳が聞こえ、いてもたってもいられなくなりドアを開けた。

「ナマエ・・・」

顔の赤いナマエは見るからに高熱だ。辛そうなナマエを見ているとこっちまで辛くなってきた。
体から熱が放射されている。少しでも熱が下がればと、カタクリは冷たい手でナマエの頬に触れた。

「ん…」

びっくりしたのかナマエが少し身じろぐが、起きなかった。

「…ペロス兄?」

カタクリの中で何かが崩れ落ちた。熱で朦朧としているナマエはペロス兄を見るような表情でおれを捉える。

「来てくれたの?」
「…」
「ふふ、ありがとう」

目は開いているが意識は夢の中なのかもしれない。ナマエは頬に添えられたカタクリの手にそっと触れる。

カタクリの手は震えていた。悲しくて、でも彼女に触れていたかったから手は離せなかった。

「ナマエ・・・」

ペロス兄は来ない。生憎彼は仕事が忙しい。でもおれはお前が治るまでそばにいてやる。だから、どうか、おれを。

カタクリの願いは空しくも、ナマエが再び目を閉じたことによって叶わなくなってしまった。

***

「おかげさまで!風邪完治したよ」
「あァ・・、それは良かったな」
「また今日から鍛錬始めるんだから!」
「今度は怪我して病院送りにならないようにな」
「うっ・・・」

おれの心配も気にせず、ナマエはまた鍛錬を始めようとする。本当は、病み上がりの体でそんなことしてほしくはなかった。

ナマエは強くなった。まだおれ達ほどではないが懸賞金だって徐々に上がってきている。
もしこのまま強くなって、ナマエが本当にペロス兄と結婚する権利を勝ち得たとしたら、どうする?
おれはママの息子。欲しいものは手に入れる。それは海賊だから。
でもそれは、ナマエの気持ちを踏みにじってまで得たいものなのだろうか。

違う。おれはナマエが笑ってくれていればそれでいいんだ。それが誰の隣であれ。
お前が幸せなら、それで、いいんだ。

カタクリは、チクリと痛む胸にまた気づかない振りをした。
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