道中@



「地図に、旅に必要な道具に、それにお金も。たくさん、いただいちゃいましたね」



結界の外へ出てすぐ、下町の皆からもらったものを確認する。

体力が回復するアップルグミや、旅には欠かせないお金。

そしてそれを入れるバッグと、性欲処理のためのエロ本。



「・・・ん?今何かおかしなものが・・・」

「なんです?」

「ああああああ!エステルは見ちゃらめええええええええ!!」

「・・・」



どうやら下町の皆は変な気を使ってしまったらしい。

・・・まあ、確かに旅となると欲求不満になるよね!グッジョブ下町!



「よし!ユーリは妄想だけで大丈夫だから、これは私が預かって・・・」

「・・・」

「ぎゃああああああああああ!!なんで無言で川に捨てんのおおおおおおお!?」



エロ本に手を伸ばそうした瞬間、それはユーリによって近くの川に捨てられた。

ひどい!どんな内容なのか気になってたのに!



「ったく、あいつらも生活きついってのに、無理して色々よこしやがって」

「せっかく下町の皆がくれたのに!この鬼!悪魔!ユーリ!」

「人の名前を悪口みたいに言うなっての」



ふん!もう『ユーリ』なんて悪口でいいんだよ!

エロ神様から天罰が下ればいいんだ!



「ふふっ。それだけ、ユーリやユイの旅立ちを心配してくれてるんですよ」

「ならもう少しエロ本を・・・いたっ!!」

「今頃、問題児がいなくなってせいせいしてんだろ」

「そんなことありませんよ」



叩いた上に何故私を問題児のように見ている?

なんだよ!?なんなんだよ!?



「ま、こんだけ借りを作っちまったら、手ぶらじゃ帰ってこれねえ。

 なにがなんでも水道魔導器(アクエブラスティア)の魔核(コア)は取り戻さねえとな」



・・・そうだね、頑張ろうね。

もうどうでもいいかな、と感じ始めたとき後ろから念仏のようなものが聞こえてきた。



「・・・エステル・・・エステル」

「あいつは、さっきから何ぶつぶつ言ってんだ?」

「ク〜ン」

「・・・なんか怖いよ、エステル」



しかも後ろからって言うのが余計に怖い。

きっとアレは病んでるに違いない。



「お〜い、ぼんやりしてると置いてくぞ」

「エステル・・・エステル・・・」

「聞こえてないね。えすてるうううううう!行くよおおおおおおおおお!!」

「あ、はい!今、行きます!」



そこらの小さな魔物が驚いて逃げていくのを見ながら、

エステルに向かって叫ぶ。ちょ、そんな逃げないで!



「呼び名がそんなに珍しいのかね」

「まあ、見た感じ身分良さそうだしね」



つーかアレで貴族じゃなかったらなんなんだよ、って話だわ。

考えながらふと視界の端に見えた青を見ると、ラピードが静かに前だけを見て歩いていた。

ちょ・・・。なんか歩き方までかっこいいんですけど!



「やばいよこのイケメン!ただ歩いてるだけでも様になるってどういうこと!?誰か説明プリーズ!」

「そんなに褒めても何も出ないぜ?」

「違う!今のはラピードだよ!いやユーリもイケメンだけどね!」



イケメン二人(いや、一人と一匹か)と可愛い女の子に挟まれるなんて・・・!

やばい俺今なら幸せ死できるね!



「ユーリ、こちらの犬は・・・」



ユーリとの会話に出てきたせいか、もしくは初めからか、

エステルの視線はラピードに釘付けだった。

ただじっと、ラピードを見つめる。

・・・そんなに見なくてもいいんじゃないかなあ。



「ああ、オレの相棒のラピードだ」

「そして私の尊敬するお方」



もうこのイケメンさに何度惚れたか。やばい、キュン死する。

俺の心臓が悲鳴をあげていr「ワン!」おおっと思考を遮られたぜさすがラピード。



「あ、こちらこそよろしくお願いします」

「こちらこそって、ラピードが何言ったか、わかったのか?」

「いえ、全然・・・」

「ま、そりゃそうだよな」



今のは明らかに私の思考を読んで牽制したに違いない。

動物は人の心読めるらs「ワン!」ごめんなさい。動物とか考えちゃってホントごめんなさい。



「あんま変なこと考えんなよ」

「!?な、何故分かった・・・!?」

「顔に出てる」

「もうやだ怖いよこの二人」



これじゃ妄想も出来ないじゃないか!

まだまだ続く道のりに、妄想も出来ない悲しさに溜め息をついてしまった。





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