友達



「先ほどのザギと呼ばれていたような方が、

 お城の外にはいっぱいいるんでしょうか?」

「それは・・・!なんて楽しい世界なんだ!」

「いや、ありゃ特別。あんな頭のいかれたやつ、そう居るもんじゃない。

 ・・・こいつもな」

「あれ!?私ってあんなにいかれてる!?」

「ああ」

「・・・」



即答ですか。そうですか。

いじけて会話から外れた私をちらりと見てから、

エステルはほっとしたように笑みを浮かべる。



「そうですよね。よかったです。

 もしあの方が一般的な方だったらどうしようかと・・・」

「あんなのウジャウジャいたら暮らしにくくってしょうがねえって」



ザギについての話は終わりだと言わんばかりに、ユーリは先に進む。

ついていこうと足を踏み出した瞬間、何かに腕を捕まれた。

後ろを振り返ると、エステルがとても可愛らしく微笑んでいた。

かわええのぉ・・・。



「あの、わたし、同年代の友達あまりいないんです!」

「そんな寂しいこと笑顔で言われても・・・」

「だから、お友達になってくれませんか?」



エステルはここのお姫様。

いままで普通の女の子としては生活できなかったのだろう。

その証拠に、先ほどとは打って変わって不安げにこちらを見つめている。

もちろん、私の答えは決まっている。



「ぜひ!むしろこっちから言おうとしてたよ!」

「ほ、本当ですか!?」

「もちのろん!・・・あ、私ユイ!よろしくね!」

「はい!」



この世界で初の女友達!やっふーい!

しかもこんな可愛い子なんて・・・。デヘヘヘ。



「気をつけろ、エステリーゼ。油断してたら食われるぜ」

「た、食べられるんです!?」

「食べねーよ!・・・たぶん」






新しい友達にテンションが上がり、楽しく会話をしていると、

中庭のような所の2階に出た。

1階では騎士たちが慌しく走り回っている。



「・・・さっきの連中のせいか、これ・・・?

 ユイのせいとかになってねぇよな」

「私のせい!?真っ先に脱獄したのユーリ・・・」

「暴れたのはおまえだよな」

「・・・はい」



最近のユーリは怖さが異常です。

誰かああああ!ヘルプミー!



「ケガ人が出てなければいいけど」

「騎士団も自分たちの身くらいはちゃんと守ってんだろ」

「そうですね」

「石で気絶した騎士がいたんだけど」



いや、あれはユーリが強すぎただけか・・・。

騎士が弱い現実に目を逸らしていたら、1階から大きな声が響いた。



「ユーリ・ローウェルと彼女!どこに逃げおった!」

「ほら、元気なのが来たぞ。この声、ルブランだな」

「え!ユイとユーリさんは付き合ってるんです?」

「違ぇから」



そんな即答しなくても・・・。

あれか。私とは付き合う噂をされるのも嫌ってか。



「そうですか・・・。

 そういえば、ルブランさんという方とはお知り合いなんですか?」

「ま、ちょっと前にな。・・・と、そんなことより急ぐぞ」



話を切り上げ、ユーリは歩き出す。

エステルも足を1歩踏み出した瞬間、ドレスの裾を踏んでしまった。



「きゃ・・・」

「うおっ、・・・大丈夫?」

「は、はい。ありがとうございます」



危うくこけそうになったエステルを支える。

ユーリはエステルの格好を見て、口を開く。



「その目立つ格好も、どうにかした方がいいな」

「着替えならこの先のわたしの部屋に行けば・・・」

「んじゃ、それで行こう」



少し寄り道をするくらいならどうってことない。

再び歩き出し、エステルの部屋に向かう。



「ユイ。あの・・・」

「ん?」



途中、エステルが小さく私に呼びかける。

別に、もっと普通に話しかけてくれても・・・。



「先ほど、ザギと呼ばれていたような方と戦っている時、

 わたしのこと、『姫』って呼びましたよね?」

「・・・呼んだっけ?」

「はい」



あちゃー・・・。

ついゲームの癖で姫って呼んじゃったよ・・・。

この時点ではエステルは姫って分からないんだよな・・・。

やっちゃったなー、おい。



「・・・ほら、態度とか、喋り方とかさ、姫っぽいじゃん。

 だから、つい・・・」

「あ、そうなんですか」



エステルは、明らかにほっとしたように胸に手をあてる。

どうやら私にはばれていないと思ったのだろう。

よし、なんとか凌げたな。原作から逸れたらどうなるかわかんないしね。

・・・ま、ユーリは薄々感付いてるだろうけど。



「これからはちゃんとエステリーゼって呼ぶんで、よろしく!」

「はい!」



エステルと仲良く話しながら、3人でエステルの部屋に向かうのだった。





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