大きい声


「で、何でおまえは術が使えたんだ?」

「いや、ユーリがノリで出来るって言ったから」

「・・・マジでノリで出来るとはな」



うん。普通はおかしいですよね。わかります。

ユーリはおそらく呆れながら、倒した騎士を見下ろす。



「最近の騎士団じゃ、エスコートの仕方も教えてくんないのか?」

「ユーリはエスコートの仕方を知ってんの?」

「そりゃな」

「なん・・・だと!?」



バカな!ユーリがエスコートの仕方を知っているだと!?

私のすごく失礼な態度を見てか、ユーリは額に青筋を浮かべながら

いっそ清々しい笑みを向ける。こっわ!



「よし。ユイもエスコートしてやるよ」

「え?」

「俗に言うお姫様だっこ、でな」

「ごめんなさいすいませんでした」

「ん。分かればいいんだよ、分かれば」



ユーリには逆らえない。

この事実が嫌と言うほど分かってしまった今日この頃。

ふと後ろに気配を感じたような気がして、

前方に勢い良くスライディングをする。

私が跳んだと同時に、可愛らしい声と花瓶が割れたような音が響いた。



「えいっ!」

「ほあああああああああ!!」

「あぶね!いきなりなにすんだ!」



どうやらユーリもギリギリ避けたようで、

私たちを大きな壺のようなもので殺人・・・

もとい攻撃をしてきたエステルを睨む。

私のスライディングには無視ですか。そうですか。



「・・・だって、あなたたち、お城の人じゃないですよね?」

「そう見えないってんなら、それまた光栄だな」

「こんな怪しい人がお城にいたら普段から大騒ぎ・・・あだっ!」



床から復活しユーリをからかおうとしたら叩かれた。地味に痛い。

頭をさすっていると、城内に響き渡る大きい声。



「ユーリ・ローウェルとその彼女!どこだ〜!」

「不届きな脱走者達め!逃げ出したのはわかっているのであ〜る」

「・・・彼女?」

「・・・はぁ」



ユーリは大きく溜め息を吐く。うん、気持ち分かるよ。



「ちっ、またあいつらか。もう牢屋に戻る意味、なくなっちまったよ」

「だから無理だって言ったのに。人の話聞かないから〜」

「へーへー」



どんだけ適当な返事なんだ。

私達がやりとりをしている間も、騎士達の声は響く。



「馬鹿も〜ん!声が小さ〜い!」

「ルブラン小隊長は、声でかすぎて耳が・・・」



まあここまで響く程の声だからね。そりゃ耳痛くなるわ。

私達をよそに、エステルは驚いたようにこちらを見ている。



「ユーリ・ローウェル?もしかして、フレンのお友達の?」

「ああ、そうだけど」

「という事は、あなたが今騎士団で有名なユイさん、です?」

「・・・ん〜?名前はあってるけど・・・有名?」

「はい!」



そんな元気よく返事されましても。

有名という言葉に疑問を感じている間に、二人は話を進める。



「あの、ユーリさん!ユイさん!フレンのことで、お話が!」

「ちょい待った。あんた一体、なんなんだ?

 フレンの知り合いなのはわかったけど、どうして騎士団に追われてんだよ」

「こっちだ!」



疑問が山ほど残っているが、どうやら騎士達は待ってくれないらしい。

とりあえず、聞きたいことは後にしておこう。



「事情も聞きたいけど、お互いのんびりしてらんないな。

 まずはフレンのところに案内すればいいか?」

「あ、はい!」

「いくぞ」

「おー!」



こうして私達3人はフレンの部屋に向かった。





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