チトタチ(テニス)






 自分の中のベクトルの全ては、ただ一人の男に向けられている。
 友情も対抗心も闘争心も――恋愛感情でさえ、彼に向かってしまっていた。
 狂っているんじゃないかって思うくらい、自分の中には彼のしかいない。
 たぶん、彼が、彼との関係が壊れてしまえば、自分は本当に狂ってしまうのだろう。まるで砂で作られた山が、波にさらわれて崩れるように、自分の面積を大きくに削りとられて。



 そんな心の中の未来予想図は、見事に当たってしまった。
 削られたのは己の瞳。削りとったのは一つのボール。
 自分が全感情を注いでいた彼との関係は、その姿を映していた自らの片目と共に脆く、儚く散った。




嚶サ上の城










この後どんな風に続けるつもりだったのだろう…。



12.9/16





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