完璧男
「おや、これはついうっかり。油断していましたね」
困ったものです、と全然困ってなさそうな爽やかなスマイルフェイスをこっちに向け古泉は言う。
「僕としたことが、不覚でした」
「別に、それくらい見られたってなんてことはないだろう?」
それは本当に些細なこと。
朝、偶然にも登校時間がぴったり重なり、まあ顔を合わせれば話をするくらいの仲ではあると思っているから、少し遅いペースで歩く古泉に合わせて歩いていたのだが。
そこで、ふと覚えた違和感。その正体にすぐ気付き、それを指摘してやれば、古泉はしまった、と珍しく焦ったような顔をして。
すぐにいつもの表情に戻ったが、それは俺をえらく不愉快な気持ちにさせた。
スマイル0円のエスパー少年はいわゆる完璧男だ。悔しいが認める。
顔良し、成績良し、スポーツ良し。
制服は、毎日アイロンがかけられているみたいに皺一つないし、爪だっていっつもピカピカで、切るのに失敗してがたがたに歪んでいるところなんて一回も見た事はない。
性格だって、俺から見れば少々変わった奴だとは思うが、まあ、悪い奴じゃない。
そして、その一つひとつは、恐らく、ハルヒの為。
ハルヒがそう願ったから、ただそれだけの理由で動く男なのだ、こいつは。
自分がそういうキャラクターでいる事をハルヒが望んでいるから、なんてさらっと言い今日も完璧くんを演じるのだ。
だが、俺はそれが気に入らない。
別にキャラ作り云々は止めろなどというつもりはない。割と素の性格なんじゃないかと思うところも多いしな。
だが、俺の前でくらいぼろを出したって別に焦ることないだろう。
実際、指摘はしないでやってるが、結構俺の前では油断してる癖に、お前。
ちょっとしたところを見られたくらいで、そう過剰に焦られればいい気分はしない。
「なあ、古泉よ。別にそれくらいのことでそんなに焦らなくてもいいだろう?」
「いえ、いけません。今度からはもっとしっかりして来ます」
「ハルヒに見られる前にはちゃんと指摘してやるから……それじゃあだめなのか?」
「だめです。あなたに見られたんじゃ意味ありません」
「ちょっとくらい抜けてるところがあった方が、可愛げがあっていいと俺は思うぞ」
「はは、何ですかそれ」
結局、古泉は頑なに意見を変えず、俺は渋々話題を変えた。
……寝癖くらい、俺に見せてくれたっていいじゃないか。
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2010.07.23
※古泉視点はこちら→完璧男・裏
朝方、シャワーを浴びてたらふとキョンと古泉の登校風景が見えた気がして、その勢いのまま数分で書き上げたやつですw
最後と古泉の爪について書きたかったからこうなった。
古泉は常に爪はほどよく短く綺麗にしてあると思います^^
手フェチ?ああ否定しないよ!←
それにしても タイトルが ざんしん である(笑)
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