半双の絆
怖がりで泣き虫で。どうしようもない位ヘタレな俺の弟。
なぁ、お前は今。泣いているのか‥‥?
足元で何かが弾けるような。砕けるような音が上がる。
耳を塞ぎたくなる程うるさい音を立てたそれは。意識をする前に己の脳髄を叩きつけた。
「ぐっ、‥ぁ‥‥!?」
音からきた目眩なのか。それとも目眩からきた音なのか。
理解する余裕もなくて。胸を押さえて、半場倒れるようにその場に膝をつく。
苦しかった。心臓が、肺が。全ての内蔵が締め付けられるようだった。
「ロヴィ!?」
驚いた声がして。キッチンの裏戸からアントーニョが駆けてきた。
きっと、先程の甲高い音が裏庭にあるトマト畑にも響いたのだろう。
手をついた床には。無数の割れたグラスが散らばっていた。
「──っ‥ぁ、アントー‥‥」
「ロヴィ!しっかりしいや!」
苦しそうに身体を折り。ぎゅうっと胸元の服を握り締めたまま浅い呼吸を繰り返す。
ガラスの破片を足裏で退けながら。大丈夫かと聞いてくるアントーニョの声さえも曖昧だ。
「ア、アイツが‥‥アイツが‥‥」
「アイツって?アイツって誰なん?ちょっ、ロヴィ!?」
手が震える。耳鳴りが回る。
痛い。切ない。苦しい。寂しい。泣きたい。
アイツが。アイツが泣いている。ここが痛いと。ここに居たい、と。
「お前は。今、どこに‥‥」
半身を投げ捨てるように。支えた腕から崩れ落ちる。
誰かの腕に包まれて。それがアントーニョだと理解しながら眩んだ視界に目を細める。
フェリシアーノ──
呼ぼうとした名前は涙に溶けて。俺は、一瞬の闇へと堕ちていった。
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