虚空を仰ぐ
誰かが言った。
太陽の沈まぬ時代は終わった、と。
肩で息をしながら、黒く爛れた大地に斧を突き刺す。
額に流れるのは血と混ざり合った脂汗。
所々に切り傷を作り、服を赤く染めている。
「…っは、さすがに、ちょっと、ヤバイかもなぁ」
あまり危機感を感じない軽い言葉を吐きながらも、その顔は苦悶に満ちていて。
持った斧を支えにしながら、そのままズルズルと座り込む。
友人だと思っていた者には裏切られ、支配下に置いていた者たちにも反旗を翻された。
たぶん、自分は目立ち過ぎたのだろう。
この戦場の中で、後悔ばかりが先に立つ。
「なんだよ、もう終わりか?」
周りで銃声の音が聞こえた合間。
頭上から、憎らしいほど余裕な声が聞こえてきた。
顔を上げれば、そこにはニヤけた面をしたアーサー。
銃口をこちらに向けて、俺を見下ろしている。
「なんや、お前まで来てたんか」
「情けねぇツラだな」
「うっさいわ」
立ち上がりもせず、そのままの状態でアーサーを見上げる。
殺されるかもしれない。
そう思っても、ボロボロに傷んだ身体は既に言うことを聞かなくなっていて。
「…殺るんやろ?なら、さっさとしてくれへん?」
嘲笑気味に笑って、アーサーに言う。
もう疲れていた。
戦うのにも、裏切られるのにも。
アーサーに殺されるのは癪だけど、それで終われるのならもういいと思った。
──結局最後まで守れんかったなぁ
憎まれ口しか叩かない小さな子分に心の中で謝って、ゆっくりと目を閉じる。
これであいつが引き金を引いて、それで終わり。
その筈だったのに。
何故か右肩に鈍い痛みが走った。
→