「──ッ!?」




世界が反転する。

背中を強かに打ちつけて、無数の小石が背中に食い込み短く声を詰まらせる。

空に見下ろされて、初めて自分が仰向けに蹴り倒されたことに気付いた。



「なに、自分だけ楽になろうとしてんだよ?」

「ッ…な、ん?」



踏みつけられた右肩が痛みに軋む。

抵抗しようにも、払い除けるには力の差があり過ぎた。



「満足したような顔しやがって。誰が、殺すなんて言った?」

「──ッう、あ‥っ」



踏んだ足はそのままに、銃口を向けて、俺の顔を覗くようにしゃがみ込む。

目を開ければ、そこには口角を吊り上げて恍惚に満ちた顔で笑うアーサー。




「お前は俺の、奴隷になれ」




──…あぁ、きっと、昔の自分はこんな顔をしてたんや。


驕り、傲慢、過信。

逆らうものは誰もいなくて、己の采配で全てが決まる。



「…お前は、世界を、自分のものにでもするつもりなん?」



力でねじ伏せ、次々と他国を組み敷いて。

そして自分は偽りの玉座へと腰を降ろす。



「その為の、戦争だろ?」



お前の時代はもう終わったんだ。
太陽の沈まぬ国には、俺がなる。

そう耳元で囁いたアイツを。
止めることは出来なくて。


自分と同じ思いをするヤツが、ここに一人。

向けられた銃口を見つめながら、酷く霞んだ空に虚無を零した。






†end

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