顔戦争





吐息を聴いて、
体温で眠る幸せを。




布の擦れる音がして、緩く漂っていた意識を浮上させて瞼を開ける。

時刻は午前7時。

淡い光がカーテンの隙間から零れ落ちていた。



──…あ



少し顔を上げれば、視界に自分の隣で眠る黒髪の青年が映る。

きっと目が覚めたのは彼が寝返りを打ったからだろう。

顔をこちらに向ける彼は、フカフカのベッドに体を預けてよく眠っていた。




──そっか。私昨日、臨也と…




自分の状態と、彼のシーツから見える露わになった肌から、昨日の出来事を思い出す。

あの時の彼はやっぱり少し意地悪で。意地悪なくらい優しく私を抱いてくれた。


汗ばむ肌に、額に貼り付く前髪。
唾を飲み込む喉に、私に触れるしなやかな指先。

思い出すと顔が熱くなるくらいなのに、その全てが今私の隣で眠っていた。




「…無害そうな顔」




夜に見せた顔はどこへ行ったのやら。

吐息と共に上下する横腹。
いつもは屁理屈ばかりこねる唇も、安心したように緩んでいて。

今の彼は、愛おしさを感じてしまう程あどけない顔をしていた。




──睫毛、長いんだ‥




閉じられた瞼から伸びる睫毛が下へと伸びる。

普段はこんなに至近距離で見ることがないので、肌がきめ細やかで綺麗な事にも気付かなかった。


少し羨ましげに、まじまじと上から眺めていると、臨也が短く息を吸う。

ん?と思った瞬間。
その瞼が急に開かれた。







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