人間なんてちっぽけなものだ。
ちっぽけなくせに権力を求めて何もかもを支配したがる、汚い生き物。
権力保持や自分の都合で次々と行われる殺戮。
それを今までこの両目で幾度も見てきた。
人間は汚い。それでいて醜い。
そんな自分勝手な生き物に、おれは生まれてきたくはなかった。
自分がそんな汚い生き物の仲間だと思うと、どうしようもないくらい腹が立って、無性に何かを壊したい衝動に駆られる。

――戦争の根絶。
そんな可愛いものじゃない。
おれがここにいるのは、
その理由は―――…






「………………………」
ゆっくりと目を開く。種類はよく解らないが何かの鳥の鳴き声が聞こえる。感じる重力に惺はゆっくりと眉間に皺を寄せた。
風がそよそよと吹き、彼女の真っ黒な髪の毛を揺らした。惺はそれすらも欝陶しそうに、グシャグシャと髪の毛を掻き上げる。

コードネーム 惺・夏端月

彼女はソレスタルビーングのガンダムマイスターである。
五人のガンダムマイスターの中で唯一の女性パイロットであり、最も寡黙で無愛想な人間だ。否、人間というには少々語弊があるのかもしれない。
彼女は人間を捨て、機械に成りたかったのだ。否、成りたいのだ。
人間を捨てて機械になろうとしているその姿は、端から見れば憐れな者に見えるかもしれない。
しかし、それすらも気にならない程、彼女は“人間”と云うものに嫌悪を抱いていた。
もしかしたら、憎悪の方が近いかも知れない。


「人間なんか、大嫌いだ。」


小さく呟く。
声は掠れていた。
覚醒したばかりの意識を、窓の外でキラキラと主張する青空に向けた。
この空が、紅く染まるのも時間の問題かもな、と独り自嘲した。
これから起こることも、何も知らない青空は、ただ惺の瞳に優しく映る。
(…………。)
初陣まで、あと僅か。

惺はゆっくりとベッドから起き上がった。


(終焉を、見に行こうか)




2012.09.17修正



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