走馬灯、と言うのだろうか。
火花が散る、キマリスの暗いコックピットの中。
虚ろな瞳のまま、俺は頭の中で愛しいあいつの姿を追った。

幼い頃からずっと一緒にいた。マクギリスと、カルタと、あいつと、四人で、いつも、一緒にいた。
俺たちセブンスターズの一族とは違って、あいつだけが孤児院出身で、大人の奴らには散々「あんな泥臭い子供とは関わってはいけない」なんて言われてたけど、俺たちはしつこくあいつに会いに行ったっけな。
その度に、眉間に深いシワを刻んで、「帰れ」って追い出された。
(ああ、会いたい…)
そこまで考えて、涙が一筋。
あの愛しい日々は幻だった。
思わぬ親友の裏切り。マクギリスは最初から俺たちを利用するつもりだったんだ。
(あいつは…、無事だろうか…)
俺とカルタと同じように、殺されたりしないだろうか、それだけが心配で、死ぬに死ねない。
「俺…、成仏出来ないかもな…」
こんな時だと言うのに、不謹慎に苦笑した刹那だった、コックピットに空いた穴の向こうに人影が見える。逆光で誰なのかハッキリ見えなかったけれど、不思議と、俺には直ぐに誰なのか分かった。

「…ガエリオ…ッ!!」

切羽詰まった声で俺に駆け寄る。
ああ、無事なら良かった。俺は安堵した。そして、安心した瞬間、急激に、眠気に似た何かに襲われる。
ああ、もういかなききゃいけないのか、と、愛しい彼女の顔を見ながら思った。

「…シン、最期にお前に会いたかった…」

マクギリスの事とか、アルミリアの事とか、言いたい事、伝えたい事はたくさんあったが、口から出るのは最愛の女への別れの言葉ばかり。
「馬鹿っ!!喋るなぁっ!!」
近寄ってきて俺の頬に手を寄せる。温かい手のひら。このぬくもりをもう二度と感じられなくなるのは惜しい。
ゆっくり見上げると、涙に濡れたシンと出会う。
「私は…っ、また…君を…っ!」
「…シン…?」
触れた手から彼女の震えが伝わる。何かを、俺に、言おうとしている。
「…何度見てもこんなにも苦しい…っ」
なんの事だろう。俯いた彼女。その胸元に、チェーンに通された見覚えの無いシルバーリングが見えた。
初めて見るそれ、だけど、懐かしい。俺は、それを知っている。
「…、(シン、)」
でも、もう声すら出ない。
逝かないでと縋り付くシンの声を遠くに聞きながら、俺はゆっくりと目を閉じる。

「嫌だよ、また、救えないなんて…っ、」

「…(ああ、)」
思い出した。
そのシルバーリングは、


俺じゃない俺がお前にあげたものだ。



2016.03.29

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