―――生殺し、とは、これの事か。

ロックオンは思った。


久しぶりの地上での任務。珍しく惺は留守番組で、王留美の別荘でロックオンや刹那の帰りを待っていた。
比較的簡単な任務だったので、早く終わらせて帰ってきた一同だったが、「ただいまー」と扉を開いて中を見た瞬間、固まってしまった。

「あら、おかえりなさい」
「………………。」

目の前には、
満面の笑顔の王留美と、
黒猫のコスプレをしている、
無表情の、惺。

「なにを…っ、」
ロックオンはあまりの衝撃にそこまでしか喋れなかった。王留美は見透かしたのかニコニコと笑いながら「暇潰しですわ」と答えた。
「惺さんったら罪な方ですわ。何でも似合ってしまいますもの」
「脱ぎたい。」
「あら、それは駄目ですわ」
ニコニコと未だに笑みの王留美。対する惺は怖いくらい無表情。恥ずかしいのか恥ずかしくないのか、それすらも分からない。
「あ、」
王留美が何かを思い付いたらしく、声を洩らす。「なんだ?」と問い掛ける惺の背中を押すと…。
「脱がせて貰うのでしたら、許しますわよ?」
とん、と、ロックオンの前に押し出された。
「ななななななななな!!!!?」
言葉の意味を真っ先に理解したロックオンはショート寸前。対する惺は、言葉の意味を理解出来ていなかったらしく、キョトン、とロックオンを見上げた。
「みっ、見上げるなっ!(それが更に煽ってるんだよ!)」
「なんだよっ、そんなにおれが嫌なのか!?」
「違う!とにかく俺に近寄るなっ!」
どん、と押し返すロックオン。
惺は予測してなかった拒絶と衝撃に反応しきれずに、そのまま尻餅をついた。
「…………ッ!」
「あ、悪…!」
手を伸ばすロックオン。
しかし、

ぱちん!

拒絶された。

「自分で立てる。おれに触るな」
明らかに不機嫌オーラをばら蒔いて。
「ちょっ!惺!」
「おれ、ちょっと昼寝してくるわ」
「おい、惺…っ!」
「何かあったら起こしてくれ」
「惺…!」
「じゃ」

ばたん、と扉が閉まる。
残された一同はロックオンをじとーっと睨んだ。
「行かなくていいのか」
刹那が問うた。
それに上乗せするようにティエリアも「機嫌を取ってきた方がいいな」と言う。
トドメのアレルヤ。
「惺は何もしてないのにね」

ぐさり。

「…………行ってくる。」

ロックオンは惺の部屋に向かった。


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