『願いは〜誰にも〜撃ち落と〜せ〜な〜い〜』という独特なチャイムと共に授業が始まった。
(いつ聞いてもおかしなチャイムだ…)
おれは教壇に立つ先生を見据える。あーっと…あれはニールか。と言うことは古典か、と頭の隅で思う。
ニールは、教科書を片手に「今日は蜻蛉日記やるぞー」と告げた。
(ま、教科書も教科書ガイドも一読してきたから大丈夫か)
おれは教科書すら出さずに机に突っ伏した(因みにチップがあるからノートすら取ってない。いつもこんな感じだ)。

が、いつもと違うのがひとつ。

実は、今朝寮長にこっぴどく叱られたのだ。刹那と。

軽音部のボーカルの彼は、おれの部屋で作詞作曲するのが好きらしい。彼曰く「お前の部屋にある、センサーに反応してシュッと出る置き型芳香剤が俺の好みの香りだから、作業が捗るんだ」らしい。
で、昨日も寮長の目を盗んでやって来たのだが、彼はあろうことかそのままおれのベッドで寝落ちしてしまったのだ。

普通の女子なら、叩き起こすか、自分は床で寝るかを取ると思うが、「なんで主が床で寝なきゃいけないんだよ」と思ったおれは、無理矢理刹那を壁際に追い込み、共に眠った。

問題はそのあとだった。油断してたんだ。
刹那が来る数時間前に、寮長に「七時に起こしてー」と言っていたのをすっかり忘れていた。

約束通り、七時におれを起こしに来た寮長は、隣で眠る刹那を見て爆発した(勿論比喩表現だ)。


たっぷり一時間説教を喰らって、刹那と一緒に全力ダッシュで学校へ滑り込んだ。
(三時限目だってのにまだ疲れが取れてねーよ…)
因みに、刹那が咄嗟に「昨日は部活で遅くて疲れてて…惺センパイの部屋だって気付きませんデシタ。スミマセン」と苦し紛れの嘘をついてくれたお陰で、「刹那は部屋を確認しなさい!惺は鍵をかけなさい!」だけで済み、トイレ掃除は免れた。
「はあぁ…」と小さく溜め息をついた。
(身体中痛い…)
涙が出そうだ。

と、その時、

「惺!」とティエリアの小さい声が聞こえた。
「ん…?」と顔を上げるとニールのドアップ。
(ひぃ…っ!!)
思わず椅子を引いた。

「惺、ちゃんと予習してきたんだ?」
にっこりと訊ねるニールに、コクコクと無言で頷いた。ニールは満面の笑みを絶やさずに「うん、偉い」と言った。
「だけどなー…、惺の授業態度が悪いからさ、平常点がギリギリなんだよなー…。わかる?」
「…あ、うん…はい…」
「だからー」とニールは言った。


「今日居残りな!放課後に資料室に来るよーに!」

……死亡フラグです。

ニールはドヤァと笑った。
(は…っ!!!嵌められたぁぁああ!!!)




2012.09.16


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