一新更始


朝ごはんを食べ終わってふと時計を見ると、もう家を出る時間になっていた。

『あら大変…もうこんな時間になっちゃったわ。準備しなくちゃ…』
「…どこかに行ってしまうのか……?」

佐吉は箸を止めると少し寂しそうに眉を寄せた。
不安そうにシャナを見つめるその姿は、宛ら某ドリームワークス映画の猫のよう。
まさか5、6歳の幼子を置いて仕事に行くはずもなく、シャナはふっと笑い佐吉の頭を撫でた。

『まさかそんなわけないじゃない。そんな格好で悪いんだけど一緒に着いてきてくれるかしら』
「どこに行くんだ…?」

『私の職場よ。暫くホームワークにすることにしたから道具を取りに行って、事情説明して…午後は貴方の洋服を買いに行きましょうね』

「?…」
『貴方と一緒に居たいから、家でお仕事するの。どこにも行かないし、ずっと一緒よ』
「…そう、か」

先程よりも心なしか嬉しそうな声色で、僅かながら頬を緩ませる佐吉。
昨日よりも二人の距離が急激に近付いたことを、シャナは確かに感じていた。
第一印象からして自ら進んで甘えてくるような性格ではないと思っていたが、そうでもないようだった。

『ふふ…よし。じゃあ片付けて行きましょ』


佐吉と共に食器洗いをして支度を終えた二人は会社へ向かった。




出社しシャナのデスクに向かい道具を取っていると端正な顔立ちの男がバタバタと駆け寄ってきた。


「シャナ!!遅かったじゃないの…心配したのよ?」

『雅…ごめんなさいね、ちょっと色々あって…』
「んもう…色々ってなに…
!ちょっと!!この可愛らしい子は誰?もしかしてシャナの隠し子…?!」

「…!!」
佐吉は突然大声を上げはじめた事に驚いたのか男性なのに女性らしい口調をしていることに驚いたのかそのまま固まってしまった。


『ちょっと雅、声が大きいわよ。佐吉が吃驚しちゃってるじゃない』
「あらごめんなさいね!!悪気はないのよ…」
「いや…だいじょうぶだ」

「で、この子は?」
『えっと、この子は佐吉よ。知り合いの子を預かっているの』

「あらそうだったの…とんだ早とちりだったわ。私は雅よ。宜しくね、佐吉くん」
「…よろしく」

ウィンクをしながら佐吉に挨拶をする雅に佐吉は引き気味で応える
そんな二人にやり取りを苦笑いをして見ていたシャナが思い出したように口を開いた。

『あぁそうだわ…雅、私暫く家で仕事をするから上にも伝えて頂戴。』
「えぇ分かったわ。まだ企画初期段階だから、大した仕事もないし。この子のためにもそれがいいと思うもの。」
『ふふ…有難う。』

「このあとはどうするの?」
『ずっとこんな格好させるわけにもいかないし、この子の洋服を買いに行く予定よ。』

「あら素敵。じゃあ気を付けていってらっしゃいね」
『えぇ有難う。』






会社を出て近くのショッピングモールに入る。平日ということっもあって人は少ない。
初めて入る子供服売り場に若干緊張しつつも、物珍しそうにきょろきょろしている佐吉の姿にシャナ思わず表情を緩ませる。





下着から靴まで一通り揃えたシャナは、途中で見失ってしまった佐吉を探していた。
暫く探していると、子供服売り場を出てすぐにある駄菓子屋にその姿があった。


『佐吉!!探したわよ?』
「!シャナ…すまない」

『ふふ…無事でよかった。何かいいものがあった?』
「…これ」

佐吉がおずおずと差し出したのは、カラフルな色をした飴が棒にぐるぐる巻きになっている、所謂ぐるぐる飴だった。

『私もそれ好きなの。佐吉、もう一つとってくれるかしら?』
「…!あぁ」

佐吉は嬉しそうに頷くともう一本取り、シャナと共にレジへ向かった。会計を済ませ商品を受け取った佐吉は、それを大事そうに抱えた。


帰宅すると早速支度をはじめた。
今日の晩御飯はハンバーグ。

和食でなくていいいのかとシャナは思ったのだが、
家へ帰る前に寄ったスーパーでハンバーグの存在を知った佐吉におねだりされ、ハンバーグを作ることになった。
玉ねぎをみじん切りにし炒め、粗熱をとっている間に調味料を揃える。
玉ねぎの粗熱がとれたら挽肉をこね佐吉と共に成型する。はじめての事に四苦八苦しながら佐吉なんとか小判形に整えると、シャナが成型したものも合わせて焼きにはいる。
出来上がったものをテーブルに並べ、いただきますと同時に佐吉が手を付けはじめた。
買い物が長引いたせいでお昼を食べ損ねていた佐吉は、ハンバーグを口一杯に頬張り嬉しそうに食べる。








(佐吉の洋食デビューね!!)
(次は中華かしら♪)




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追加設定

雅(まさし)
シャナが務めている会社の社員。
黒髪に切れ長の目。とても美形にも関わらずオネエ。





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