▼Laughs

※Sweet oneの燐目線です。
 
 
 
 
 
今日の天気は曇り、降水率30%。
 
朝から曇天続きの嫌な一日だった。
 
早く洗濯物を取り込みたくて放課の合図とともに燐は教室から飛び出した。
 
生憎雨は降らずに済んだが、途中でアマイモンと遭遇した。
 
事情を簡潔に説明して急いで寮に帰るつもりだったのだが、
 
 
「僕も手伝いますよ」
 
 
その一言を断っていれば俺はこんなに悩まなくて済んだのかもしれない。
 
 
「…ふー、全部入れ終わった…」
 
「良かったですね、間に合って」
 
「ああ、ほんとお前のおかげだよ。
 お詫びって言ったらなんだけど
 晩飯食って行けよ。
 今日は雪男も出張でいねえし」
 
 
雪男、と動く彼の口元を見て苛立ちが胸を襲う。
 
このところずっとそうだ。
 
彼が弟の名前を呼ぶたびに胸が締め付けられ、モヤモヤとした感じが残る。
 
これは一体何なのだろう。
 
エプロンを着ている燐を眺めつつ、訳の分からない感情と葛藤する。
 
だが、考えるよりも先にアマイモンのお腹が悲鳴を上げた。
 
 
「奥村燐、お腹が減りました」
 
「ん、そうか。
 じゃあ何か作ってやるから
 大人しく待ってろ」
 
 
エプロンのリボンが結べたら燐は早足で台所へ移動する。
 
自然と目で追っているのはきっと何かの間違いだ。
 
ん、間違い?
 
この感情は間違いなのか?
 
そもそも僕に感情なんて存在するのだろうか?
 
頭がショートしそうな程考え、アマイモンは重たい足取りで燐の後をついて行く。
 
 
「今日は
 何を作ってくれるんですか?」
 
「昨日買ってきた肉があるから
 ハンバーグを作って…
 あとは適当にスープでも作るか」
 
「卵焼きはないんですか?」
 
「あー…、出汁巻き卵のことか?」
 
「多分それです」
 
「お前あれ好きだもんな」
 
「燐の作る卵焼きは
 世界一美味しいです」
 
「そこまで言うか…」
 
 
まあお前がそう言ってくれるなら作り甲斐があるってもんだ。
 
燐は微笑みながら調理を始める。
 
目の前にある小さな背中を見つめ、家具に背を預けながら飴玉を舐める。
 
 
「ほら、これお前の分。
 テーブルに持って行ってくれ」
 
「分かりました」
 
 
お互い向き合うように座り、向かいに座った燐を眺める。  
 
麦茶をグラスに注ぐ燐は小さな溜め息を吐いた。
 
 
「何かあったんですか?
 そんなに溜め息を吐いて」
 
「…いや、なんでもねえよ。
 それより卵焼き口に付いてるぞ」
 
 
そっ、と僕の唇を彼の指がなぞる。
 
よく整った綺麗な指だな、と思った。
 
 
「…どうした?」
 
「よくそんなこと出来ますね」
 
「ははっ…だって俺」
 
 
何か言いたげな態度を取った燐は少し俯いて口を閉ざした。
 
ねえ、そんな暗い顔ないでください。
 
いつもみたいに馬鹿らしく笑ってください。
 
それとも僕ではだめですか?
 
弟のアイツじゃないとだめですか?
 
外はいつの間にか雨が降っていた。
 
重い空気の中、燐の焼いた卵焼きを口に頬張る。
 
あなたの卵焼きが好きだなんて、ただの口実なのに。
 
嘘吐きな悪魔でごめんなさい。
 
 
>You should laugh more.
(あなたはもっと笑うべきです)
 End
 
 
――――――――――――――――
燐の卵焼き?
やだなあ
ひyな考え方はよしてくださいよ(笑)


|次|アマ燐TOP