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ぬいぬいバスター



ぬいぬいバスターを結成します!

そう高らかに宣言したのは宇宙科一年の鷺ノ宮唯。そんな彼女に冷たい目線を向けたのは通称宇宙科コンビの片割れ、木ノ瀬梓。その隣にいた、もう片割れの天羽翼は面白いものを見るかのように目を輝かせている。たいへん温度差があったものの本人は至って気にせずに真面目な表情をしていた。



「あのさ、唯って本当に馬鹿だよね。よく宇宙科に入れたものだよ」
『梓ってさ、私のこと貶すの好きだよね。馬鹿って言葉を今日だけで五回は聞いた』
「あ、数を数えられたんだ」
『いい加減にしろよ、泣くときは泣くんだからね。もう良いよ、梓なんか。翼ー、二人で会長を倒そう』
「ぬいぬいバスター結成だぬーん!」



二人で元気よくハイタッチを交わす光景を見ていた木ノ瀬が溜め息を吐いたのは言うまでもない。そもそも馬鹿な話を言い出した根本的な理由は「生徒会に入れ」と煩いから元を絶たねばならないと思ったから。それを聞いて更に重い溜め息を吐き出したのは言うまでもない。早速、二人で作戦会議とは名ばかりの雑談を始める。机の上に置かれていたルーズリーフは、あっという間に文字で埋め尽くされていく。



『おしっ、決まりだね!』
「実行だな!」
「……本当にやるわけ?」
『有言実行だよ。会長の前髪を狩れば、きっと大人しくなると思うから』
「(不知火先輩、逃げて下さい…!)」



唯は天羽と仲良く手を繋ぎながら教室を出ていく。それを見送りながら胸の前で十字を切ったクラスメイトが居たことを二人は知らない。廊下を歩いていれば、前方からタイミング良く標的である不知火が歩いてくるの視力が良い唯が捉える。続いて気が付いた天羽がクマったくんを飛ばし、先制攻撃へと移った。



「うわぁ!な…翼!何しやがる!」
「ぬいぬいバスターだぞ!」
「ぬいぬいバスター!?って、唯、何だその手にあるのは!!」
『大丈夫です。会長の前髪を狩るだけですから』
「大丈夫じゃねえよ!!おい、嘘だろ…!?」
「ぬはは、俺の作った髪切りさんなのだ!」
「てめっ、翼!!余計なもの作ってんじゃねえ!!!」



叫ぶ不知火の前髪を狩ろうとしたが、紙一重でそれは避けられてしまう。唯は悔しそうに地団駄を踏みながら二度目の挑戦に取り掛かろうとしていた。しかし、何故か天羽作の髪切りさんから、ぷすんぷすんと煙が上がり始める。直感的にやばいと感じたのか、それを不知火へと投げた。



『会長、ぱぁす』
「パスじゃないだろ!」
『細かいことは気にしない。では、さいなら』
「待て、こら…あ、」



次の瞬間には爆発した髪切りさん。近くにいた不知火の髪は凄いことになっており、唯はお腹を抱えながら爆笑をする。涙が出るほど笑っていれば、頭をぐりぐりと拳でやられ、痛そうに顔を歪める。そこに番長こと副会長の青空颯斗がやって来た。



「…会長、これは何の騒ぎですか?」
「は、颯斗…違うんだ、此奴等が……」
「問答無用です」



にっこりと笑った青空は小さな黒板で地獄の旋律を奏でる。それを聞いた二人は倒れていき、平気そうな唯だけが、その様子を見て再び笑い始めた。しかし、彼女自身もただで済むわけではない。青空は、この問題児にも頭を悩ませているのだから。



「唯さん、笑っている場合ではありませんよ。貴女には大嫌いな書類整理を手伝ってもらいますので」
『くっは、あっははは!!………え?』
「さあ、行きましょうか」
『う、嘘だぁぁぁ!!それだけは勘弁を、青空様ぁ!!』
「ふふっ、そんなに泣きそうな顔をしないで下さい」



そして笑顔の青空に引き摺られていく唯。この話は、それを見送った多数の生徒のうちの一人の証言であった。




ぬいぬいバスター



(…やっぱ馬鹿だ)
(うわぁぁん、青空先輩の鬼畜…!)(何か言いましたか?)(いえ、何も)


―――――――
何だか続きそうな完全自己満の話
不知火の前髪って本当にどうなってをだろ…
と言うか颯斗くんの美味しいとこ取りだった

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