あれから時は過ぎ、色々な問題ばかりがあった高校生活を無事に終える事が出来た。大学にも進学し、寮を出てからは念願の独り暮らし。バイトをしながら大学に通う日々は充実している。たまに風間のお母さんとかが差し入れをしてくれているから、それなりに安定もしていた。
だが、問題――それも大きな問題が浮上しているのだけれども全て無視している。だって学部だってぎりぎり違うし、会う事なんてあまりなくはないが、高校の時ほどではない。けれど、最近は我慢の限界かもしれない。
「雪ちゃん、部屋が隣って便利だよねー」
「学部が違うぶん此方で会えるしな」
『…………………何処から侵入してきたんだよ、お前等』
はい、もうお分かりですかね。此奴等と同じ大学のうえに部屋まで両隣。絶対に確信犯以外の何者でもないだろう。と言うか、どうして志望大学とかがバレた。バレないように慎重に慎重に事を運んでいたと言うのに。
複雑な気分で紅茶を飲んでいれば、インターホンが鳴る。重たい腰を上げ、見れば居るのは南雲に藤堂。ああ、また面倒くさいのが来たな、そんな心情でマンションのオートロックの鍵を開けてやる。直ぐに二人は部屋まで来て、遠慮なく上がってきて南雲は不機嫌そうな表情をした。
「…何で此奴等が雪の部屋に居るわけ」
「お前こそ何をしに来た」
「ま、まあ落ち着けって二人とも」
険悪な雰囲気を醸し出す二人の間に藤堂が仲裁に入れば、渋々ながらも大人しくなる。何で沖田とじゃないのかって?だって気が付いたら寝てるんだよ、この馬鹿沖田。しかも人の服を掴んだまま。
『沖田、寝るんなら自分の部屋に戻れ』
「え、総司いたの!?」
「寝てて見えなかったけど、早く叩き起こせ藤堂」
「俺かよ!」
「……文句ある?」
藤堂の慌てようを余所に沖田の肩を揺らせば、ゆっくりと目を開けたのだが、再び目を閉じていく。それだけならまだしも何故だか腕を引っ張られ、倒れ込んだ私を受け止めて抱き締める。これ、絶対に起きてるよな。
「総司、狸寝入りをして抱き着くな!!」
「良いじゃない。ね?」
『良くない、離せ!』
どうにかして脱出をすれば後は他の三人と迷惑なぐらいの言い争いを始める。私が誰と付き合うだの非常にどうでもいい話で討論できるのはある意味で馬鹿らしくなるほど凄い事だろう。
「此処は雪に決めてもらおうじゃないか。雪が恋人になりたいのは誰!?」
『え、いや…お前らは有り得ないと言うか……』
「つまり他に好きな奴が居るって事か?」
「私に決まってるじゃないですか!!」
「「「『え?』」」」
何時の間にやら部屋に居た雪村が胸を張りながら立っていた。いや、本当に何処から入ってきたの?
「何を言っている。俺に決まっているだろう」
そして、その隣には風間。何時も通りのどや顔なのだが、敢えて無視をして天霧に引き取らせるために携帯の電話帳から番号を探し出す。と言うか、このマンションのセキュリティ大丈夫なのだろうか。
『…兎に角、いったん出ていけ』
「私、今来たばかりですよ?」
『うん、関係ないから』
「久しぶりの冷たい言葉にどきどきしちゃいます」
『通報っと』
本気で通報するために110番をしようとしたのだが、物凄い勢いで携帯の電源ボタンを連打された。あ、ちゃんと自分が犯罪すれすれだって事に気が付いてたんだ。
「例え警察に邪魔をされようとも私の雪さんへの愛は止められません!」
『私そっちの趣味はないんで』
「そうだろう。何せ俺と固く契りあったのだからな」
『キモい妄想は余所でやれ』
「じゃあ僕と愛し合うって事で」
『帰れ』
この短時間で有り得ないぐらいに疲れた。これも全て、この阿呆どものせいだ。明日のレポート提出を無事に出来る事を祈るばかりだ。こんな毎日を日々繰り返す。何時になれば平和になるのやら…。そう小さく溜め息を吐き出した。
fin……
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